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前科部!  作者: 蛇猫
仮面と古傷
59/108

昼食には混沌が付き物


「で、今回はみさごじゃないんですね」


俺は白嶺先輩に誘われて入店したファミリーレストランの内装を見渡す。

有名なレストランだが、場所が悪いのかあまり混んではいない。煩いのは

嫌いなので俺個人としては良いのだが、店側としては嬉しくないのだろうなと思う。


「うん。彼処はゆっくりするのには良いけど、お昼ご飯には向かないからね。

 今日は私の奢りだから、好きなだけ食べてよ」


「いや、良いですよ。金なら一応、持ってきましたし」


俺は勉強道具を入れていた手提げから財布を出して見せる。


「ああ、大丈夫、大丈夫。此処は先輩に見栄を張らせて。

 誘ったのは私なんだし」

 

「まあ......そういうことなら」


俺が財布を手提げに直すと、白嶺先輩は満足そうに二回頷いた。


「うんうん。それで? 何頼む?」


俺は白嶺先輩にそう聞かれ、メニューを開いた。ハンバーグから焼き魚まで

様々な料理が並んでいる。そういえば此処はパスタが美味いんだったか。


「じゃあ、俺はこの和風クリームパスタで」


「私はハンバーグとピザにしよっと」


「多いですね」


「食べ盛りだから仕方ないよ」


「さいですか」


先輩は物怖じすることなく、大きな声で店員を呼ぶと俺と先輩が

頼んだ料理に付け加えてドリンクバーを頼んでくれた。


「祐也君、何飲む? 持ってくるよ」


「いや、ドリンクバーは自分でいきますよ」


「そう?」


「はい」


ドリンクバーは嫌いではない。原価は確かに安いかもしれないが多くの種類の

飲み物を一度の食事で飲めるのだと考えればお得感が有る。客は様々な種類の

飲み物を200円程度で飲め、店は一度飲み物を購入してしまえば儲かる。

良く考えられたシステムだと思う。


「だからって、それは祐也君......」


俺がドリンクバーから取ってきたソレはとてもコーラとは言い難い

緑色や灰色が複雑に混ざり合った混沌とした黒色を呈していた。


「ドリンクバーは多くの種類のドリンクを飲んだもの勝ち。

 ならば、一度に多くの種類を混ぜて飲めば良い......それが俺の結論です」


俺が先輩にドリンクバーを淹れてきて貰うのを断ったのはこのためだ。

流石に俺のせいで先輩が奇異の目で見られることは避けなければ。


「ええ......」


俺は若干、引き気味の先輩を他所にその謎の液体を口に流し込んだ。

最初に来るのはやはり、コーラの香り、続いてジンジャーエールが舌を刺激し

乳酸菌飲料の酸味が広がる。そんな三つの香り、刺激、酸味の後を追うように

メロンソーダとオレンジジュースの味が仄かにした。


「うん、美味しいですよ」


中々、カオスな味だが悪くない。


「まあ......兎に角、キミをわざわざ此処に呼んだワケを説明するね」


「可愛い後輩と他愛ない会話をするためではなく?」


俺はからかうように聞いて、また一口カオスドリンクを啜った。


「まあ、それも有るんだけど。部活のことでね」


「部活?」


「いや、そんな身構えなくていいんだよ? ただ、祐也君が来てから

 皆、変わったな~と思って。その話がしたかっただけ」


先輩は『あはは』と笑うと、ドリンクバーで淹れてきた珈琲を

ゆっくりと口に付けた。


「ああ、確かに言われてみれば、小戸森とか調月とか部員同士で話すように

 なりましたね。幻中は......だいぶ俺に心を開いてくれたみたいだし」


俺はこないだ、幻中の家に呼ばれたのを思い出し、しみじみと言った。

幻中は俺のことを心を許せる人だと評したのだ。出会った頃と比べれば

俺への対応の差が分かるだろう。


「そうなんだよね~。小戸森さんは祐也君と凄く親しくしてるし、調月さんは

 祐也君にだけ遠慮しない。幻中さんも君のことは信頼してるみたいだけど

 一年前からあの子達を見てる私に言わせればはっきり言って異常だよ?」

 

