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前科部!  作者: 蛇猫
そして前科者『上里祐也』は鳥好きになった
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勘解由小路雪加が選んだ道

二話、同時投稿しました! 少し遅れてしまいましたが、どうしてもこの二話は同時に

出したかったので多目に見てくださいw



「......う~す」


覚束ない足取りで体を引きずるように教室に着くと

例のごとく幻中が俺の隣の席には居た。


「・・・大丈夫ですか?」


「ん、何がだ?」


「・・・何時もより登校時間が遅いですし目元のクマが酷いですよ。

 まだ寝惚け眼、といった風ですし......良く眠れなかったのでは?」


席に着くなり、本を読みながら目線を合わせずに俺の身を案じてくれる

幻中。そういえば、朝から瞼が重い。


「ああ......まあ、そりゃあ一昨日あんなことを部活の皆の前で暴露されたらな。

 今日、会うのが恥ずかしくて、恥ずかしくて悶えていたせいで中々寝れなかった」


「・・・別に恥じるべきことでは無いと思いますが」


「なら、この気持ちは当事者にしか絶対に味わえない感情なんだろうよ」


何時もより登校が遅れた教室には多くの生徒達が集まっていた。

そして、相も変わらず雪加の机には女子生徒が多く集まっている。

しかし、その雰囲気は穏やかでは無さそうだ。


何処かピリピリとした雰囲気が漏れ出ている雪加の机周辺を訝しげに

見ていると俺の視線から何かを察したのか、幻中が口を開いた。


「・・・彼女、勘解由小路さんが自然観察部に入部したことが

 噂になって流れているらしいです」


俺は幻中のその言葉を聞いて全てを理解した。


「ああ......成る程」


雪加は俺とは違い、女子限定では有るが転校生ということもありかなりの人気者だ。

そんな人気者のアイツが嫌われものの集まる自然観察部に入部したとなったら彼女の

元に集まっていた女子生徒達は黙っていないだろう。しかし、(いさか)いの論点が分からない。


雪加に退部をさせようとしているのか若しくは前科部の一員となった雪加を罵倒して

いるのか。其処が問題だ。気にはなるが争点となっている部活の部員の俺が行ったら

余計面倒なことになりそうだ。雪加のことなので上手くやるだろうし今回くらいは

静観を決め込ませて頂こう。


「だ、か、らっ! あの部活は可笑しいんだって!」


突然、教室中に響き渡る程に大きな声で雪加に女子生徒が叫んだ。

教室が騒然となるが、女子生徒は構っていない。


「だから具体的にどう可笑しいのかの説明とそのエビデンスを頂戴。

 じゃないと、私は退部はしない。一度入った部活だし」


雪加の声は特別大きい物では無いが教室が静まり返っているため良く聞こえた。


「だって、あの部活変な奴ばっかり居るんだよ!?」


「変な奴って?」


若干だが、雪加が女子生徒に向ける目線が鋭くなったような気がしたが

女子生徒が怯んでいないところを見ると俺の気のせいだったようである。


「そ、そりゃあ、雪加ちゃんも知ってるでしょ? 四組の根暗女とか

 一年の薄気味悪い変な一人称の奴とか......色々と居るじゃん」


『四組の根暗女』とは......調月も言いたい放題言われてるな。

そして『薄気味悪い変な一人称の奴』とは恐らく小戸森のことだ。ジト目クールを

薄気味悪い、ボクッ娘を変な一人称、これはめぐめぐ支持派としては許せない言動だ。

それに、一月前くらいに入部した俺が言うのも何だが、彼女らのことをロクに知らない

癖に彼女らのことを分かったように語らないで貰いたい。


俺がそんな軽い憤りを覚えている中、雪加は何とも言えない

