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前科部!  作者: 蛇猫
前科者が集う部活
18/108

カミサト・ユウヤ・カエサル


「で、結局幻中先輩は部活に来ると?」


「まあ、そうだな。本人はそう言ってた」


今日も今日とて、小戸森と昼食を食っている。一応、部員な訳だし幻中が

来ることは報告して置いた。まあ、別に金曜は用事で休んだだけらしいが。


「それ以外に何か言ってましたか?」


小戸森は水を一口飲んで言う。何やら神妙な面持ちだ。


「いや、特には何も言ってなかったと思うが......なんだ、自棄に幻中の事を

 気にしてるな。お前らそんなに仲良かったっけか?」


自然観察部の部員達の仲は特別良さそうでもなかったのだが。


「いえ、少し気になっただけです」


小戸森は心なしか、安心したように言った。


「そうか」


俺が返事をして、水を飲むと


「というか、先輩。今日は自棄に食事が質素ですね」


小戸森が俺の白米と漬物を見てそんなことを言ってきた。

確かに質素というか、ショボいが


「どう考えても、お前が芋天を奢らせているからせいなんですが、それは」


節約ってほんとに大事。財布、百円しか入ってないもん。


「う、それは すいません......」


小戸森は申し訳なさそうに、肩を竦めて言った。


「いや、別に言うほど気にしてないから良い。ここの漬物、まあまあ旨かったし」


普通にスーパーで買った奴より幾らか旨かった。これからも

節約したい時には利用するかも知れない。


「......あの、先輩」


俺が新しい節約法を考えていると小戸森が話し掛けてきた。


「なんだ、言っておくが俺の漬物は渡さんからな?」


俺は定食をそっと、自分の方へと引いて守る。只でさえボリュームの無い食事の

おかずを奪われては非常に困るのだ。


「......先輩はボクを何だと思ってるんですか?」


「芋天娘めぐめぐ」


俺は間髪入れずに答えた。これ以外の回答は有るまい。


「はい?」


「だから、芋天娘めぐめぐ」


聞こえなかったようなので、俺は再度言った。すると、小戸森は

顔を真っ赤にした。


「聞こえてますよ! 何度も言わないで下さい! 何ですか芋天娘って!?」


聞き返してきたのは小戸森の方だろうに。怒られるのは心外だ。


「お前の渾名。気に入っただろ?」


「そんな、渾名要りませんからね!?」


残念、折角考えた素晴らしい渾名だったのだが。


「まあまあ、落ち着いて芋でも食え」


俺は優しく小戸森に諭した。この小動物は美味しい物を食べさせれば

機嫌が大抵、直るのだ。


「むう.......」


小戸森は此方を睨み付けながらも芋天を食べ始める。その姿は

まるでクルミを頬張るリスか何かの様だった。


「ほら、芋天娘じゃないか」


俺はわざと腹の立つ顔で、小戸森を煽った。我ながらウザい。


「だから、芋天娘じゃないです!」


小戸森は、今にも地団駄を踏みそうな勢いだ。


「じゃあ、芋天息子?」


「ボクは女です!」


文章だけ見ると、男の娘にしか見えない気がする。


「良いじゃん、芋天息子って一瞬、芋天皇子(いもてんおうじ)に見えるんだから」

 

もしくは芋天皇(いもてんのう)の後に子が来るパターンだ。


「何も良くないです!」


「だって、よく考えると小戸森って女要素皆無だろ?」


俺はかなり失礼な事を言った。生憎、俺にデリカシーを求めるのは

間違いである。何故なら俺はAKY(敢えて・空気・読まない)なのだから。


「ちょ、ボク思いっきり女じゃないですか。何処が男なんですか!?」


小戸森は焦ったような、憤慨したような、表情で声を荒らげた。


「髪は短いし、一人称ボクだろ? それに......いや、何でも無い」


俺は言葉を詰まらせる、流石にノーデリカシーの俺でもこれを真っ向から

言う気にはなれない。というか、言ったら殺されそうだ。

 

