第七十八夜:柳は詫びる
明日大阪第4ビルフィッシング一番に立ち寄ります。
小柄で偉そうに歩くおっさんを見掛ければ、柳かも知れません。
2019年のバスフィッシングシーンが終了した。
ほとんどキチガイという好き者は、まだこれからの時期もやるかも知れないが。
今もやっているかどうかは知らないが、むかし兵庫県は東条湖において、(ウィンターリーグ)と冠した冬のバストーナメントが存在していた。
そのトーナメントには、2シーズンに渡り、私もフル参戦した経験がある。何度か表彰台にも上ったが、それはそれは、いま思い出しても大変な試合だった。
普通に釣りらしい釣りができるのは12月まで。1月に入ると午前中いっぱいは、必ずラインとガイドが凍ってしまう。だから一度湖に竿を浸して、ガイドに付着した氷を溶かしてからでないと、次のキャストができない。
早朝路面が凍結して、山上湖である東条湖までトーナメンターの多くが到着できない。よってスタートが大幅遅延なんて日もあった。
本当に、ただの拷問としか思えない極寒の中のトーナメントだったが、それ故、たった一本の魚の価値は高く、本トーナメントで私が釣り上げた数える程のバスは、どれもが忘れ得ない感動を与えてくれたメモリアルフィッシュだった。
このトーナメントで上位入賞して頂いた盾は、今も自宅の玄関先に飾ってある。
うん、話がずれた。2019年のバストーナメントシーンは終了した。
そして、柳には素直に詫びねばいけないことがある。
『第四十六夜:アドバイザー柳をよろしく』の文中、本場アメリカのトーナメントシーンで、日本製バイブレーションプラグが席捲するとした私の予想は、見事に外れた。
復習の意味も兼ねてもう一度説明すると、2019年アメリカのトーナメントフォーマットが、これまで50年以上も変わらなかった(5匹の総重量制)から(匹数制限なしの総重量制)に変わり、狙いすまして大きな魚を取るという戦術から、次から次に大物から小物までをひたすら釣り続けるスタイルへの移行を、トーナメンター達は余儀なくされたのだ。
そして、広く、早く、活性の高い魚を次々に捕っていくためのルアーとして、アメリカでは数少ない小型のバイブレーション、すなわち日本製のそれが、トーナメンターの間でブームになるだろうと、柳は予想したのだ。
このフォーマットの改正により、(広く、早く)が重要になることは誰にでも分かる。
柳がずばりバイブレーションと読んだこの特性を、本場のトーナメンターの多くは、別のルアーに依存した。さて、それが何か分かるだろうか。
そう、答えは『ブレードジグ』、日本人にも馴染む呼び方をすれば、『チャターベイト』だった訳なのだ。
バスフィッシングの心得がある方は、少なくとも(惜しい)とは思ってもらえただろう。
バイブレーションプラグもブレードジグも、その特性自体はよく似ている。
すなわち、浅いレンジをテンポよく、強烈なバイブレーションを発生し、付近の魚に広くアピールできるルアー。
それでもアメリカ人が、バイブレーションではなく、こちらのルアーを選んだ理由が、今では柳には分かる。つまり一歩踏み込んで考察すれば、柳ならばきっと予想できた結果なのだ。
まずその性能を遺憾なく発揮できるレンジが、バイブレーションに比べてブレードジグの方が少しワイドである。2.5メートルという水深となると、手返し良く巻き続けられるバイブレーションプラグは、市場に出回っているものからこれを探すに、かなり苦労する。これがブレードジグの場合、ヘッドの重さやトレーラーの浮力の調整で、これ以深のレンジも、十分に攻略可能なのである。
また狙う深度ごとに、いちいちルアーを替えなければいけないバイブレーションに対して、ブレードジグならラインを結び直すことなく、トレーラーの変更だけで、ある程度は狙う水深を変更できる。
さらに思い返せば、向こうではティンバーと表現される、いわゆる立ち木の多いフィールドでのトーナメント開催が、今年は多かった。これもブレードジグがバイブレーション以上に重宝された大きな理由の一つだろう。ブレードジグの根掛かり回避能力の高さが、有効となるシチュエーションが多かったのである。
しかし、ブレードジグが選ばれた最大の理由は、実は前記のものではないと、私は考えている。もしかしたら日本のアングラーが、アメリカのトーナメンターと比べて、あまりにも無頓着すぎる部分であるかも知れない。
