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前科部!  作者: 蛇猫
前科者達との自然観察
21/108

苦めの珈琲と毒入り少女


「んじゃ、精々楽しんでこい」


「ああ......行ってくる。俺が居なくても飯はきちんと作れよ」


俺は複雑な気持ちを抱きながら親父にそう言い残し、家を出た。今日は先輩と宗里先生が

頭の悪いことを決定したあの日から5日目の土曜日。郊外学習当日だ。とうとうこの日が

来てしまった。親父には郊外学習があるので一泊してくるとだけ伝えたが、真実を伝えた

訳だし良いか。そもそも親父が知っている自然観察部の部員は俺を除くと先輩だけ。俺以外

全員女子だなんて夢にも思っていないだろうし。因みに集合場所は目的地の最寄り駅だ。


「電車の駅で朝飯買うか」


時は朝の7時。朝食抜きで家を出たので少しは腹を満たしておきたい。

そんなに大きな駅ではないらしいが、コンビニくらいは有るだろうか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「美味い......」


自分の家の最寄り駅に着いた俺はベンチに座りながらコンビニで購入したパンを

食べていた。集合場所まで行くにはこの駅から出る電車に乗る必要が有る。だが

早く家を出過ぎたため今から行っても目的地の駅で時間をもて余すことが予想される。

そのため俺は、のんびりと朝食を取っていたのだ。


何と無く缶コーヒーを買ってみたのだが、やはり飲めた物ではない。残すのも気が

引けたので目を覚ますためだと自分に言い聞かせて無理矢理口に流し込んだ。


「親父はよくこんなものを飲むよな......」


親父は毎朝アイスコーヒーを飲んで仕事に行っているが、何が旨いのか理解不能だ。

ガムシロップを大量に入れれば飲めないこともないが、そこまでしてコーヒーを飲む

必要はないだろう。そして俺はパンを食べ終えると、ベンチから立ち上がり駅に入った。

コーヒーの苦味が口に残っているので口直しに紅茶でも買おうと思ったのだ。


そう言えば、切符をまだ買っていないことに気付き俺は自動販売機で140円の紅茶を

購入すると、直ぐに券売機に並んだ。通勤をする人が多い時間帯なのだろう。其処には

三台しかない券売機に並ぶ多くのスーツを着た人の姿があった。他にも、子供を連れた

女性と男性や自棄に大きなリュックを背負った背の高い男性等様々な人が並んでいたが

その中でも地味に目立っていたのが......。


「調月、お前とは最近良く会うな」


其処には自然観察部毒舌隊長、調月雹霞(つかつき ひょうか)が並んでいた。周りにイキイキとした

人が多い中、一人だけ猫背で死んだ目をしているので調月は意外に目立っていた。

その理論で行くと俺も目立っているって? 祐也、まだ高校生だから難しいことは

分かんない。


「貴方がストーキングしているだけじゃないの?」


調月は此方に気付いたかと思うとそんなことを言ってきた。何がなんでも俺を

ストーカーに仕立て上げたいらしい。


「お前がストーキングしてる可能性は?」


俺は一度白嶺先輩にストーカー行為をされたこと有るしな。


「......私が貴方につきまとう理由があると思う?」


「俺も無いだろ」


「私、容姿は整っている方よ」


うわあ、凄い自信。確かに調月は美少女だが......。


「『容姿は』って言ってる時点で気付いてるんだろうけどお前、性格と口は

 滅茶苦茶悪いからな?」


「男なんて所詮、容姿さえ整っていれば誰にでも惚れる生き物よ」


偏見が酷い。


「全国の男性に謝れ。それとお前は猫背で目が腐ってるということを忘れるなよ?」


それでも美少女と言えるだけの容姿をしているという意味でもあるが。


「その言葉、そっくり貴方にお返しするわ」

 