「それに......何ですか?」


急に小戸森の声が凍てついた。


「い、いやあ......そのですね」


「先輩...ボクの()()が女らしく無いんですか?」


小戸森が俺にそう問う様は、調月でも背を見せて逃げるレベルで恐ろしい。


「い、いや。その小、小戸森さんの体はき、筋肉質だなあ......と」


間違いではないが、核心は突いていない。これで大丈夫な筈だ。


「主に()()()()が......ですか?」


しかし、俺のそんな安堵も束の間。小戸森は追い討ちをかけるかのように

続けて聞いてきたのだ。


「じょ、上半身?」


何故に疑問系になっているんだ俺。このままだと......殺られる


「へえ......そうですか。上半身が、へえ......」


ヤバい......どんどん小戸森の怒りのパラメーターが上がっていく。

この状況を打開できる策は無いのか? 考えろ、思考を動かせ。いや、有るには

あるぞ。たった一つの希望が。しかし、この策が潰えると本当に万事休すだ。


だがどちらにせよ、このままだと終わる1%でも希望があるのなら......懸けるしかない

そうだ、数々の口喧嘩に勝ち、数々の言い訳を積み重ねてきた俺になら出来る。


さあ、進もう 神々の示現と食堂の店員が呼んでいる方へ


「『賽は投げられた』」


俺は有名なあの台詞を口にして机を立った。


「え?」


小戸森は驚いたように、間抜けな声を出した。


「小戸森」


俺は睨み付けるかのように真剣な眼差しで小戸森を見た。


「は、はい......何ですか?」


小戸森は若干、覚悟を決めた俺の覇気に押され気味に返事をした。

俺はその返事をきちんと、確認して理論上最強の言葉を放った。


「大学芋......食べるか?」


その瞬間、世界の時が止まった。学食の喧騒もカウンターの向こうから

響いてくる食器洗いの音も俺の耳には入らない。此処に居るのは、彼女と

俺、二人だけだ。


「・・・・・」


黙り込む小戸森。これは、どちらだ?