興味のある方は、是非続きをお読み頂きたい。
日本製のルアーで、本場アメリカのトーナメンターに非常に高く評価されているミノープラグが2つある。(仏像みたいな)名前のミノーと(いち・じゅう)という名のミノーである。
この2つの日本製ルアーの共通点が分かるだろうか?(マニアックな内容ですまないと、柳は毎回思ってはいる)。
そう、どちらのルアーもトレブルフックが3本付いているルアーなのである。
この事からも分かるように、アメリカ人は掛けた魚を“ばらす”ことを極端に嫌がるのだ。
むかし昔、日本製の精工で(アメリカ人の感覚からすれば)小さなルアーが、海の向こうで見向きもされなかった背景には、(小さなルアーはフックも小さい)、従って(ばれやすい)という観念に因るものだったのだ。
ハードルアーの魅力の一つ、というよりは、最大の魅力と言ってよい特性は、ずばり爆発力である。地道にソフトベイトによる釣りで、少しずつウェイトを積み上げていくアングラーを尻目に、次から次に、グッドフィッシュを連発していく。そんな状況がハードベイトの釣りではあり得る。例え、フィールドに人的なプレッシャーが掛かった状態、例えば、トーナメントの場でもだ。
私自身、他を圧倒する側に立った経験もあれば、指を咥える側に回ったこともあるのだが、ここで勝ち切るために大切なことは、まさしく(魚をばらさないこと)なのである。
ハードベイトを投げ続け、バイトを捕り続ける。絶え間なく魚はルアーを追いかけ、そしてバイトが続いている。きっと水面下は、ルアーを奪い合う魚の群れで溢れかえっているのだろう。
しかしこんな時、一瞬の油断から、もしくはただの不運から、折角フックアップした魚をばらしてしまったとしよう。そのミスを境に、パタリとバイトが止んでしまう。そんな経験はないだろうか。
(釣った魚の本数)=(バイトの数-ミスバイトの数-バラシの数)
バスフィッシング経験者には必要のない説明かとは思うが、ここでいうミスバイトとは、魚がルアーを喰い損ねたミス。魚側起因のミスである。その場合、魚としては針掛かりの恐怖をこの時点では体感しておらず、むしろ、おまんまのお預けを喰らったという恰好となるため、次も同じようにルアーを襲ってくる可能性が高い。
一方で、バラシとは、針掛かりした魚を、アングラー側のミスで逃してしまうことである。
この場合、針に掛かってしまったという非常事態を一度経験した魚は、もうパニック状態であり、その日のバイトはおろか、数日間は餌を取る行動すら止めてしまう。
(5回バイトがあって2回ミスバイトがあった。結果、3本の魚をランディングした)
というのと、
(5回バイトがあって2本ばらした。結果、3本の魚をランディングした)
というのとでは、同じ3本の魚であっても、その意味合いが、実は全く違うのだ。
何が違うのか?ずばりその後のバイトの数である。
ミスバイトした魚は、もう一度喰ってくれる可能性が高いが、ばらした魚は、付近の仲間達を引き連れて、アングラーから遠ざかってしまうのだ。
すなわち本数無制限というフォーマット、釣って釣って釣り捲らねばいけない試合では、掛けた魚をばらすことは、その日一日を丸ごと駄目にしてしまう致命傷となり得るのである。
大きなシングルフックを一つだけ搭載しているブレードジグと、自重がありながらその形状的な制限から、あまり大きなトレブルフックを、3つ以上は付けられないバイブレーションプラグ。どちらが掛かった魚がばれにくいか。それは明らかなのだ
これが、バイブレーションではなく、ブレードジグが選ばれた本質である。と、断言してしまう。
ということで、柳の予想は外れた。
こういうマーケティングの甘さが、柳が一流になれない理由なのだな~と、少し、今落ち込んでいる。
因みに柳は、大手電機メーカの営業さんなのだ。
そして素直に柳は詫びる。読者の方にも、柳の勤める会社にも。
営業さんとしてもアングラーとしても一流ではないが、こう言うところは、(素直でいい人)なのだ。柳は。
明日、大阪のフィッシング一番に、あの三原プロが来店するらしい。
ウィンターリーグの時、遊漁料のキップを手渡してくれていたのが、若き日の三原プロだった。ちょっと、行ってみよっと。