先輩はそう言うと苦笑した。しかし、その表情に困惑の色はなく

何処と無く嬉しそうだ。


「まあ、人付き合いが良くなることだけが成長とは思いませんが

 アイツらは皆、楽しそうだし良かったんじゃないですか?」


「そうだね~私が部活を作ったときは凄い、気まずかったんだけど

 今なら皆とも結構話せて楽しいよ」


心の底から嬉しそうな先輩の顔を見ていると、俺も自然と笑みが溢れた。


「そういえば先輩、自然観察部ってどうやって出来たんですか?」


俺はふと、気になったことを聞いてみた。俺は転校生なので自然観察部の

創立に関することは何一つ知らない。


「あ、そういえば祐也君に話したことなかったよね。聞きたい?」


「はい。まあ......」


「ふふん、よし、話してあげよう!」


先輩は胸を張ると、思い出しているのか目を閉じて話し始めた。


「私が2年生くらいの頃は顧問が余ってるとかで部活を新しく作ることが比較的

 簡単に出来たんだ。それで私も新しい部活を作りたいな~と思ってどんな

 部活を作るか悩んでたんだ」


「新しい部活を作りたい、って急ですね」


「ふふっ、まあね。それで始めに相談したのが......知ってるかな?

 今は2年生の有馬岬(ありまこう)君」


思いがけない人物の名前の登場に俺は思わず、ドリンクを吹き出しそうになった。


「......其処で出るのかあ」


「え?」


先輩と有馬の間に何かがあったのは知っている。しかし、俺は具体的に

先輩と有馬がどのような関係にあったのか全く知らなかったのだ。

有馬岬......やはり、前科者達の部活に関わっていたか。


「いや、此方の話です。有馬なら知ってますよ。腹黒なのも」


「......ああ、そういうこと。じゃあ、話が早いね」


俺が先輩を試すように言った、『腹黒』という言葉。これは有馬の素を

知っている者にしか何のことか分からない言葉だ。それを聞いてこんな言葉を

返してきたのだから先輩も有馬の素を知っているのだろう。


「有馬君と私は祐也君と雪加さんみたいに幼馴染なんだ。それで有馬君に

 相談したんだけど、それで有馬君が提案したのが自然観察部だった。

 知ってるかな。彼、祐也君みたいに生物や植物が好きなんだよ」


「俺が見た感じでは、学校のカースト社会を必死に生き抜くので

 精一杯な感じでしたけど」


まあ、俺も有馬の素のことはあまり知らないのだが。


「あはは、まあ岬君も色々あってね。それで、私も有馬君と同じ部活に

 入りたいなと思って、自然観察部を作ることにしたんだ」


先輩の話を聞いている限り、どうやら有馬と先輩はかなり仲が良かったらしい。


「でも、流石に二人だと部活は作れませんよね?」


「そうそう、最低四人は必要だったから部員を募ったんだ。でも、皆はあまり

 興味を示してくれなくて......本当に丁度二人だけ入部してくれたんだ」


「それって、幻中と調月ですか?」


先輩が二年生の頃と言えば、小戸森は中学生な訳だから当然と言えば

当然な気もするが。


「うん、正解。私と有馬君を合わせてギリギリ部活を作れたんだけど......」


「だけど?」


「部活設立を申請して直ぐくらいに幻中さんへの虐めが激化したんだ。

 元々、あまり良く思われていなかったらしいんだけどその時くらいから周りが

 無視とか陰口を言うようになってね......」


どうやら、幻中への虐めの起源は一年生の頃にあったらしい。


「それで?」


「有馬君は友達に幻中さんと同じ部活になんて入るな、みたいなことを

 言われちゃったらしくて......結局、部活の申請が通って直ぐに退部しちゃった。

 有馬君、一度も部活動に来ないまま退部したから幻中さん達も有馬君が名前だけ

 自然観察部にいたこと、知らないんじゃないかな?」


「少なくとも幻中は知らないみたいでしたよ」


この前、幻中には有馬について知っていることがないか聞いた。

