第Ⅰ章 第三話 召喚
突如視界が真っ赤に染まる。
そこに脳幹が焼けつくような痛みが走る。
脳がかき混ぜられているられるかのような眩暈と吐き気。
全身が悲鳴をげているかのようだ。
突然始まった頭痛の洪水は、その終わりも突然だった。
涙で滲む視界を意識することもなく、地面に膝をつき激しくあえぐ。
実際はコンマ数秒程の短い時間だったのだろうが、かつて経験した事がない程の苛烈な痛みにまだ全身がガクガク震えている。
激しい嘔吐感を必死にやり過ごしていると、徐々に視界が晴れてきた。
そこはもといた小部屋とはかけ離れた岩が点々としているだけの寒々とした荒れた大地。空は奇妙なことに赤黒く染まっているようだ。
「こいつらが邪神?随分と貧弱そうな奴らだな...」
驚き振りむいてみると、そこには一人の女と、二本の脚で立つ獣達が複数いた。
いや、今まで気づかなかったが様々な武器や鎧を装備した人間達がそこかしこにいる。
他の亜人や騎馬兵もいてあまりに非現実的な上、明らかに人間ではないモノもいるが、唯一共通している点がある。
皆一様にしてこちらをみつめているのだ。
だが、その視線は興味や好奇心によるものではなく、むしろおびている様にみえる。
いや、さっきは聞き流していたが、確か声が聞こえたのだった。確か、『こいつらが邪神』だとかなんとか...
...こいつら?
強すぎる既視感を感じながら恐る恐る隣を見ると、すっかり見慣れた幼馴染の顔が先程の激痛のためか、白目をむいて気絶していた。
「・・・・・・・」
うん、知ってた。
周囲も和樹の表情に気づいたのか、一様に愕然とした表情になる。
そういえば、最初聞こえた声は、女性のものだったこと思い出し、改めて最も近くにいた女性に目を向ける。
そして、思わず息を飲んだ。
まず目に入ったのはその豊満な胸。いや、変態的に聞こえるかもしれないが高校生男子としてはまずめにいってしまうのは本能的なものであって決して俺が変態だからではない。.....はずだ。
紫色のドレスを纏う滑らかな褐色の肌に、透き通るような透明の白髪。その瞳は、血のようなようなルビー色の鋭い眼光を放っている。
それと、おっぱいが大きい。身長は俺を超すくらいの長身の美女だ。......大事なことなので二回言いました。
だが、周囲と同様に彼女も驚きに打たれている様子。
しかし、おそらく立ち位置から亜人たちのリーダーなのであろう彼女は、一足先に我に返り話しかけてきた。
「き、貴様らは何者だ!何故暴れない!」
なんだとはなんだ!それに公衆の面前で暴れるとは失礼な!くらい思ったがはなしをややこしくするだけなのでやめた。
「えっと....何者って言われても見ての通り人間ですけど.....」
すると、彼女はいよいよ愕然とした表情で固まった。
いや、彼女だけでなくそこにいた生物達は皆一様に微妙な表情で硬直している。
なにこれおもしろい。
そう思っていると、不意に彼女が何事かつぶやきだした。
そして――――――
「テレポートッッ!!」
彼女が叫んだのを最後に、視界が白一色に染まった!
再び視界が戻った時には、彼女と亜人たちは忽然と消えていた。
「な、なんだったんだ......」
思わず呟くと、未だ固まったままの人間達とバッチリ目が合う。
えっと...ここからどうしよう.......
すると、指揮官とおとぼしき少女がゆっくりと片手を挙げた。
そして、おおきく息を吸い込み――――
「捕らえろッ!!!」
どえええええええええええ!?
余りの超展開に抵抗する間もなく、たくさんの男達が飛び掛かって来た!
「ちょ、ま、変なとこ触るなあああああ!」
―――っく、このままだとどうなるか分かったものではない!
助けを求めるべく、和樹を見やるとまだ気絶していた。
「いつまで寝てんだあああああ!!」
不意に、何か固いものが頭を強打されたされたような衝撃。
急激に意識が遠のいて――
かなり短くなったけど区切りがいいので終わります