第五十六夜:なろうの仲間へ、勉強しよう、出世を目指そう
6月1日で支店長が変わる。
どうやら喫煙ルームが建屋から無くなるらしい。
新支店長はタバコを吸わないそうだ。
こんなもんだ、組織なんて。
ここに一冊の古い雑誌がある。
1991年に発行された「バス&ライギョ釣り場530選」と題された雑誌。
北から順に全国45都府県(北海道と沖縄県にはバスとライギョが生息していないため)のバスとライギョの釣り場を紹介しているものである。
存在したことが奇跡のような雑誌だと思う。現在では絶対に有り得ない内容。
つまりはこういうことである。
(釣り場が紹介される)⇒(釣り人が集まる)⇒(心無い釣り人のマナー違反や迷惑駐車で近隣住民とのトラブルに発展する)⇒(出版社へのクレームとなる)
1991年に自分はいくつだったのか、情けないことに電卓を叩いた。
はじき出された当時の自分の年齢と記憶。そうそう、そんな時代だったなと振り返る。
現在執筆中の本作「百夜釣友」全55話中、バス釣りに関連するものが25話。
私の釣り歴の中で、バス釣りが占める割合はやはり大きく、最も好きな釣りは?と問われれば、やはりバス釣りと素直な心で答える私が居る。
しかし、仮にこの質問を、私が今受けたとしたら、きっと”バス釣り”と答えることに、少し躊躇することだろう。相手がバス釣りなどやったことがない人間なら尚更のこと。
すなわち大抵の場合、次のような反応になることが分るからだ。
「バスって食べられない魚でしょ」
「釣った魚はどうしているの?」
「だめだめ、リリースなんかしないで、どんどん駆除してくれないと」
まだまだ想像できるが・・・面倒臭いから止めよう。
分かり易くいけば、バス釣りをする人もバスという魚自体も、世間一般にはアウトロー、そして悪役なのである。
そうなってなるものかと、躍起になった時代もあった。
本作品の中で触れた章があったが、それは2004年、若しくはその翌年頃。
「特定外来生物被害防止法」や「リリース禁止条例」と、釣り人が一丸となって戦った頃である。そして(成るように成り)、現在のバス釣りの世間での立ち位置がある。
結果から鑑みるに、バスアングラーはバスフィッシングという文化を、世間に認めさせることに失敗した。いや、そのことを諦めた。
そして15年の歳月。
昨今のソルトウォータールアーフィッシングの繁栄は、アングラーの開拓精神が称賛できる一方で、バス釣りという最高の道楽を奪われたルアーアングラーの逃避行動の結果と言うことも、確かに言えるのだ。私自身がまさにそうであるのだから。
本作の『この軽犯罪を二人の秘密にしよう』で登場する加藤君なる人物は、偶然、私が大阪府の河川で釣りをしていた時に出会った、ある中学生アングラーがモデルとなっている。
「将来、自分が知事にでもなって、バスを特定外来種から外してやろうかなと・・・」
そんなセリフを彼は口にした。
確か2004年の秋口だったと記憶している。いよいよ外来法やリリ禁条例が、バスアングラーを締め出す方向に大局として傾いた頃の話である。
(余談だが、この登場人物の名前を“加藤”としたのは、私の知る限り、滋賀県のリリ禁条例に最後まで抵抗された方の名前が”加藤さん”だったことに由来する)
そうさせないチャンスはアングラー側には、ちょっとだけ残されていた。
思いつく限りで名を挙げてみよう。
近藤真彦
諸星和巳
江口洋介
木村拓也
いしいその
世間の風潮を動かせる十分な影響力を持ったバス釣り愛好家は、多くはないがそれでも当時は存在していたのだ。
現在でも、あの反町隆史が具合を悪くした女性を自宅まで届けたというニュースがお茶の間に流れることはあっても、密かに琵琶湖で世界記録のバスを狙い続けているという事実は、全く報道されない。
逃げた自分がいうのもおこがましい限りだが、もしあの頃、こういった世間に影響力のある人達がバス釣りの為に力を貸してくれていたらと、バス釣りの現状を鑑みるに、思ってみたりする。
大阪府知事・市長ダブル選挙で、維新の2候補が大勝した。
大阪都構想やカジノ建設、米軍基地誘致。
批判を覚悟で言ってしまうと、個人的には悪くないと思う。
んっ?カジノは他の県の話だったっけ?
まあ、あまり自分には関係ないと思っているから、そんな私見になるのかも知れないが。
もし私が東京都民なら、(オリンピック?道が混むだけじゃないか)と真面目に思っていることだろう。オリンピック需要なるものも、定量的にどのくらいの経済効果があるのか自分的にはよく実感が沸かないし、それによって自分の給与が上がることなんて、全く期待していないし。
この際、府知事でも市長でも、思い切ってトランプさんでもいいや。
例えば琵琶湖南湖を半分買い取って、巨大なバスフィッシングアミューズメントエリアにしてしまわないか。
いや、さすがに琵琶湖は大げさか。なら兵庫県のため池群の一部ではどうか。
ざっと数えて6千個とも言われる農業用ため池には、それぞれ所有者が必ず居るはず。
それを所有していることによる収入なんて高が知れていることだろう(想像で申し訳ないが)。
何度もいうが非難は承知。
もし実現すれば、年間50万円くらいは、このアミューズメント施設に金を落とすと思うよ、自分。500万円出せる人の話は、いくらか興味を持って耳を傾けてくれるため池の保有者がいるだろうし、5000万円出せる人なら、何か変化を起こしてくれるかも知れない。5億円ならぐっと現実味が増してくることだろう。
(昇格試験?出世?興味なし!)
ずっとそう言い続けて、気が付けば直接の上司は皆かつての後輩。
(出世なんて興味なし)
そう言い放つことが、自分的には恰好いいと当時は考えていたが、決してそうでなかったことが今となっては判る。
(大きな何かを成し遂げようとすれば、組織や会社を動かせなければいけない。その立場に自分がいないとそれは成し得ない)
そんな当たり前のことが、この年になってやっと判った次第。
なろう仲間の皆さま、まだ若い社会人の方、チャンスがあるなら、多少辛くとも是非出世を目指して下さい。まだ学生さんの皆さま、時間があるなら嫌でも勉強したほうがいいです。
いつの日か自分の我儘を、何が何でも押し通したい局面に遭遇した時のために。
繰り返すが非難は承知。
全国530か所、この雑誌で紹介されていたフィールドの一体いくつが、今も釣り禁とならずに残っているのだろうか。
6月1日で支店長が変わる。
どうやら喫煙ルームが建屋から無くなるらしい。
新支店長はタバコを吸わないそうだ。
こんなもんだ、組織なんて。




