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百夜釣友  作者: 柳キョウ
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第七十七夜:釣ったことないルアー縛りの釣行(了)

今でも居酒屋の下駄箱は66番と決めている。初任給で買ったCSC-66Hという竿の型式から来ている。77話目、GUN2-77ってライギョ用の竿がずっと欲しかったが、結局買わなかったことを思い出した。


(釣ったことないルアー縛り釣行)のフィールドに選んだのは、僕が令和初バスを釣り上げた神戸市の某ため池。

その時には、マメバスしか釣ることができなかったが、実はこの池には50センチを超える個体が生息していることを、僕は知っている。前回の釣行の際にも、数尾だけだがそんな魚を目撃していた。だから僕は、このため池を今回選んだ訳なのだ。

すなわち、(大きなルアーしか持ってない)⇒(大きなルアーを投げるしかない)⇒(小さいバスは釣れてこない)⇒(釣れれば大物)という単細胞的な論理である。


先発に選んだのは7インチムカデ型ワーム。7インチという長さは、それだけでは格別デカいワームとは呼べないが、とにかくこいつは太い。重量もワーム単体で15グラムくらいはありそうだ。こいつの胴体ど真ん中をワッキー掛けにしたノーシンカーリグが、この日の第一投目。


ひと昔前、(まずはスピナーベイトやバイブレーション、状況によってはクランクやトップウォータープラグという、いわゆるファーストムービングルアーを投げて、魚の居場所を突き止める)というのが、バスフィッシングの王道のように言われていた。しかし、近年はこういった魚の探し方が全く通用しないことが、本当に多くなった。

すなわち、“そこに魚がいるにも関わらず、ファーストムービングルアーには反応しない魚”がとても多くなったことが理由なのだ。

まずはひとしきりスピナーベイトを投げてみた。全くバイトはない。ここには魚が居ないと結論付けながら、何気にライトリグを投入すると、あっさり魚が釣れてしまう。しかもそれは結構いいサイズ、なんてことがよく起こるのだ。

だから最近は、僕自身1投目には、ある程度の集魚力が期待できる、やや大き目のワームのノーシンカーリグを投げることが多い。


“ぼよんぼよん”と揺れながら、オレンジ色の7インチ極太ワームが沈んでいく。

“ふらふら~”て感じで、付近からバスが沸いてきてくれることを少しだけ期待したのだが、やはりそうは甘くなかった。

7インチワームを“ぼよんぼよん”、ピックアップして移動。また“ぼよんぼよん”

そんな繰り返しで池を4分の1週したが、魚からの反応はまるでない。それほど期待もしていない。

僕自身これまで、あまり長いワームでよい釣りをした経験というのが、ほとんどないのだ。

そしてアングラーの方が、(絶対釣れる)と思い込めるルアーでないと、魚は決してバイトしてこない。往々にしてそういうものなのだ。


いつもの僕であれば、効率とバイト率を天秤に掛けて、ワームのサイズを少し落とすか、それともハードベイトの釣りにがらりと方向を転換するかするのだが、今日は生憎そんな手駒を持って来ていない。

一度はスモラバを結ぼうとボックスを開けたが、ふと目に付き、全くの気分でトップウォーターペンシルを投げることにした。8分の3オンスあるそのルアーは、トッププラグとしては重たく大きい方だが、それでも竿はヘビーアクションの強竿。さて無事に投げれるかどうか。


(おや?)

テークバックでしっかり竿にルアーの重さが乗り、リリースタイミングも掴みやすかった。そして次の瞬間には弾け飛ぶように遠くへルアーが運ばれていく。ずばり言って何のストレスもない。どころかとても投げやすい。

たぶん竿全体の重量バランスに因る理由だろうが、とにかく振り抜け感が素晴らしい。

飛距離に関しては期待を遥かに超えている。

仮にこの遠距離でバイトがあっても、その強靭なバットパワーは、難なく魚の上顎を捉えることだろう。


振り抜け感がいいということは、先重り感がないということだ。操作性も決して悪くない。必要以上に忙しなくルアーを動かしても全く重さを感じない。いや、6フィート7インチのヘビーパワー、全体として軽い訳はないのだ。それを少しも重たいと感じさせない重量配分の妙。やるでないで(阿波弁)!100万黒鱒社。


