マウスを25万匹毒殺する蛇
「ヒヨドリ、何らかの果実を補食......と」
俺はしゃがみ、足を下敷き代わりに『自然観察記録帳』に観察したことを記入する。
「かなり鳥を観察出来たな」
季節は初夏、あまり鳥を見るのに適した季節ではないが、普通種の鳥ならば幾らでも
見ることが出来る。シジュウカラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ツバメ、スズメ
ハシブトガラスなどだ。何処にでも生息している鳥だが、ノートに書いてみると意外に
多くの種類を観察していたことが分かった。
「よっこらせ」
調月が居たら確実におっさん臭いと言われるであろう言葉を発しながら俺は立ち上がる。
「えらく、中年臭い言葉を言う物ね」
すると、俺の真後ろに調月が立っていた。
「お前はことあるごとに暴言を吐く癖をやめろ」
「じゃあ、貴方にはことあるごとにストーキングをするのを止めて貰っても
いいかしら?」
「何の用だ?」
俺は突っ込むのに疲れたので話を逸らした。
「ええ、こんなものを捕まえたのだけど」
調月はそう言いながら両手で大事そうに掴んだ何かを俺に近付けてきた。
......ちょっと待て。
「調月。手を開ける前に確認だ。それは昆虫じゃないな? もし、昆虫だったら
マッハでこの場から退散させて貰う」
いや、昆虫だって立派な生物で生態系の重要なポジション位置するのも
分かっている。だが、それでもあのビジュアルは無理だ。
「おぞましいことを言わないで。そんな訳無いじゃない」
おお、調月も昆虫嫌いなのか。調月って結構俺と共通点が有るし、性格が
もう少し合えば良好な関係を築けたかもしれない。
「そうか。昆虫じゃないなら良い。見せてくれ」
「ええ、どうぞ」
調月はそう言って俺の手にその生き物を置く。
「蜥蜴? いや、カナヘビか?」
「ええ、後者が正解。カナヘビよ」
爬虫類はあまり詳しく無いのだが、ビジュアル的に好きなので知っていた。
「よくそんなの見つけたな」
「普通にその辺を走っていたから簡単に捕まえれたわ」
カナヘビって結構素早い筈なんですが、簡単とは。
「取り敢えず記入しとくから、それ逃がしてきて良いぞ」
俺が早速しゃがんで新たにカナヘビをノートに記入しようとすると調月は
「待ちなさい。この子は尾の付け根が膨らんでいるから恐らくオスよ。
それもノートに記入して」
と言いながらカナヘビの尾の付け根を見せてきた。確かに少し膨らんでいる。
「了解。つーかオスメスの区別が付くとかカナヘビが好きなのか?」
しかも、カナヘビのことを『この子』とか言ってるし。
「少しね。では、失礼するわ」
調月はそう言うと何処かへと歩いていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから約20分後。
「こんなものを捕まえたのだけど」
「またかよ。お前捕まえるの好きだな。んで、何を捕まえて......うわっ」
其処にはかなり長く、調月の手にとぐろを巻いた茶色い蛇が居た。
「シマヘビよ」
「シマヘビって、結構攻撃性強めの蛇だよな?」
「ええ、よく知っているわね。別に噛まれても少々痛みが有るだけだから
直ぐに消毒をすれば問題無いわよ」
「爬虫類女子って奴か?」
流石に爬虫類が好きでもないのにカナヘビのオスメスを瞬時に見分けられる
女子高生は少数だろう。
「どちらかというと亀やワニよりトカゲや蛇の方が好きだけど、間違いではないわ」
「お前が外に蛇とかを捕まえに行く姿、想像出来ないんだが」
もう一度言うが、調月は紫の長髪に猫背で目付きが悪いという陰キャの完全形態の
様な奴だ。そんな調月が野原に行って蛇を鷲掴みにする様は想像しにくい。
「昔は父とよく蜥蜴や蛇を捕まえたけれど最近は全くそういうことはしていないの。
私が野原を走り回る様子を想像しにくいのも無理はないわ」
「知識としてあればカナヘビのオスメスも見分けられるし、腕が鈍っていなければ
捕まえることも容易ってことか」
「ええ、そう言うこと」
調月はしゃがんでシマヘビを逃がしながら言う。その様子を見て俺は一つの
言葉が頭に浮かんだ。
「毒蛇」
「......何か言った?」
「毒蛇、お前の渾名に打ってつけじゃないか?」
「由来を教えてくれるかしら」
「直ぐに毒を吐く所と何と無くお前のイメージが蛇っぽい所、それにお前が
爬虫類好きな所を掛け合わせて、毒蛇」
俺が言った通り、調月は目が腐っているのと同時に蛇のような鋭い目をしている。更に
猫背と紫の長髪も相まって蛇の擬人化と言われても納得できる域にまで達している。
「毒蛇、毒蛇。悪くないわね」
調月は俺の考えた渾名を繰り返した後、少しだけ笑みを浮かべてそう言った。
「いや、結構皮肉入ってたんだが其処はどうなんだよ」
「要するに、私の罵倒はインドタイパンの猛毒ほど貴方の心に傷を付けている
ということでしょう? 暴言の質を評価されるのは嬉しいわ」
「いや、まあそうなんだけど。因みに聞いておくとそのインドタイパンとやらの
毒の威力はどれくらいなんだ?」
まあ、蛇好きの調月がわざわざ喩えに使うくらいなのでマムシよりは幾らか強いのだろうが。
「大体、キングコブラの『約50倍』でニホンマムシの『約800倍』。そして、一度に
成人男性『約100人』、もしくはマウス『約25万匹』くらいを葬りさるレベルよ」
あ、はい......うん、マムシよりは幾らか強いってレベルじゃねえ。何だよキングコブラの
50倍って、マムシの800倍って。蛇界では毒のハイパーインフレが起こってるのか?
