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《本》。

それはさっきから急に使えるようになっていた俺の新しいチカラ。

端末の中にあるアプリ機能のようになっているそれはただ本のアイコンとして表示しているが、その中はすさまじいものだった。


破壊神の仕事なんていわれて、今実際体験し始めているところなんだけど。さすがにこの《本》がチートみたいな能力であることがわかる。

なぜなら、その中にある内容に欠陥はあれど、これまでの、そしてこれからのことが書かれていたからだ。


『我々は《本》と呼んでいるのは単純に、それを姿としてあらわすことが多かったからなんです。さっきも言ったように、端末は本人のスタイルに合わせると。同じ世界の人間には同じ価値観や物事に関する理解の仕方が似ています。そのチカラをもっとも簡単にあらわすものが本であった、ただそれだけです』


そりゃぁ、うん。中身を見たらさすがに賛同しざるおえない。

だって、コレはどうみたって、この世界の『元』となっているものが記録されているように見えるからだ。


開いた《本》の窓にはタブはいくつも存在しているが、今見れるのはどうやらこの役の名前らしい。

個人情報の名前と一致するからだ。

そしてその下に書かれているものは、この(おとこ)がこの物語から退場するまでの話。


省略すると。

本来ここから先、この男は不甲斐ない息子を叱りにいくのだが、そこで見た伯爵の娘に一目ぼれする。


――なんでだよ!?

思わず突っ込んでしまったが。これだと省略にならないから、後でするか。


そしてこの日から親子がお互いを敵視、喧嘩するようになり。

この男の嫁はこのことを知り、伯爵の娘を敵視するようになる。嫌味から毒を仕入れるなど、または公衆の目の前で喧嘩をする始末。

あとはまぁ。当然いろいろバレていく中、悪役となっていった嫁、そして息子の相手にと当てた同盟貴族の娘も非難され、追い出され、もしくは殺される羽目となる。

そして、この男は同盟貴族の手によって葬られた。娘の仇を取るために。

その裏には自分の息子の影もあったようで、死ぬ直前に自分の息子の口からその事実を暴露されたのだと。


文書には白いまま開けている場所や、バグったように確認できない文字もいるが、多分欠落だろう。

だがおおよその部分は問題なく読めるので、俺は最後までそれを読むことができた。


いろいろとツッコミたい。

ツッコミたい。

大事なことだから二回言った。


だがまず――やっぱりこの家、滅ぶから設定があやふやのままにされていたのか!!


『あまり役らしくない行動(OOC)をしないほうがいいので、今からそれに書かれている通りに会いに行くべきだと思いますよ。そのメイドがわざわざ教えてきた後、その内容になにも感じず、行動もしないのはさすがに可笑しいので』


あぁ・・・そうだった。

ありがとう、先輩。思わず忘れるところだった。


って、やべぇ。そういえば、メイドが離れたから結構時間が経っている。読んでいる内容が内容だけに仕方ないとは言え、さすがにこのままだと不味い。

ちょっと急いで向かわないと。


できるだけ慌てないように、そして速度を上げていこう。


そしてしばらく歩いて、俺は道に迷った。


いやー、当然だよねぇ。

俺さっきここに来たばっかりなんだよ。道なんて知るはずもないじゃないか。


本当に貴族の屋敷を舐めていた。

廊下が長いかと思ったら、同じ廊下がいくつもあるし、部屋ってどこなのか全然わからん。

それらしいドアはいくつもあるが、開ける勇気がない。だってドアの見た目がゴージャスすぎてさ、ちょっと違うかなぁって思ってしまって。

そのまま開けたら、どこかの寝室だったりしたらどうするんだよ。


なんとなくさっきのメイドが来た方向に向かったが、ここまで誰とも出会っていないし、道を聞こうにこれじゃあな。

これがゲームなら、せめてマップかミニマップ、または道順を教えてくれるやつがあればなぁ

こう、クエストのターゲットとか、クエストがあるNPCの位置がわかるような何かをだな。


見られたらヤバイとは思いながら、必死に浮かんでいる端末の画面を弄り、そういうマップ機能がないのかをチェックする。

そしたらまたノイズが走った。


えっと?


あ、直った。

これって、もしかしてさっきのと同じ?

そしてホーム画面に戻ってみると、例のごとく新しいアイコンが追加されていた。

アイコンはよくゲームにあるマップのそれと似ているから開いてみると、今自分を中心とした詳しいマップが出てきた。

文字と線だけのとか、カラー付きなのだとか。実際の風景をそのままモデル化しているようなバージョンまでいる。


すげぇな、この端末。


そして俺は、屋敷のマップの右翼で赤いビックリマークを見つけた。

あ、これだろう絶対。


というか、足跡(ログ)によると、俺は完全に逆走していたことが判明した。

あの時、メイドは急いで現場に向かおうとしていたから、メイドの向かう先こそが正解であったという。

そしてここは屋敷の左翼、主に地位の高い者たちのためのゲストルームが並ぶエリアだ。

クリスマスイブに、まさかのジュリーとして呼ばれることになろうとは・・・

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