第捌話 本性
第捌話 本性
「前国王陛下、残念ですがもうこの国の土は踏めないと思ってください。」
「っ…し、承知した。」
「生活上必要不可欠なものは国が支給することになっておりますので、生活は心配しないでください。」
「これもトガシ殿が作りし法か…帥や国には本当にすまないことをした。」
王の目を見たときもうそこに光はなかった。
情勢が不安定な中で昔から一人で戦って戦って、この人も孤独だったんだなと富樫は思った。
「哀れだ…」
富樫はボソッと言い捨てた。
「トガシ殿いま何か…」
「いいえなんでも…」
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富樫は謁見を終えて屋敷に戻った。
戴冠式での演説そして襲撃、その後の尋問などでもう日没になっていた。
「夕日が綺麗だな~」
雲一つない橙色の空が辺り一面を覆いつくす中富樫は屋敷への帰路に就いた。
しばらくして屋敷に着くとメリアが玄関に居た。
「ただいま、メリア。」
「おかえりなさいませトガシ様。」
「え?」
目線を上げるとメリアはニッコリと笑みを浮かべていた。
「メリアが笑ってる……フフ、何か良いことでもあったのか?」
するとメリアはいきなり富樫に抱き着いた。
「な、メリア…何をして。」
「トガシ様、我が恨みよくぞ果たしてくれました。」
「う、恨み?」
「今日、悪徳貴族共を国外追放したと聞き及びました。」
「メリア? まさかお前…メリア・ソンシルフェか…?」
「はい。」
ソンシルフェ家とは過去に取り潰し処分を受けた貴族の家名だ。
十一年前に何の確証もなく国に仇なしたものとして貴族に攻められ滅ぼされた。
資料にはメリアの母と父の死亡が確認されたと記載されてされていた。
メリアがまだ四歳の時の出来事だ。
メリアの名の記載がなかったのは奴隷商に売り飛ばされていたからなのだ。
そして今回追放した貴族の中に父と母の仇が居たということだった。
「本当に本当にありがとうございました。」
顔は見えないが泣いているのが分かった。
「いままでご苦労様でした。」
富樫はメリアの頭を撫でてやった。
「ほら、こんなとこでなんだ、夕食にしよう。」
「はっはい。」
「まずは涙を拭け」
「…はい。」
メリアは目に涙を浮かべながら微笑んでいた。
そして翌日。
「トガシ様、起きてください朝です、もうすぐ正午です。」
メリアはまた無感情に戻っていた。
(なぜだ……。 これがキャラというものなのか…)
「トガシ様…」
「ん?」
「昨日はありがとうございました。」
メリアはほんのちょっぴり笑った。
(まじで口角が少し上がったくらいの笑み)
「…おうよ」
富樫は少し驚いた表情でかえした。
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「サリエール国王が国外追放、更に国の帝政化か…。面白そうだねぇトガシ君。リズリー、サリエールに使いを出してくれ。」
「承知しましたオウェリナ帝王。」
第八回です。
どうでした?
物語もだいぶ進んできましたね…次回からは国際情勢が絡んできますよ~。
今年は今回で最後でしょう。
読者の皆様、よいお年を。
来年もよろしくお願いします。