「ほ、ほらさっき欲しがってただろ?」


小戸森に俺は建前を言う。こんなことを言っても俺の狙いはほぼ確実に

聡明な彼女にバレているので結局は小戸森が大学芋で許してくれるか

許してくれないかの、戦いになる。


「......分かりました先輩の魂胆は見えてますけど、それで手を打ってあげますよ」


小戸森は大きな溜め息を吐くと、小さな笑顔を浮かべて俺へと告げた。

きた、見た、勝った。勝ち負けの話ではない気がするが、兎に角俺の勝ちだ。

後は540円の大学芋の代金をどうやって用意するかなのだが。


「おう。待ってろ」


小戸森にそう言い残して俺はカウンター......ではなく学食の隅の

方に設置されているテーブルへと向かった。


「......何か、用?」


その席に座って居たのは日曜日にも会った紫髪の少女。その素っ気ない態度から

彼女が目的の人物であると確信した俺はその少女に無言で頭を下げた。


「調月」


「な、何かしら?」


唐突に頭を下げられて、戸惑っている様子だが構っていられない。


「面倒臭い建前は無しだ。単刀直入に言う」


「え、ええ」


俺は一気に息を吸い込むと、大きな声で言葉を放った。


「440円貸して下さい!」


「......は?」


いや、だって財布の中に百円しか入っていないのだ。

それに対し大学芋は540円。無理だ。


「マジで頼む。利子付けても良いから」


とは言っても、理性的な値段にしてもらいたい。


「というか、何故貴方私が居るところが分かったのよ」


「並んでいる時に見かけた」


影の者は同じく影の者を見つけるのに優れている......どうだ格好良いだろ。


「やはり、ストーカー?」


「違う。前にも言ったが本当に前科持ちになるから止めてくれ」


親には色々と世話になっている。迷惑は掛けられない。


「それで何故貴方は私の命の次に大切な金を借りたいのかしら?」


命の次に大切な物、金かよ。


「いや、それは......すまん理由は言えん」


流石に後輩の機嫌取るために物奢るとは言えない.......恥ずかしいし。


「そう。まあ、別に利子を付けて返してくれるのなら理由なんて正直どうでも良いわ。

 利子は百円期限は明後日まで、それを過ぎれば一日10円ずつ加算、どうかしら?」


かなり高い気がするが、構っていられないか。


「それで良い」


調月は財布から440円を取り出すと、俺にペンをすっと差し出した。


「440円、確かに貸したわ。念のためにサインをお願い」


「わざわざサインなんているか?」


「勿論。後日請求したら貸してもらっていないと言われて

 証拠が無いのは私だから」


そう言いながら調月は契約書の様な物をサラサラと書いていく。


「信用無いな」


「逆にあると思った?」


調月は結構傷付く事を言ってきた。約束は守るようにしている筈だ。

......する相手が居ないのだが。


「出来たわ、サインお願い」


渡された結構本格的な契約書を見て変なところ感心させられながら

俺はサインを先程の調月に倣ってサラサラと書いた。


上里祐也(かみさと ゆうや)、貴方そんな名前だったのね」


思いっきり自己紹介しましたよね? 俺。


「もう良い、440円ありがとな」


俺は調月に礼を言いカウンターへと向かうと大学芋を

540円で購入して小戸森へ届けた。


「ほら、大学芋だぞ」


俺は大学芋を小戸森の前に大学芋を突き出した。


「ありがとうございます、先輩」


「おう」


俺が返事をすると、小戸森はフォークで大学芋を口に運び始める。

しかし、たかが大学芋で540円は高い。俺であれば、300円でこれの3倍は作れる。


「なあ、小戸森」


「何ですか、先輩」


「お前、ずっと俺の事先輩って呼んでるけど俺の名前覚えてる?」


調月の件で不安になったので一応小戸森にも聞いてみた。


「突然何ですか。えっと確か、かみ、かみ...上村友也(かみむら ともや)さんでしたっけ」


似てるが違う。誰だよ上村友也。偏見だが、多分そいつリア充だぞ。


「マジか......先輩呼び可愛いと思ってたら名前忘れられていたのか」


後、友也(ともや)の漢字出てきたのなら、せめて友也(ゆうや)と読んで欲しかった。


「冗談です。上里祐也(かみさと ゆうや)さんですよね。流石に覚えてますよ。

 他に覚えるような人居ませんし」


他に覚える人が居ない......悲しきボッチの性だ。


「ああ、そうだ。小戸森?」


「はい?」


「お前、さっき何か言いかけてただろ。何言おうとしてたんだ?」

 

確か小戸森は俺が話逸らす前何か言いかけていた筈だ。


「え? ああ先輩が漬物は渡さないとか言ってきたアレですか。

 その後私の身体は筋肉質だとか言ってきた......」


機嫌を直した様子だった、小戸森は思い出したように声を低くして

俺を責め立てるような視線を向けてきた。


「小戸森。言っとくが俺は小さい方が好きだぞ?  何がとは言わないが」


取り敢えずどうでも良い俺の好みを伝えて機嫌を取ろう。

あしらわれるだけかも知れないが。


「ちょ、何を言うんですか......変態、気持ち悪い、祐也」


小戸森は顔を僅かに赤くして胸を守るようなフリをした。まあ、予想通りの反応だ。

というか、よくもまあコミュ障の俺がこんなことをリアルで言えた物である。

何故かは分からないが、小戸森とは遠慮無く喋る事が出来る。小戸森も小戸森で

毒舌だからだろうか


「俺の名前を悪口に使うなよ......と言いたい所だが、今の呼び捨ては

 ポイント高いから、これからもそう呼んでくれ」


呼び捨てとか親以外だとアイツにしかしてもらったことがない。

まさかの男子にも呼ばれた事が無いというのが、また俺らしいな。


「いや、流石に目上の先輩の名前を呼び捨てで呼ぶ自信なんてボクには無いですよ」


つまり、自信次第では呼んでくれるということだろうか。


「まあ、良いか。先輩呼びも可愛いし、あれだろ?  上里先輩じゃなくて

 先輩って俺を呼ぶのは小戸森の中で本当の先輩は俺しか居ないという

 健気可愛い意味が込められているんだろ?」


俺はからかうような口調で言った。


「いえ、まあ間違いではありませんが......」


え、マジで? 健気可愛いの?


