第七十三夜:釣ったことないルアー縛りの釣行(1)
タチウオにツバスにバス・・・11月が一番幸せです。
自室の隅に鎮座していた一番大きいタックルボックスの中身を整理した・・・というか、ただに開いて眺めた。
これまであまりフィールドまで持ち込むことがなく、出掛ける時期と釣り場によって、このボックスから必要なものを、小さめのボックスに移動させて持ち出すという、言わばベースキャンプ的な使い方をずっとしていたやつ。
デカバスの聖地池原ダムのマップが描かれたステッカーが、上蓋のところに張り付けられている。おそらく池原ダムを訪れた時、記念に買ったステッカーを、そのまま私が張ったのだろう。最後の池原釣行は2004年なので、それ以前からこのボックスは、私にとってのメインボックスだったことになる。
4段積みボックスの最上階には、フックやシンカーなどの小物がぎっしり入っている。
トーナメントに出場していた頃の名残で、エアー抜き用注射針が3本も入っていた。今の時代だと、変な容疑で捕まりかねない。
上から二段目の棚にはラバージグが、これもどっさり。
平均8分の3オンス(約10グラム)として、この棚だけで1キロ近くはありそうだ。
3割くらいのラバーが溶けていて、いくつものジグが、塊になってひっついていた。
いま主流のシリコンラバーなら、こんな事にはならないのだが、20年くらい前は、ゴム製のスカートをソークオイルといって専用の油を染み込ませて柔らかくするチューニングを、ほとんどのジグマンが施していたのだ。このソーク処理をしたラバーの劣化は、特にひどかった。ベトベトのギトギト、ものによってはカッチカチ。もう到底使い物にはなる状態じゃない。
でもフックの付いたルアー類は、どうやって捨てればいいか分からないので、多分このままボックスの中に、これからも佇むことになる。
三段目はトップウォータープラグとシャロークランクの棚。
無理やりに押し込んでいるので、一個のルアーを取り出そうとすると、一辺に6個くらいのルアーが絡まってぶら下がる。
四段目がディープクランクとメタルジグ。ボートを手放してから、ほとんど使うことのなくなったルアー達が収まっている段。
ちゃんと潜行深度ごとに仕舞い込む程度には、当時の私は几帳面だったようだ。
暇だったので、一つひとつのルアーを眺めながら、魚を釣ったことのあるやつと無いやつに、少し思い出に浸りながら選別してみた。
してみたところで、またどうせ一緒くたに放り込むことになるのだが。
やってみた結果、大量に収納されているルアー群の約4割が、一度も魚を釣ったことのないルアーであることが判明した。中には一度も投げたことすらないルアーもある。
これはルアー、すなわち魚を釣るための漁具として世に生まれた者(物?)にとっては、大変な不幸と呼ぶべきだろう。
確かに私は、あんまり多くのルアーをローテーションするアングラーではない。その日その時、一番信頼の置けるルアーを、ひたすらに投げ続けるタイプなのだ。
ルアーを変えるよりも場所を変える。もちろん、それが功を奏する時もあるし、そうでない時もある。
ここ数年を振り返ると、ワームに関してはほとんど2種類しか使っていない。
“尻尾切れワーム”と”曲がった”ワーム。日本人アングラーの間では、いまも他を引き離し、人気トップ2の2種類。やっぱり釣れるから使うし、使うから釣れるのだろう。
プラグに関してはポッパータイプのトッププラグとD社製バイブレーションが釣果の大半。そこからだいぶん実績的には落ちて、G社製スピナーベイトと続く。
どれもごく普通の釣り道具屋で簡単に手に入るやつらばかり。
意外と面白みがなく、そして偏った釣りをしていたものだと、そんな事実を突きつけられる羽目になった。そしてボックスの肥やしとなっているルアー達に、何だかとても申し訳ないような気がした。
季節は11月。昔は9月中頃から10月にかけての時期が、最もバスの釣り易い時期というイメージがあったが、昨今は、私自身の釣果を鑑みても、釣った魚の数では圧倒的に11月の実績が高い。これも地球温暖化の影響なのかと考えたりするが、まあ、今がまさにベストシーズンなのである。
ということで、自身のブレイクスルー目的と、不遇な目に逢わせていたルアー達への謝罪の意味もかねて、(釣ったことないルアー縛り)の釣行に出掛けようと決めたのである。
ルアー選び。実はこの時間がルアーマンにとっては一番楽しい時であることを、否定できるアングラーが果たしているだろうか。
ボックスに収納し切れず、大きなビニール袋に無造作に放り込まれていたワーム群の中で、真っ先に目に入ったのが、今やデカバス専門ルアーメーカとして、飛ぶ鳥を落とす勢いの黄色いパッケージの“死の階段”という名のワーム。同じやつの色違いが、なんと7パッケージも出てきた。恐ろしいことにどれも封すら切られていない。
