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第参話 民衆

第参話 民衆


「えっと…宰相さんでしたか、ハハハ。」

「あっあの…驚かしてしまってすみません。」

「こっちこそ、なんかごめんね。」

「…」

「どうかしたの?」

「いっ、いえ次期皇帝ともいえるトガシ様が臣下に謝っていいのかと…」

「そんなのどうでもいいだろエリゼ。あのな、警官のコミュ力をなめんなよ。」

「こ、コミュ…」


また一つ、仲が深まった気がした。

富樫にとっては大事な出会い、大切にしたいものだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「街を案内ですか?」

「俺が知ってるのは近隣諸国や経済だけだからな。もっと民の気持ちに寄り添える王じゃなきゃ。」

「その心がけはごもっともです。」

「よし。じゃあ準備するか!」

「あっあの、トガシ様。その格好だと…。」


富樫の恰好は日本の警官服であった。それも血のびっしりついた。


「あっ、やべ…。」

「今、新しい服を持ってきますね。」

「ありがとう、なるべく地味な服で頼む。」

「っ…はい!」


エリゼはまた一瞬驚いた顔をしてから満面の笑みを浮かべ駆けて行った。

そしてしばらくして。

富樫はこの国の一般の平民服に着替えて皇城の外苑にいた。

勿論、エリゼもだ。


「宰相のエリゼだ、これより城外にでる。門を開けい!」

「はっ。」


門にいる兵士(皇級警備兵)の身なりは中世のような騎士の軽装備であった。

せっせかと門を開けている。


「さっ、トガシ様。出ましょう。」

「あっ、ああ」

「どうかしました?」

「いやぁ、お前が仕事してるの初めて見たな~って。」

「し、失敬な。私はこれでも宰相です。そんなことより徒歩でよろしいので? 馬車なども手配できたでしょうに。」

「あんまり目立ちたくないの。」


富樫たちは帝都ガイエルン中心地辺りまで来た。

町はいかにも中世の城下町のような風景が広がっていた。


「ほらっ、さっさと行かんか!」


少し小太りの男が何人かの十代後半辺りの子供に怒鳴っていた。

その子供の服はボロボロになっていて汚れで真っ黒になっていた。


「エリゼ…あれって。」

「奴隷ですよ。」

「なっ…⁈」


富樫は奴隷と聞くなり、顔を青くして駆け出した。


「ト、トガシ様…待ってください。これを…。」


エリゼはそう言うなり金塊を渡してきた。

この奴隷たちを助けたかっらこれで買えということだ。

実に気の利くやつだ、エリゼは。


「サンキュー!」


富樫は後ろ向きに走りながらそう言うとくるっと反転して男の方へと駆けていった。


「お~い、おっちゃん!」

「なんだ? お前は。」

「その奴隷。全部売ってくれないか?」

「いいだろう…」

「やった、」

「なんて言うとでも思ったか?」

「え? おっちゃん何を言って…」


この男は急に態度が一変した。


「誰が自分の家の財産を人にやるかよ。まぁそれ相応の対価があれば話は別だがな…」

「ほい」


富樫はこの男に金塊を見せつけた。


「な…なんだ、これは。」

「見ての通り金塊だよ。」

「これで奴隷の子たちを譲ってくれるか?」

「ああ! もちろんだ。」


男は急に満足げな表情になると、そのまま奴隷たちをほっぽり出してどこかへ行ってしまった。


「あ、あのぅ。」


奴隷の一人が声をかけてきた。

十八歳ほどの女子だった。


「大変だったな。まぁこれからのことは気にすんな。ちゃんと衣食住はよういするし、勿論全員分な。」


そう言うと近くに居る奴隷たちも安堵した表情を見せた。

しかしその中に一人、腑に落ちないような表情をしている青年がいた。





第参話 民衆を読んでいただきありがとうございました。

一昨日は投稿できなくてすみませんでした。


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