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窓が大きく陽のあたる暖かい部屋

作者: 謎猫
掲載日:2018/08/03

初めての企画参加です♪

『夏のホラー2018』に提出させて頂きましたので

宜しければお付き合い下さいませませ~

私は、インテリアコーディネーターと言われる

仕事をしています。


その役割としては、新築やリフォームの際に

お客様のイメージを出来る限り再現するのが

インテリアコーディネーターの仕事となります。


具体的には、カーテンや壁紙までの依頼が多いのですが

照明の色や配光の他、テーブルやソファー等の家具設備の調和まで

ご依頼頂く事も有ります。


「ふにっ! 作業を始めよう~」


この日も、いつもと同じく綺麗にハウスクリーニングされて

後は、施主様が引っ越しを待つのみの建物にカーテンやブラインドを

取り付ける作業です。


「えっと・・・ この型番は洋室のカーテンで こっちが・・・」


誰も居ない家で、独り言を喋りながらリビングのカーテンを

取り付けていると、少し腰が曲がったお祖母さんがゆっくりと

家を見渡しながら庭を歩いていたのでサッシを開け挨拶を


「こんにちは~?」

「あら、こんにちは」


この家を建てたお客様とは何度も打ち合わせでお逢いしているけれど

ご家族の方々には逢った事は無い・・・

とりあえず、不審者! という訳でも無いでしょうから

世間話的な事を


「今日は、天気が良いですね~?」

「そうだね」


季節は冬。

連日、1日中ずっと曇りや風の吹く日ばかりで

今日は久しぶりの穏やかな晴れの日です。


「お外、寒くないですか?」

「日差しがあたってれば温かいね」


少し、身を乗り出し敷地の外を確認してみたけれど

道路にも車は停まっていないし、お祖母さんの他には誰も

来ていない。


この一帯は、新しい家より少し古い家の方が多いし

分譲地とは言っても周りは平成より前からある住宅地なので

たぶん、この新築を建てた近くに元々の実家があって

孫の建てた家を散歩をしながら見に来たのだと想う。


「立派な家が建ちましたね~?」

「そうだね、温かいんだろうね」


孫が建てた家を見ながら嬉しそうに話すお祖母さん。


「そうですね、温かいでしょうね」

「なんだか私の部屋はね? 日当たりの良い部屋って言ってたよ」


この家で日当たりの良い部屋・・・

丁度、リビングの隣に8畳の和室があるので

その部屋が、お祖母さんのお部屋なのかも。


「それだと、隣の和室ですかね~?」

「窓が大きいって聞いたよ」


確かに、その和室は日当たりも良いし

大きなサッシで庭も見渡せます。


「今週末には引っ越しですね?」

「そうだね、新しい家に引っ越しだね」

「最近の家は、冬でも暖かいですからね」

「そうだね、良いね」


年齢的に、視力はあまり良くないのでしょうけれど

お祖母さんは、サッシに手を付きながら

家の中を見渡した後、少し家から離れ屋根の方まで見上げ

ゆっくりと歩き出し・・・


「お帰りになられますか?」

「そうだね それじゃ、お仕事ご苦労様ね」

「はい、お気を付けて」

「ありがとね」


お祖母さんは、庭を一廻りして家に戻っていったみたい。

その後も、私は各部屋のカーテンや依頼されていた部分の

取付と確認を行い、夕方には何事もなく私の仕事は終わり

数日後には、この家もお客様へと引き渡しされ

そこで全ての依頼が完了します。


*****


その引き渡しから2週間後。


お客様から連絡があり、初めは何か仕事にミスがあり

クレームが入ったのかと焦ったのですが・・・


「そうですか、分かりました」


連絡の内容は、クレームではなくお客様が

引っ越しの際にカーテンを痛めてしまった様で

その修理をお願いしたいとの事でした。


「では、同じ物を手配して後日取付に伺います」


早速、同じ商品を取り寄せ、その電話から1週間後

新しいカーテンの取付に再度伺い、交換する前に現状を確認してみると

家具を動かす際に、金具の突起部分がカーテンに引っ掛かり

何本かの糸がほつれてしまいプリーツの部分に

横線が入ってしまった様です。


ただ、私が気になったのはカーテンの事ではなく・・・


「このお部屋って・・・」

「まあ、誰も使わない部屋だからカーテンくらい別に良いんだけどね」

「そう・・・ なのですね?」

「ただ、おばーちゃんに申し訳ないでしょ? 折角の新築なのに」

「そうですね 気になってしまいますね」

「この家で一番良い部屋なんだし(嬉)」


お客様は、やっぱりお祖母さんの孫なのですね・・・

とても嬉しそうに話しております。