その話の中で幻中は一切、そのことを話さなかったので恐らく知らないのだろう。


「やっぱりかあ。まあ、それでウチの部活は四人で始まって途中で

 3人になったから先生達も処分に迷ったみたいでね、色々あって残されたんだ」


「有馬は友達を取って、先輩は部活を取ったってワケですか」


「まあ、そういうことになるのかな? あれ以来、有馬君とは疎遠に

 なっちゃったけどね。少し喧嘩もしちゃったし」


きっと、そんな風に喧嘩別れをした苦い思い出が有るため、この前先輩の話を

したら、有馬は顔をしかめたのだろう。


「それが前科者の部活、自然観察部の創設秘話なんですね」


「うん。それから、調月さんも幻中さん程じゃなくても蔑まれるようになって

 完全に前科部って名前が定着しちゃった感じ。小戸森さんは前科部のことを

 知りながら、どうしてもって言って入ってきてくれたんだ」


小戸森の話によると、彼女は自然観察部に入る前に入部していた

陸上部で虐められていたらしい。自然観察部に入った理由は聞きそびれたが

きっと、自分と同じような境遇の者がいるというところに引かれたのだろう。


「先輩」


「ん?」


俺がその名前を呼ぶと、それを遮るかのように店員が料理を運んできて

俺達の前に並べた。俺と先輩が礼を言うと、店員は綺麗な営業スマイルを

浮かべて立ち去っていった。


「流石に全国に支店を展開させているファミレスは店員の質も違いますね。

 ん......しかも美味いし」


「そうだね~あれ? 祐也君、さっきなんか言おうとしてなかった?」


先輩が口に運んだのはチーズの乗っかったハンバーグだ。こう見ていると

本当に美味しそうに食べているのが分かる。


「いや、大丈夫ですよ。どうでもいいことなんで」


俺はクリームパスタを覆っている大きな湯葉をフォークで丸め

両面にクリームをつけて食べた。豆乳の深い味わいがする。


「ダウト、だね」


そんな湯葉の味わいを楽しんでいると、先輩は得意気にそう言った。


「......ちな、根拠は?」


「私がメンタリスト顔負けの感情を読む力を持っているの忘れた?

 目が若干、泳いでて眉がピクピクしてたよ?」


そういえば、そんなのもあったか。


「......いや、本当にどうでもいいことですよ。ただ、先輩はアイツらのために

 色々と頑張ってるから......ありがとうって言いたくて。今回の勉強会も

 アイツ、もとい雪加が急に言い出したものなのに参加してくれましたし」


「......へ?」


「ただ、それだけです。ね? 大したこと無かったでしょう?」


自然観察部のメンバーとの付き合いは短いが、その短い付き合いの中では濃すぎる

イベントが沢山あった。幻中は俺が濡れ衣を着せられたとき最後まで俺を思ってくれたし

小戸森にはずっと、心の支えになってもらった。調月がいなければ俺の冤罪が晴れる

ことも無かっただろうし、雪加の奴は言わずもがな俺にとって大切な存在だ。そんな

彼女達のために、辛い思いをしながらも尽くしてくれた先輩には烏滸がましいかも

しれないが感謝しかない。


「ふふっ、そっか。私も皆のこと、大好きだから祐也君には感謝してるよ?

 自然観察部が本当の意味で動き始めたのは祐也君が来てからだからね」


「ふっ、そうですか」


笑顔の先輩を見ていると、自然と頬が緩んでしまう。


「じゃあ、祐也君。これからもヨロシクね?」


「......はい、勿論」

総合評価が79になりました! ブクマや評価をしてくださった皆様本当に

ありがとうございます! 70話までに100ポイントの大台に乗ることを目標に

していますのでどうか、少しでも良いなと思ったらこの後書きの下にある星を

塗り潰してやってください。宜しくお願いします!

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