「俺はそもそも、美少年じゃないからセーフ」


「......それは、セーフなの?」


俺達がそんなやり取りをしていると、券売機の順番が回ってきたので券を買う。

そして改札を抜け、駅のホームに出ると電車がやって来た。調月の姿は見えな

かったので恐らく離れた車両に乗り込んだのだろう。乗車しても席に座ることは

出来なかった。


到着まで後4駅、既に外の景色は乗車したばかりの頃より随分変わっており畑や田

青々とした木々が広がる田舎の様な地帯が広がっていた。何処と無く懐かしく俺が

引っ越して来る前に住んでいた地域を思い出させた。いや、流石に此処まで田舎では

なかったが。そんな懐かしさを感じさせられる景色を楽しんでいると、間もなく駅に

到着することを知らせるメロディが車内に響き、車掌が駅名を読み上げると列車の扉が

開いた。目的の駅だ。


「滅茶苦茶田舎だな......」


電車から降りて、駅のホームから外を見渡すと広がっていたのは延々と広がる田園地帯。

いかにも野生生物が居そうな場所だ、こんな所で降りた者が居るのだろうかとホームを

見渡すと一人の老人と男性二人組が改札へと向かっていた。後は、やはり同じ電車に

乗っていたらしい調月の姿もあった。


俺は先程買った紅茶を一口飲むと外に出た。すると、駅のベンチには調月が座っており


「あら、また私の前に現れたわね。ストーカー」


俺と目が合った瞬間そんなことを言ってきた。


「いや、同じ目的地なんだから、ストーカーも糞も無いだろ」


逆に同じ目的地なのに会わなかったらそれは、もう迷子だ。


「じゃあ、性犯罪者?」


「何故そうなる、それに俺は紳士だ」


「変態紳士ね、心得たわ」


誰もそんなこと言ってないんですが、それは。


「もう、ストーカーで良い......」


「遂に認めたわね、今すぐ通報するから動かないように」


調月はスマホを取り出して、110番の画面を見せてきた。なんか、デジャヴ。


「誰も認めてないから、ストーカーじゃないから」


「何処に貴方がストーカーではない証拠が有るのかしら?」


「ストーカーである証拠が無いことが証拠だ」


「認められないわ」


即答ですか、そうですか。


「何でだよ......」


「貴方がストーカーである証拠が有るからよ」


「例えば?」


「貴方が私と居るときに発する、その陰気臭い雰囲気とその淀んだ目よ」


コンプレックスを的確に攻撃しやがった。


「その言葉そっくりそのままお返しさせて貰う。さっきお前が言ってた言葉だぞ」


「私の場合顔が整っているから」


だから、自画自賛かよ......とツッコミたい所だが否定出来ないのが悲しい。


「でもお前、性格と口悪いだろ」


「見てくれの良さが補ってくれるわ」


やっぱり顔が全ての世の中なんておかしい。この世界は腐っている。

この日本を変えたい。


「大した自信だな」


「事実だと思うのだけれど、違う?」


畜生。お前なんて俺の後輩の可愛さと比べたら足元にも及ばないんだからな。


「さあな」


此処で認めたら色んな意味で負けな気がする。


「というか、調月何でこんなに来るの早いんだ?」


駅の時計を見ても集合時刻までまだ30分もある。どう考えても早すぎるので

聞いてみると


「・・・・」


調月はいつぞやの幻中の様に黙り、顔を曇らせた。その様子を見て俺は


「いや、悪かった。別に言いたくなければ言わなくて良い」


直ぐにそう言った。そう言えば、本屋で会ったときも家の話題で同じような

反応をしていたし、その辺は彼女にとって触れられたく無い所なのだろう。


「一応、気遣い感謝するわ」


「おう」


それから20分も時間が立つと、電車が駅に止まり誰か来ないかと見ていると

知った顔が二人見えた。


「よう、幻中、小戸森」


うちのクラスの優等生、幻中玲奈(まもなかれいな)と芋天娘、小戸森廻瑠(こともりめぐる)だ。


「・・・おはようございます」


「おはようございます」


幻中と小戸森は俺に挨拶を返した後、お互い離れた所に座った。お前ら一緒の電車に

乗ってきたわりには仲良くないのな。まあ、集合時刻の10分前くらいに着く電車を

狙って乗ったら偶々同じ電車だったというだけなんだろうが。


「後は、先輩と宗里先生だけか」


まだ、集合時刻前だと言っても部長と顧問が一番遅いってどうなんだよ。


「なあ、小戸森?」


「......何ですか?」


「今日の弁当芋天揚げて来てやったからな」


そう、夕食は宿が出してくれるらしいが、昼飯は弁当となっていたので

可愛い後輩の為に出来る上里先輩は早起きして芋天を揚げて来たのだ。


「なっ、なに言ってるんですか。こ、こんな所で......」


小戸森は顔を紅く染めながら、周りに聞こえないように言った。いや、芋天好きを

暴露されて、恥ずかしがるのは分かっていたがそんな、彼氏に下ネタ言われた彼女

みたいな反応をしなくても。


「何を慌ててるんだ? 心配しなくても綺麗な油で揚げたし、出来るだけ湿気を

 吸わないように持ってきたぞ?」


何か可愛いので、更に追い討ちをかける。


「誰もそんな心配してません!」


何だよ、上里さん結構気を使ったんだぞ。


「大丈夫、火は中まで通ってるし、問題ないぞ。なあ、調月?」


「其処で私に同意を求められても困るのだけれど」


「まあまあ、芋天食って落ち着け」


「ああもう芋天、芋天煩いです!」


あ、遂に幻中達の前なのに俺と居るときのモードに切り替わった。


「ボクのことをなんだと思ってるんですか!?」


「それ、前も言っただろ?」


確か、月曜日に同じような会話をした気がする。


「断じて芋天娘では有りませんからね?」


「めぐめぐは良いと?」


「良くないです」


「ええ、流石に呼び捨てはちょっと...」


いや、俺が小戸森には結構色々言えると言っても限度が有るわけで

流石に女子を呼び捨てで呼ぶのは。


「小戸森で良いじゃないですか、何で渾名で呼ぶんですか!」


「俺達も渾名で呼びあってるもんな? 毒舌女?」


俺は調月が座っている席の方を向いて言う。


「ええ、そうね。ストーカー」


すると、調月は此方を向いてニコリともせずにそう言った。調月も素の毒舌が

出始めたようだ。というか、ストーカーって渾名だったんだな。


「ほらな、渾名で呼び会うのは当たり前なんだよ」


因みに幻中はまもまもだが、なんと無く言いにくい。


「お二人の仲悪すぎじゃないですか?」


「それは認める」


そんなことを言い合っていると、また電車が到着した。恐らく、先輩と宗里先生は

この電車に乗っているだろう。そう思いながら改札を見ていると。


「あはは、みんな揃っちゃってるね。ごめん」


「やあやあ、皆の衆。宗里先生だぞ」


予想通り、二人がやって来た。先輩に比べて宗里先生の反省の無さよ。


「んじゃあ、早速だが。第一回自然観察部、野外学習を始めるぞ!」


と言った。第一回目なのか。


前回の投稿を見て早速ブックマークをしてくれた方が居たみたいで

本当に感謝しています!

これからも引き続き頑張りますので是非、ブックマーク、評価、感想お願いします。


追記:「前科部!」20話いきました。見てくださっている皆様のお陰で頑張れています。

文章も物語も拙い作品では有りますが、今後とも宜しくお願いします。

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