買った時には、(このデカいワームでデカバスを釣るぜ~!)と意気込んで購入したものの、実際にフィールドで使う段階になって、(流石にデカすぎる)と、現場で自分がビビってしまった結果なのだろう。能力を発揮する機会すら与えられなかった訳だ。この巨大なワーム達は。
大変に申し訳ない、という訳で、まずこの8インチワームが当確。
もし釣れなくても、ビッグベイト的な使い方というか、この大きなルアーに興味を持った魚達が、喰わないまでも追ってくる可能性はあるかも知れない。今回のパイロットルアー的な位置づけとしよう。
ワイヤーベイトとバイブレーションプラグでは、釣ったことのない奴を探し出すにけっこう苦労した。ほとんど全てのルアーで、ちゃんと魚を私は釣っていたのである。
一個だけ、水深のあるダム湖なんかの、ディープスローローリング用1.3オンスのヘビースピナーベイトを発見した。こいつでは多分魚を釣っていないのだが、今回はため池での釣りを予定しているため、そもそも全くフィールドの特徴にマッチしない。
そんなこんなで、ハードベイトは、ポッパーと比べて使用頻度の低かったペンシルベイト2個となった。
トッププラグとビッグワーム。なかなか男前なセレクトではあるが、これは競馬で言えば万馬券一点買い。やはりこれではノーフィッシュの不安が拭えない。
別にノーフィッシュを喰らったところで、誰が困るというものでもないのだが、令和に入ってから、ノーフィッシュは大阪で開催されたG20の警備の関係で、釣り場に入れず、ほとんど不戦敗となった釣行の時の一回だけ。この好調は持続したいものだと考える。
という訳で、ちょっとだけ易しく釣果を上げることのできる抑えのルアーがいくつか欲しい。
ルアーが男前でも使うアングラーの方が女々しいじゃないかと、ちょっと自己嫌悪に陥りそうになったりもする。
そんな葛藤の妥協点とでもいうべき6.5インチ“尻尾切れワーム”が、ビニール袋の奥の方から幸運にも一パック出てきた。
弟分の5インチサイズの方は、きっと数百匹の魚をこれまで釣っているはずだが・・・うん、こいつではまだ魚を釣ったことはないはずだ。
もう一つくらい抑えがないかと探していると、“全てを狩る”メーカの3インチクローワームが出てきた。封は開いていたが、多分これも実際には魚を釣っていないはずだ。
使い込めば、釣れない訳がない大きさと形状なのだが、きっと何かが私の感性と合わなかったのだろう。それなら最近買った新品のスモラバとコンボで使おうと、ウエストボックスに放り込んだ。
さて、ここでなかなかに難しいのがロッドのセレクト。
いまも移動の手段が公共の乗り物しか私にはないので、携帯できる竿は一本だけなのである。
8インチビッグワームには、少なくともミディアムヘビー以上の張りの強いロッドがいい。でも、このタックルでトッププラグを投げるとなると、少し扱いづらいだろう。さらにスモラバ+3インチワームとなると、もっともっと無理がある。
悩ましい・・・
こんな悩みも、仕事での悩みと比べると全く切羽詰まらないものだし、悩んでいること自体がむしろ楽しい。釣りって本当に楽しい。フィールドで竿を振っているときも、部屋でタックルと戯れているときも。
そして本気で悩んでみると、意外に見つかるものだ・・・解決策が。
仕事でもこれくらい真剣に悩む癖がついていると、もう少しましなサラリーマンになれるのではと思う。でも、悩み過ぎて心が病んでしまったりするよりは、よっぽどいい。
で、選んだロッドが、購入時、(ミディアムクラスのソフトティップにヘビーパワーのバットセクション)という、当時は狙いがよく私には判らなかったコンセプトの、6フィート7インチ6番パワー“100万黒鱒”社の“中距離弾道ミサイル”という名のロッド。
確か一度か二度、琵琶湖のアシ打ちに使ってみて、2分の1オンスジグを背負うとティップがバインバインしてしまうため、速攻お蔵入りしてしまった竿だ。
このティップがバインバインの感覚が分かるのは、読者の中では、きっと(ちい華さん)だけだろう。
購入したのは15年くらい前だと思う。いま見てもデザイン的に古臭さが少しも感じられない。ランボルギーニ・カウンタックのような格好良さというか。ランボはあの時代のやつが、やっぱり一番格好いい。柳はスーパーカー世代なのだ。
そんな理由で、きっと私はこの竿を売却することなく保有していたのだろう。
そしてメンバー決定。
大きめトップペンシル2個。
8インチ死の階段ワーム一袋。
6.5インチ尻尾切れのフォール&放置プレー用ワーム1袋
スモラバ+3インチクロー1セット。
ついでに入れた7インチ“ムカデ”ワーム。
どれで釣ってもその打者の初ヒット。
ということで、(釣ったことないルアー縛り釣行)のはじまりはじまり。




