悪夢
『お兄ちゃん起きてよ〜』
「んん、後五日」
『そんなに待てないよぅ もう早く起きてよ〜』
そう言って未だ瞼の重い俺をユウは揺すってくる......。あのユウって誰でしょうか? 俺の知り合いに俺のことを『お兄ちゃん』なんて呼んでくる妹属性は居なかったと思う。
『お兄ちゃんが起きないのなら私にも考えがあるよ? へ〜んしん』
その掛け声と共に『ユウ』の肌はどんどん肉が盛り上がっていき、顔は歪になり、たちまち肉の塊となった。うわ、気持ち悪。
冷静に考えよう。俺には妹属性の知り合いもいないし、肉塊の知り合いもいない。そもそも、幼女が肉の塊になるなんて非現実的過ぎる。でもここが現実ではなければ? そう、俺の答えは
「引っ越してそうそう悪夢かよ!」
そう、夢オチである。
「顔、洗うか」
引っ越しそうそう賑やかな肉塊の夢で初日を迎えた俺は洗面台で顔を洗い、歯を磨いた。
歯を磨くとそのままキッチンに向かい、お湯を沸かして、それをカップラーメンに注ぐ。三分待つのがマストなのだろうが、俺は10秒も待たずに机に置いて食べた。
いや、別に三分待つのが面倒だったのではない。単に硬いカップラーメンが好きなのだ。因みに親父はカップラーメンを待たないのは理解できるが、カップうどんを待たないのは理解出来ないらしい。俺としては冷凍ポテトを凍ったままで食べる親父の方が理解出来ないのだが。
というか、そもそも、どうしてこんな食事をしているのかと言うと、まだ引っ越して来てから買い出しに行けていないのだ。だから冷蔵庫にもペットボトルのお茶ぐらいしか入っていない。思い切りアイツの鉄則破っているがこんなときぐらい勘弁して貰おう。
「さてと、用意するか」
俺は自分の部屋に入り、制服を着ると、リュックに教科書や筆箱などを入れた。そう、学校の用意である。曜日で言うと今日は水曜日、授業があるのだ。
「まあ、食パンを咥えた女子高生との衝突だけを期待するか......」
引っ越してから初めて迎える一日くらい休ませて欲しい、という気持ちを抑えて俺はそんな事を呟いた。
唐突に夢から始まって混乱した方もいらっしゃると思います。すいませんw