「ボク、先輩と呼べる相手が居なくて......その、親しくなった先輩が

 先輩だけだったので区別する必要が無くて、気づいたらこの呼び方に

 慣れてたんです......その、変ですか?」


「さっきから、可愛いって言ってるだろ?」


呼ばれてる方からすると慕われている感じがして心地が良い。

めぐめぐが俺のことを慕っているようなことは無さそうなので

その意味は込められていないのだろうが。

 

「そう......ですか?」


小戸森は更に顔を紅潮させた。やはり、面と向かって可愛いと言うことに関しては

幾らか抵抗はある物の小戸森が相手だと言いやすい。芦原先輩が俺に馴れ馴れしいのも

同じく後輩だからだろうか。


「んで、またまた話が逸れたが、結局何て言おうとしてたんだ?」


話を逸らしすぎて、脱線列車の上里とか言う通り名が付く可能性まで有りそうな

俺はやっと話を戻した。


「ああ、そうでしたね。先輩、実は......」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「部活行くか」


あの後、小戸森には幻中が金曜日倒れた事を聞かされた。本人には内緒にしろと

言われているので俺も周りには言わないでくれと小戸森に口止めされてしまった。

倒れているのを発見したときは意識も朦朧としていたくらいの状態だったらしく

これからも倒れるかもしれないので具合が悪そうなら声を掛けてやってくれとのことだ。


そう言うことなら、宗里先生に言うのが一番なんだろうが、俺は口止めを食らっている。

取り敢えずは様子を見よう。その肝心の幻中は一足先に部室へ行ってしまったのだが。

企画書も書けたことだし今日は白嶺先輩に言って企画の説明でもしよう。

問題は調月が来るか、だ。学校に来ていることは昼休みで確認済みだ。


階段を降りると、何だか恐怖を覚える。近藤の件で階段を降りる事に恐怖を

感じるようになってしまったのかもしれない。階段恐怖症とかあるのだろうか。

そんな事を考えながら、階段を降りると


「イタッ、ちょ なにすんの~」


また、ぶつかってしまった。テンプレと化すのだけは止めて貰いたい。

今度は近藤とは違う、金髪の男とぶつかったのだ。


「あ、すまん」


今回は前の件と違って両者に非があったので普通に謝って置くことにする。


「いやいや、良いよ、良いよ~。それよか、キミ転校生って奴でしょ?

 噂なってるよ~」


いや、お前も謝れ。そして、なんだその口調は。


「へえ、そうなのか。それじゃあ、じゃあな」


面倒臭いので軽くあしらっておいた。悪意は無さそうな奴だったが

兎に角捕まると面倒臭そうだ。俺はさっさと部室に向かうため歩を進める。


「僕さ~有馬岬(ありま こう)って言うんだよ。ほら、以後お見知りおき的な~?」


何で付いて来てるんだ。お前、階段の上りと下りでぶつかったんだろうが。

そしてナチュラルに名乗るな。


「キミ、あれでしょ~? 前科部入ったんでしょ~」


「......付いてくんな」


「え~僕もこっちに用があるんですよ~」


「.......お前、階段で逆向きにすれ違ったよな?

 お前が下の階に降りてくるのはおかしいくないか?」


「ん~? あ~あれねえ。階段上り降りして足鍛えてたんだよ~」


な、なんと言う武闘派......じゃなくて、迷惑だ。階段で自主トレなんて。


「でも、お前鍛えてたんならもっと鍛えろよ。お前は此方に用があると言ったよな? 

 でも、此方にあるのは自然観察部の部室と音楽室だけだぞ?」


更に理論を展開する。


「あ~確かに~。ま、良いでしょ」


「何が良いんだよ......お前も部活あるんだろ? さっさと帰れ」


「りょーかーい、またね 上里君」


そう言うと有馬は階段の方へ走っていった。一体、何だったんだ彼奴。


「はあ......」


この後も企画書で忙しいと言うのに疲れっぱなしだ。そう思い、部室の方へ向かうと

其処には部室の扉を開けようとしている少女が居た。


「・・・・」


その少女は驚いた様にこちらを見る。


「うす、調月 善処してくれたようで何よりだ」


其処には昼、世話になった凛とした少女。調月雹霞が居た。


今日は企画書の話にしようかと思ったんですが

小戸森書いてたら、止まらなくなって(汗)


眠いですけど、明日休みですし頑張りますw

改めまして初閲覧の方、居たら嬉しいですがいつも見ていただいている方

本当にありがとうございます!


ポイント、ブックマーク、感想

本当に励みになるので、暇が在ればお願いします

貴方の暇が一人の底辺小説家を救うのです...w


但し感想は批評を越える過激な文章や他の閲覧者様を不快にさせる

文章はご遠慮下さい、それ以外なら大体の指摘には応えさせて頂きます

まあ、才能が無い、とかは自分でも分かってるので...ね?

ほら、才能よりも努力ですよw


では、これからも宜しくお願いします

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