第壱話 君臨
第壱話 君臨
「俺…死んだのか…。短いようで長かったなぁ、人生。」
「否、そうでもありませんでしたよ。」
「は?」
その時、富樫の耳元で透き通るような女性の声が響いた。
「ほらほら、目を開けてください富樫さん。傷も治しましたし大丈夫ですよ。」
「うっ…、あれ? 痛くない…苦しくない…って眩しっ!」
富樫が見たのは一面に広がる花園とその中にポツンと佇むガゼボであった。
「え? なんだ…ここ、天国」
「否、私の神域です。幻想の世界? 自分でもよくわかっていません。」
「だっ、誰だ⁈ 声しか聞こえないぞ。」
富樫が三百六十度見回しても声の主は見つからない。
「あ~、すまんすまん。普段は認識阻害魔法かかってるの忘れてた。」
「何を言ってるんだ?」
その時、富樫の前が激しく光った。
それは神々しく、目も開けていられぬほどの…。
「私の名はクニカロ。この世界では創聖神って呼ばれてるのかな?」
「創聖神…。」
光は徐々に弱まっていき人の輪郭がハッキリとわかるほどのものになった。
そこに出てきたのは小柄で美人な二十代前後の容姿を身に纏った女性であった。
(人間だったら惚れただろうな~)
富樫は心の中でそう呟いた。
「全部駄々洩れですよ、あなたの心は全部読めています。しかし私の姿を見ても驚かないのですね、普通の人だと えっ⁈神っ とか言って慌てる奴とか拝み始める奴とかいっぱいいるのですのですよ。えっと…とか…」
「僕の名前は富樫ですよ。と・が・し。そ、それと貴女を見てもなぜか驚きません…過去に会ったことがあるような、そんな懐かしい雰囲気がしますね。貴女から。」
「ま、まあいいです読み込みが早くて助かります。」
クニカロは小さな咳ばらいをすると指をパチンと一回鳴らした。
「うわっ、眩しっ!」
また少しずつ光の強さは萎んでいく。
するとその光は自動車のような輪郭をしていた。
と同時に辺りが赤く点滅する。
「パトカー?」
「そうだよ、何かと要り様でしょう。加護は付与してあります。いくら走ってもタイヤは擦り減らないしガソリンとやらも消費しません。」
「あ、ありがとうございます。」
富樫は冷静さを失った。
(加護? 付与? 女神? よくわからない!)
「やっぱりさっきまでの冷静さは偽りか…。全部読めてるんだよ? まあいいか、君に折り入って相談があるんだ。」
「え、ぇ?」
富樫はきょとんとしている。
(と、とにかく落ち着こう…)
「そ、相談とは何でしょうか? め、女神様…」
「うむ、君には一国の主になってほしい。」
「ハイハイ……ハイッ⁈」
「だから君は国王に君臨するのさ。言っておくけど拒否権はないよ。女神命令だからね。」
この女神、意外と傲慢なのである。
まぁ優しい一面もあるのだが…。
「ハンデは二つあげましょう。一つはパトカーとやら、もう一つは君に創造魔法をあげましょう。詳しくは新世界に転移した後、教会に来てください。説明します。それじゃ…」
その時、辺り一面が激しく光った。
「ちょまっ…」
辺りの景色は一変した。
さっきのような花園ではなくいかにもド〇クエに出てきそうな謁見の間のような部屋だ。
その部屋の中心に高貴な衣装を纏った老人が一人いた。
「君が転移者か…。」
「はい。」
「早速なのだが、君にこの国を継承したい。」
富樫は苦い顔をした。
(これが女神さまの想定通りなのか?)
第壱話を読んでもらいありがとうございます。
次回も楽しみにしていてください。
ご期待に添えられるように頑張ります。