あの時のお祖母さんと同じ様に。


ただ、その8畳の和室には寝具となる様なものは一切無く

まだ開けられていない引っ越しの段ボールが幾つかと

綺麗な黒塗りの仏壇が置かれているだけ。


「仏壇の装飾金具が引っかかったのですね」

「5年前に亡くなったんだけど、俺おばーちゃんっ子でさ」

「5年前?」

「空き家の実家に1人じゃ可愛そうでしょ?」

「そうですね・・・」

「お盆と正月だけ線香付けに行くだけってのも寂しいし」

「それで、このお家に?」

「そっ、俺も家を建てたけど、おばーちゃんも新築(仏壇)」


色々と、お祖母さんの事を話すお孫さん(お客様)は

とても優しくて楽しそうに話します。


ただし、聞いているとお祖母さんの住まいは隣県との事で

歩いてこられる距離ではありませんし

遺影の写真は、私がカーテンを取り付けている時に来た

お祖母さんで間違いありません。


「すごく喜んでいましたよ?」

「えっ?」

「お祖母様、すごく喜んでいました」

「逢ったんですか?」

「はい、引き渡しの数日前に」

「本当ですか!?」


最初、何を言っているのか解らない感じの顔をされましたが

話していくうちに、お客様は驚いた顔になり

次第に、少し瞳が潤んでいる様にみえました・・・


「ご自分で、ココに来られて庭を歩きながら家を見ていました」

「な、何か言ってましたか?」

「自分の部屋は、一番暖かい部屋だと言われたって・・・」

「そうですか」

「大きな窓があって、陽が差す部屋だって言ってました」

「おばーちゃん、来て居たんですか」


5年も前に亡くなったお祖母様の事

私が知る由も無いお祖母様の事・・・

それを聞き、少し涙を浮かべるお客様。

なんだか、話している私まで涙が・・・


「もうすぐ新しい家に引っ越すんだって・・・」

「そうなんですね」

「そう言って、とても喜んで帰って行きました(涙)」

「なんだ、俺らより先に来ていたんだ(涙)」


その時の事全てを詳しくお話しすると

どうやら、紛れもなくお客様のお祖母さんである事は確実で

家を建てると決めた時、家の設計図が出来上がった時

事ある毎に誰も居ない家に行き、お線香付けと少しずつ片付けを

進めながら亡くなったお祖母さんへ色々と話していたらしいです。


「それでは、カーテンの交換も終わりましたので」

「いや~ ありがとうございます」

「いえいえ、また何かありましたら」

「今後も、宜しくお願いしますよ」


*****


その後も、数年に1度の割合で連絡が入るのですが

あの時は、まだ御結婚されて間もない頃だったみたいで

お客様と奥様の2人だけでしたが今では元気な双子の男の子が

壁紙を大胆に剥がしてしまったとか

ブラインドを壊してしまったとか・・・

数年経った今でも修理や交換の依頼が来て打ち合わせに伺うと

いつも子供達が和室で遊んでいるのを見かけます。


「畳なら、転んでも怪我がしにくいですからね」

「おばーちゃんも、こんな五月蠅い部屋はゴメンかな?」

「どうでしょうね?(笑)」

「許してくれよな、おばーちゃん(笑)」


カーテン交換の時に見た黒色の仏壇は

いつ見ても綺麗なままで、壇には花とお膳がお供えになっています。


「きっと、許してくれていますよ♪」


年に数回しか家族の訪れない寒く寂しい家に居るより

多少、五月蠅くても温かい家の方が良いですよね?

和風幽霊ではありますが・・・

ホラー???

とか想わずに、怖がって下さいっ!(=><=)


夏のホラーなのに作品は冬とか!!

細かい事は、あまりお気になさらずにっ!!(泣)


にゃんて、無理なお願いをしてみたりですが

最後まで読んで頂きましたこと有り難うございます。


もし、お時間がありましたら他にも沢山の作者様が参加しておりますので

そちらの作品も宜しくお願い致します♪


お読み頂き有り難うございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ホラーというより……ほんわか? あえて言うなら、誰も幽霊の存在を不思議に思っていないのがホラー要素でしょうか(笑)
[一言] 読みました。面白かったです。 夏ホラーなのに、冬。意表を突かれました(笑) しかも怖くない(笑) でも、怖いばっかりじゃなくて、たまにはこういうほっこりできるホラーもいいのかも……。 優…
[良い点] とても温かくてほっこりしたいい作品でした。 おばーちゃん……きっと騒がしくて嬉しいでしょうね。 途中、泣いちゃいました。 いい家族ですね。 [一言] 謎猫様の新作だ! と思って飛びついちゃ…
感想一覧
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