15年前に一度は、(駄目、この竿!)との評価を下し、そのままお蔵入りさせていた竿。

某黄色い看板の中古釣り具販売店拡大により、私自身、ちょっと使ってみて気に入らなければすぐに売ってしまうということも多い。でも本当の性能やコンセプトを理解してもらえず、釣り人に手放されてしまうというのは、それを開発したメーカからすれば大変に不本意なことだろう。

真価を発揮せぬまま、僕の手元から離れて行ったタックルも数多いはずだ。

ちょっと自責の念に駆られながら、その後、約半時間、トップウォータープラグを操作し続けたが、バイトは得ることはなかった。


その間、2度ほど40センチクラスのバスが、スクールで回遊してくる姿を見かけた。

このフィールドでは大型に分類される魚達だ。

ここでルアーを替え、奴らが再び回遊してくるのを待ち構える。

ラインの先には朝一に落としていた7インチワームのオレンジカラー。

最近このオレンジというカラーが、一部のアングラーに見直されているらしい。でも、私のキャリアでは、記憶に残るような魚を捉えたことがない。

セミやギルのお腹の色、意外と自然界に多く存在しているカラーということなのだが、そもそもセミやギルとは、あまりバスの餌としては好まれない生物だと僕は考えている。

体高があり骨っぽいギルは、バスにとっても決して食べやすい餌ではないし、セミだって消化が良さそうな餌だとは思えない。そんな考え方が僕達世代のアングラーの常識だったのだ。

だから今、もう兆しとは呼べないほど流行しているギル型ワームなんかにも、僕はなかなか手を出せないでいる。興味がなくはないのだが、実際に購入し、使い込むには至っていない。こんな風にきっと年寄りアングラーは、時代に取り残されていくのだろう。

6.5インチ尻尾切れやスモラバを、いま投げないのは、そんな年寄りのささやかな抵抗なのだ。


(おっ、回ってきた)


向かって右側からやってきた3匹の40センチクラスのバス。進行方向8メートル程の位置に7インチワームを落とす。このくらい長いワームなら、ちゃんとバスも気付くだろうと、通常のサイトフィッシングよりは、少し距離を置いて落とし込んだ。着水音もほぼ完璧。魚はその進路を変えない。しかし・・・


水底で斜め45度の角度を保ち揺らいでいるオレンジ色ワームを素無視して、(す~~)とバス達は泳いで行ってしまった。う~~ん、手厳しい。


そこでフックはそのまま、今度は6.5インチ尻尾切れをセットした。はっきり言って、これが今回の切り札的ワームだ。次の回遊を待つ、待つ、ひたすら待つ。ここらのところが竿一本という制限の辛いところ。

ジッと我慢の子およそ30分。

(同じ魚?)と思える程、サイズも匹数もさっきのスクールと一緒。

さっきは素無視だったが、さてどうか・・・(す~~~)

はい、今回も同じ。糸の下を潜って左側に泳ぎ去っていってしまった。


ついに残された僕の手札は、スモラバ+3インチクローワームとなってしまった。

素早くセットし、またまた回遊を待つ。結構これはドツボにハマるパターンだ。

きっと本当は、回遊魚の狙い撃ちを諦め、活性の高い魚に狙いを切り替えるべきタイミングなのだろう。でも、ちょっと意地になっちゃってる自分がいる。


そして僕は考える。もしかしたら魚を見掛けてからキャストという手順がよろしくないのかも知れない。これまで2回の回遊ルートを鑑み、ルート上にある比較的大きな石にスモラバを隠す作戦に出る。

(石に隠してジッと我慢)⇒(何も知らずバスが回遊してくる)⇒(ひょいと石影からスモラバを出す)⇒(エサだ!ラッキー!とばかりにバイト)

イメージはこんな作戦。ただの一度もそんなもの、成功したことが無いくせに、何だかその気になっている。しかし・・・回遊してこない。10分、20分・・・貴重な時間がすり減っていく。そして堪えきれず一度、ピックアップ。


(なんじゃ、こりゃ~~)


