第十話 恩恵
第十話 恩恵
「うっ動いた…馬のいない馬車が…⁈」
「大げさだなエリゼ。」(まあ無理もないか…。)
「はい。しかし馬がいないのにどうして動くのですか。」
「僕もよくわからないけどエンジンで動いているだ。そしてそのエンジンもガソリンって言う液体で動いてるんだ。」
「へ~博識ですね。」
パトカーはすでに外苑の門を抜け貴族街に入ろうとしていた。
門から出るときの兵士の顔は今でも忘れられない。
まるで初めてロケットの発進シーンを見た子供みたいだった。
「あれ? 車のカーナビが異世界仕様になってる。」
「この小さい板ですか?………うわっ帝都の地図だ⁈」
「ええっと教会は…。」
教会は貴族街の外れ、バルブと言う商人町に在る。
今いる貴族街から四キロ程先だ。
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そのころオウェリナ皇帝と側近のリズリ―はサリエールの首都ガルゼへ向かっていた。
二人を乗せた馬車が貴族街に入ろうとしていたその時。
「うおっ何ですか⁈ あの乗り物はっ…。」
「車だよリズリ―」(車があるとは、サリエールは物凄く発展しているんだな…って、え? パトカー?)
「はあぁぁぁ⁈」
「どうしましたか皇帝っ⁈」
「どうしてここに日本のパトカーが? トガシモミジってジパルシン人じゃなかったのか?」
「彼は前国王が召喚した転移者だと伺って居りますが…」
「転移者ぁ⁈ じゃあトガシ君って日本人…なの?」
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「ふわっくしゅん!」
富樫は大きなクシャミをした。
(誰かに噂されてるのかな?)
「どうしました? トガシ様…。」
「いやなんでもないみたい。」
「おっ、着きましたよトガシ様。バルブ教会です。」
教会は中世の大聖堂のような広さだった。
パトカーを路肩に停めて富樫たちは教会に入った。
教会の内部は日差しがさしていて外よりも明るかった。
「来ましたか…富樫さん。」
「この声は…クニカロ?」
「随分と待ったのですが何か言うことはありませんか?」
「ご、ごめんなさい…色々と忙しかったもので。」
「分かればよろしい。」
クニカロは姿を現した。
「エリゼ、この方が女神クニカロだ…って」
エリゼは全く動いていなかった。
(まるで時間が止まってるみたいだ…)
「というか時間は止まっています。私が人間界に下りる時には要件がある者以外の部外者の時間は完全に停止します。」
「へ~。」
「で、どうですか? この世界は…うまくやって行けそうですか?」
「ええ全然、政治とかで躓くことはあるけど皆と居れてもう離れるのもなんだな~って。」
「そうですか…。」
ザクッ
「はっ⁈………痛って」
富樫の指はパックリ切れていた。
「クニカロ⁈ 何をして…。」
「ちょっと失礼しますねぇ」
え~と
マジですみませんでした。
多分わかる人はもう悟ってますね。
次です。次はちゃんと国際情勢系で書きますから。