相手を見定めるような目線を女子生徒に送っていた。


「な、なによ。その目は。私は雪加ちゃんのことを思って言ってるんだよ? それとも

 あの部活の部員の可笑しなところをもっと知れば心変わりする? そうね~

 生徒会長のことは良く分からないけどほら其処に変な二人組が居るでしょ?」


そう言いながら女子生徒が差した指の延長線上には俺と幻中の二人がいた。

まさか本人がいる場で紹介してくるとは思わなかったので俺は驚く。


「・・・はあ」


幻中は俺にしか聞こえないような小さな溜め息を吐いた。恐らくこの状況で

俺達二人をダシにしてきた女子生徒への諦めと呆れが混じっていたのだと思う。


「知ってると思うけれど、銀髪の方の子は玲奈。何時も、本ばかり読んでる

 面白く無くて愛想の無い嫌味な子。見るからに優等生気取ってるけど

 絶対に心の中では私達のことを下に見てる嫌な奴よ」


本人たちに指を差しながらあんな紹介をできるなんて一体どういった思考を

しているのだろうか。考えたくもない。


「それで横が上里祐也。こっちも、最近前科部の部員と良く一緒に居るところが

 見られてて面白く無い変な奴。それに、聞いた話によると私の友達の財布を

 奪ったって話まで有るんだよ。どう、分かった? あの部活の可笑しさが......って

 雪加ちゃん?」


女子生徒が話を言い終わって、雪加の方に向き直ると雪加が彼女に向ける

視線は先程までの見定めるような視線とは打って変わって明らかな憎悪を

含んだ物となっていた。只でさえ、静まり返っていた教室がより一層凍る。

皆、雪加が女子生徒に向けている凍てつくような視線と鋭い敵意を感じ取ったからだ。


「貴方が今言ったことは間違いだらけ。上里祐也は今は退学になった山本夢華に

 幻中玲奈の財布を盗ったという濡れ衣を着せられただけで無実。事実と違う

 話を言わないで」


防戦一方だった雪加は突如覚醒したように女子生徒へと

詰め寄って言った。そういえばそんな話も雪加にしたか。


「え? そうなの......? で、でも上里が暗くてつまらない奴ってことは本当だし

 あんなのとつるむとロクなことが無いからやっぱり部活はやめた方が」


「は?」


日本語にして僅か、一文字。しかし、普段俺以外の人間には押しの弱い彼女が

放った非常に低く、冷たいトーンの言葉は女子生徒を怯ませるのに十分な一撃だった。


「い、いやだから、上里なんかとつるむとロクなことが無いんだって。

 入部したときに自己紹介とかして貰ったと思うから、ちょっとは知ってるでしょ?

 つまらない奴だって......」


必死に弁解をする女子生徒だが、俺への悪口を言えば言うほどに

雪加の表情はまるで汚物を見るようなものへとなっていく


「......上里祐也について、知ってるかって? 勿論。少なくとも根拠すらマトモに

 提示せずに、ただただ主観だけで人を扱き下ろし荒唐無稽なことばかりを

 そのふざけた口から吐き出す貴方よりは彼のことを理解しているつもりよ」


軽蔑したような表情で淡々と冷徹な言葉を相手へと浴びせかける

雪加は、まるで四年生の頃の彼女に戻ったようだった。


「なっ......!? 今、何て......」

 

「貴方と話すくらいなら天井のシミでも数えた方が有意義だと言った。

 人のことを批評する脳の回路が死んでいる分際で彼のことを語らないで。

 非常に気分が悪い。それと、もう一つ言うなら貴方のようなモラルの無い

 低俗な人間と今後関わりたくは無い。横で一緒に頷いていた貴方達も一緒」


雪加は心底、軽蔑したような目で自分の席に集まっている

女子生徒達へとそう告げた。


「私が転校してきた時に周りに集まってきたのも結局はそういうことなんでしょう?