コンパクトなスモラバが、二回りは膨らんでいる。とろとろのアオミドロで藻ダルマになってしまったのだ。これは一気にテンションだだ下がり。

実のところ、近年こんなフィールドがとても多くなった。

思い起こせばここ数年、僕はクランクベイトで魚をあまり釣っていない。

そもそもクランクを投げることがあまりない。たまにシャローランナーをトップ的に使うことがある程度だ。

テキサスリグやフルサイズラバージグも、ほとんど使わない。

スピナベは専らバジングとガーグリングだけ。

替わって使用頻度が増えたのが、トッププラグとノーシンカーワ-ム。

要は、底にルアーをコンタクトさせる釣りをする機会が、圧倒的に減ったのだ。

その原因が、実はこのアオミドロの発生。それはどこのフィールドでもだ。

(やっぱり、ここもかっ!)て感じなのだけれど、このアオミドロ異常発生の原因は、一体何なのだろう。地球温暖化の影響か、それとも他の要因か。そう言えば20年くらい前は、茎のしっかりしたカナダ藻やエビ藻に、活性のあるいいバスがついていたものだが、最近そんなフィールド自体を、まるで見掛けなくなった。

バス釣りの先行きはどうも暗い。

僕にとっての愛すべきマザーフィールド徳島県旧吉野川も、しっかりとしたウィードが少なくなり、最近では(デス・リバー)なんて呼ばれ方をされているらしい。全盛期の旧吉野川を知る僕としては、ちょっと信じられない。


うんざりしながら、ラバーに絡まったアオミドロを取り除いていく。一本一本のラバーにまでしっかりと藻が絡まってしまっている。往生する。

ようやく綺麗になったスモラバであるが、同じ場所に投げたのでは、どうせまた藻ダルマになるだけ。少し歩いて、枝の先が少しだけ水面上に覗いている岸際の立ち木に向け、ひょいとキャストした。

しかし、こいつが圧倒的ミスキャスト。完全に枝に絡まってしまった。

リズムが狂っているときとはこんなものだ。

ジグに付いているガードは細いモノガードが一本だけ。もし引っかかっても14ポンドフロロラインが何とかしてくれそうではあるが、それでも場荒れすることは避けられない。あまり強く引っ掛けてはいけないという思いが、僕の操作をぎこちなくする。


(クルンっ)


おっかなびっくり引っ張ったラバジが、手品のように枝を巻く。

軽く揺するが、枝がぶるんぶるんと震えるだけ。枝が揺すぶられ付着していたドロが水色を汚す。はい、この一級ポイント潰れた。


(もぅ~~~っ)てな感じで、諦めて乱暴に竿を揺する。ぺきっと枝を折ったラバジが、(どぼちゅっ!)と水中に勢いよく飛び込んだ。同時に、(ぐぐん~)と竿が引っ張られた。

(どぼちゅ、ぐぐん)バイト。6番パワーヘビーロッドのフッキングで足元まで飛んできたバスはおよそ35センチ。回遊していた奴らよりは一回り以上小振りだったが、ミスキャストが功を奏する意外な形で、スモラバ初バスを僕はゲットしたのだった。


こうなるとその他ビッグワームでも何とか・・・と欲が出てしまったが、その後展開した(7インチアオミドロから尻尾だけ出してる風ネコリグ)釣法も、(8インチシャッドワーム水面飛び跳ねリアクション)釣法も、結局魚のバイトを引き出すには至らず、この日の釣行を終えたのであった。


恥ずかしながら、この何てことない大きさの、この日唯一釣ったバスが、僕の令和最大バス。記録更新は、今の予定では来年となりそうだ。


理想はビッグワームの釣りに開眼し、信頼できるルアーの幅が広がることだったのだが、そこまでは到達せず。

しかしお蔵入り”中距離弾道ミサイル竿”が何と15年の歳月を経て、お気に入りロッドに昇格した。

たったそれだけの満足感に浸りながら、僕は笑顔で帰路についたのだった。

ブレイクスルーって、やっぱり難しい。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ピンクの理由お聞かせくださり感謝です。 このアクロバチックな釣れ方が、バス釣りの楽しさの一つですね。 使われてないルアーならず、ロッドがお気に入りになっただけでも素晴らしいです。 [気にな…
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