「確かにお前の罵倒だわ。うん」
「性犯罪者の割には中々粋な渾名を付けたものね」
「割とマジで人が居るところで俺を性犯罪者やらストーカー呼ばわりするの
止めてくれない?」
「良いじゃない。事実なのだから」
「事実違う」
「何故、カタコト? 取り敢えず不審者ということで通報」
調月......もとい毒蛇はスマホを取り出して『119』の番号を表示させた。
「おい、それは消防だ。警察は110だぞ」
「あら、ごめんなさい」
毒蛇は新たに110の番号をスマホに表示させる。おい、俺は何てことを
しているんだ。今から通報されるんだぞ。
「お、調月さんと祐也君。何か見れた?」
俺が謎の理由で通報されそうになっていると、先程まで先生や小戸森と一緒に
観察をしていた先輩が来てくれた。流石先輩、来てほしいところで来てくれる。
「ええ、まあ。何種類かは観察出来ましたよ」
「お、やるね。此方も色々観察したから来てくれないかな?」
「了解です。調月も行くぞ」
「......ええ」
調月は不承不承と言った風に頷き、先輩に付いていく俺と一緒に歩き始めた。
「おっ、芦原、上里。おお、調月も居たのか。此方だぞ」
少し歩くと、其処には宗里先生と小戸森、幻中が居て宗里先生がそう言いながら
手を振ってきた。
「来ましたけど、何か観察出来たんですか?」
俺は其処に行き、宗里先生にそう言った。
「ああ、結構色々見れたぞ」
「例えば?」
「そうだな、まずサルだ」
はい?
「今何て言いました?」
「普通に猿が居た。子供連れた奴な」
マジかよ。いや、確かに宿屋のホームページにも鹿や猿も居るみたいに
書いていたから、もしかしたら見れるかなと思っていたけれども。
「その軽いノリは何ですか。結構珍しい部類でしょ、猿って」
いや、わんさか猿が出没して注意の看板を出すような所も多いらしいが
この観察地では猿は出会えたらラッキーレベルには希少な動物だ。
「いやな、家族連れだったのか結構数が居て有り難みが無かったんだよ」
何それ見たかった。
「そうですか。んで、他には?」
「シカ」
「鹿!?」
おいおい、言っておくが此処は奈良公園じゃないぞ。鹿も猿と同じか
それ以上に珍しい部類である。
「遠目に一瞬見ただけであまり見えなかったけどな」
「なんか先生達ばっかり珍しい動物を発見してますね」
「ふふん、そうだろう。私の強大な力に誘われて様々な珍獣が姿を現すのだよ」
どっちかと言うと鹿や猿よりも先生の方が珍獣って感じがする。
「じゃあ、取り敢えず書きますね」
俺は宗里先生にそう言うと、しゃがんであのノートに鹿と猿のことを書き始めた。
「あの、日本の猿と鹿って正式名称何でしたっけ?」
「・・・鹿はニホンジカ、猿はニホンザルだと思います」
やっぱりまもまもは有能。はっきりわかんだね。
「サンキュ」
「よし、書けましたよ」
俺は書き込んだ場所を確認の意味を込めて先生に見せる。
「ナイスだ上里。お前と調月は何見たんだ?」
「ああ、俺は鳥を何種類かと」
「カナヘビとシマヘビです」
「謎の鳥類と爬虫類推しは何なんだよ」
宗里先生が少し呆れ気味に言うと
「「趣味です、というか先生も哺乳類だけでは?」」
と調月と俺は同時に言った。いや、『趣味です』はあり得るとして後半がハモるの凄いな。
「お、おう仲良いな。それとサルとシカは種族的にかなり離れているから良いだろう」
「先生、そろそろ宿屋に向けて歩かないと夕方までに宿に着かないかも知れません」
先輩が腕時計を見ながら言う。そう言えば夕飯って宿屋の奴食べるんだったっけ。
よし。嫌いなものは徹底的に小戸森に押し付けよう。
「もうそんな時間か。分かった。引き続き自然観察をしながら宿屋に向かうか」
先生は先輩の言葉に頷いてそう言った。今日は一日歩き回って疲れた。が、疲れを癒すための
睡眠も中々出来なさそうだ。というか4人の女子と同じ部屋で普通に寝れる奴って居るのか?
居たら尊敬する。俺はそんなことを考えながら宗里先生に続いて歩いていった。
今の私の目標は
1.ユニークアクセス10000
2.『前科部!』50話までにポイント50
です! 文章も物語も拙い作品でございますがどうぞ、
評価、感想、ブックマークよろしくお願いします。
それともうひとつご報告がございます、2019年8月13日現在、
18話より前の改修工事......では有りませんが大きな編集を行っています。
理由は18話よりも前の話は何故か私が句点をつけていなかった事と
このサイトを初めて利用する私の無知ゆえ、文章配置が汚くなっていたことです。
編集が終わるまでの間、
『6話までは句点があるのに7話からは無い、しかも文章配置が全然違う』
と言ったことになりご迷惑をお掛けするかと思いますがどうぞ宜しくお願いします。
句点と文章配置の他に、文章自体の誤字や表現、人物の言葉にも多少修正をかけますが
物語自体は全く変える予定は有りません。どうかご理解お願いします。