 私を貴方たちに常日頃から同調して、虐めや嫌がらせといった行為を暗に肯定する

 静かな大衆の一員に早いうちからしておきたかった......笑ってしまいそうなくらい

 間抜けな顔をしているわよ。図星みたいね」


雪加に先程から発言していた女子生徒はポロポロと涙を流し始めた。普段から、人を

貶したり陥れたりしている立場の人間なのでこうまで打ち負かされるのは珍しいこと

だったのだろう。


「事実を告げられ、否定することも出来ずに泣きじゃくる......見るに耐えない。

 私は調月雹霞や小戸森廻瑠、幻中玲奈、そして上里祐也の味方をする。

 あれほど貴方達は、その面子を嫌っていたのだもの。私のことも嫌いでしょ?」


鼻を真っ赤にしながら、静かに泣く女子生徒を周りの生徒達が心配そうに

見つめる中、雪加だけは冷酷な態度を変えなかった。


「ち、ちが!」


「仮に違っていたのだとしても私は貴方のことが嫌いになった。そして貴方が

 どれだけ()こうが、私の知ったところじゃ無い。だけれど一つだけ

 言わせて貰うと、貴方よりも苦しみ、泣きたい人間はこの世の中に多く居る。

 その多くの原因は貴方のような人間達に抑圧されたり、陥れられたり

 されたこと。そして、過去の私もそうだった」


其処に居たのは、過去の自分と今の自分との違いに戸惑い、己にさえも

否定され、いつか自分が過去の自分に戻ることが出来れば全てが上手く

行くと自己欺瞞を続けた少女ではなかった。その少女の表情には一筋の

迷いもなく、内には強い決意が秘められていたのだ。


「だから私は言う。さようなら、そして絶交と」


雪加は自分の席の周辺に大粒の涙を流しながら座り込む女子生徒に

そう言い放って置き去りにすると、俺と幻中の方向へゆっくり歩いてきた。


「あれで良かったのか? 結構な数を敵か味方以外のものにしたと思うが」


やがて雪加と目が合うと、俺は小さく笑いながらそう聞いた。

雪加の先程の女子生徒への発言はその取り巻きや知人たちとも絶交することを

意味する。余計なことを言わなければ上手く彼女らとやれていたかもしれないの

だから中々思いきった真似をしたものだと思う。


「うん。あんな根拠の無い言葉ばかりを振りかざして、人の苦しむ様を食い物に

 するような有象無象よりも私の盟友であり、恩人である祐也の方がよっぽど

 優先すべきだから」


「久し振りにお前の口から聞いたな。盟友」


「この前、白嶺達に話したときに思い出した。言っておくけど盟約は無期限だから」


つまり、余程のことがない限りコイツとの盟友関係は持続するということか。

まあ、嬉しくないことも無い。


「さいですか」


俺は何だか恥ずかしい気分になり、視線を本へと落とした。

昔に戻ったような気分だ。


「それに、さっきも言ったけど部活の皆も会ってからの期間は短いけど

 好きだから、馬鹿にされて腹が立った。勿論、玲奈のことも」


「・・・私への悪口は無視して頂いて、結構です。私自身は微塵も

 気にしていませんので。お気持ちだけ受け取らせて頂きます」


雪加は静かに頷く。


「うん。ああいった人種の行動に一々首を突っ込むのは時間の

 無駄だって良く知ってる。今回は特殊な例だったから」


「・・・そうですか」


「ま、これで雪加も晴れてこっち側の人間になった訳だ」


先程の女子生徒への態度を多くの者が見ていたのだから

前のように雪加に人が集まるとは考えにくい。


「要するに。小学校、中学校、高校1年の時とおんなじ」


だが、雪加は顔色一つ変えなかった。


「冷静に考えればそうか。なら、あまり変わらないな」


「そういうこと。自然観察部の皆は増えたけど、それ以外は特に昔と変わらない」


『昔と変わらない』そんな雪加の言葉を聞き、俺は高揚感にも似た不思議な

感情を覚えた。また、あの頃のように雪加と付き合うことが出来るのだ。


「だから、前みたいに勉強会を開こうと思う。部活の皆も誘って。玲奈はどう?」


「・・・私は別に......」


幻中はバツが悪そうに顔と本の距離を縮め他。


「幻中」


「・・・はい」


「駄目か? いや、幻中が勉強会なんかに参加しなくても

 元から頭が良いのは何と無く分かっているんだが」


雪加にとって、対等な立場で話せる人間は本当に俺くらいしか居なかった。

そして、彼女自身俺と同様に他人への興味が薄い。そんな彼女が自分から

他の人間を誘うというのは大変珍しいことであり、出来れば付き合ってやって

欲しいというのが雪加の盟友としての本音だ。


「・・・そうまで言われるほど成績は良く有りませんが......貴方が

 そう言うのであれば、参加させて貰っても良いかもしれません」


「だってよ」


「......玲奈、ありがとう」


「・・・いえ、勉強会にお招き頂くのは此方ですので」


俺の言えたことではないが、幻中も人と接するのが得意な部類の

人間ではない。そんな幻中がわざわざ、付き合ってくれるというの

だから感謝しなければ。


「でも、はっきり言って白嶺に勉強を教えれる気がしない。

 一応、三年生の勉強を予習してはいるけどまだ完璧じゃないし」


雪加の自分へのスパルタぶりは相変わらずのようだ。これで、アニメを

見たり、本を読んだり趣味の小説執筆をする余裕があるのだから凄い。


「・・・それは......仕方がないのでは?」


「どっちにしろ、あの人だったら参加するだろ。面白そうとか言って」


小戸森はどうにかなるとして問題は調月だ。今回、提案者の雪加と俺の間には

昔からの親交があったので自然と俺も参加することにしたが調月は違う。

そして、調月は俺と性格や考えが非常に酷似しており、俺は雪加のような

存在以外から勉強会に誘われても断っていた可能性が高い。

つまり、調月は雪加の誘いを一蹴する可能性が高いのだ。


「そっか。それじゃあ、まだ一時間目まで時間が有るし雹霞を誘ってくる」


そう俺達に言い残すと、雪加は教室の外へと出て行った。


「......大丈夫か? あれ。調月のところ行ったけど」


「・・・さあ......ですが不思議と彼女なら調月さんを説得しそうな気がしますね」


幻中の声色からは若干の疲労が伝わってきた。


「悪いな。変なものに参加させて」


「・・・いえ、嬉しかったですよ。誘われて」


「そか......アイツ、要領悪いところがあったりするけど悪い奴

 じゃないから、多目に見てやってくれ」


という、俺も要領は悪いし、コミュ障だし、一般的な高校生からは

遠く離れた存在なのだが。


「・・・上里君は余程、彼女が大切なんですね」


幻中の顔は本で隠れて見えないが、直感で彼女がこの言葉を言うとき

微笑んでいたのだと感じ取った。


「まあ、な。この高校に入れたのも雪加のお陰だし、アイツに助けて

 貰ったことは多いんだよ。というか、やっぱり名字呼び慣れないな」


「・・・えっと」


「いや、別に嫌な訳じゃないんだぞ? 只、慣れないだけで」


「・・・上里君......私もまだ違和感が有ります。遠くに居た筈の

 貴方が急に近くに居るように感じられて」


俺が雪加のことを名前で呼ぶようになったときも、幻中の言っているよう

ぐんと距離が近くなったような錯覚に陥った覚えがある。


「名前って、不思議だな。幻中」


「・・・そうですね。上里君」


互いをからかうようにそんなことを言い合うと、俺達はクスリと笑った。

俺としても幻中との間には一枚、壁が有るような気分だったので名前で

呼ばれるようになったり、こうやって互いに笑い合えるのには少し

くすぐったい物がある。その時、ふと俺は雪加のことが頭に過った。

アイツは殆どの人間を下の名前で呼ぶのだ。


......アイツが部活に順応するのは意外に早いかもしれない。

『前科部!』を読んで頂きありがとうございます!

少しでも、良いと思った方は評価、ブクマ、感想、レビューをお願いします!


そして、今回の後書きはかなり重要なお知らせが有ります。

私、蛇猫。同アカウントにて新しい小説『一人暮らしの俺、美少女の幽霊を養うことになりました。 ーヒュゥゥゥドロドロドロ~でうらめしや~な彼女との生活ー』を連載させて頂くことになりました。


今回の作品は『前科部!』とはは違い、なろうっぽい長いタイトルにしてみました。

Twitterで募集して決まった愛称は『うらめし生活』です。前科部を基本的に

優先して投稿していくつもりですが、もしかしたら多少更新頻度に影響が出る可能性も有ります。


幼馴染みが死んだことによってやさぐれ気味の少年が生前の記憶を失った

幼馴染みの幽霊と出会い、家に住まわせるうちに引かれあっていくラブコメです。

幼馴染みの幽霊の存在以外は全て現実世界の日本。なんなら前科部の世界と大差ありませんので

ファンタジー的なものが苦手な人でも楽しめるかと思います。


是非とも、覗いてやって下さい。現在は三話まで更新中です。

古参ファンを名乗るのなら今のうちですよ!w

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