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百夜釣友  作者: 柳キョウ
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第四十六夜:アドバイザー柳をよろしく

ただの自己PRです。

昔から少し人に自慢できることがある。

もちろん釣りに関してのことである。


いつの時代も流行というものがある。

ファッションしかり、食べ物しかり。

この流行の走りを、私は昔から敏感に捉えることができるのである。

もちろん釣りに限ってのことである。

こんな私の特技を、どこかの釣り道具メーカが評価してくれて、私を開発アドバイザーか何かの立場で雇ってくれれば、そのメーカは流行の波を捉え、競合他社に先駆けてヒット商品を連発する・・・かも知れない。


さて、そんな私も驚いたとんでもない事態が2019年に起こる。

一般の人達にはあまり関係がない話なので、そのような方は無視してくれればいい。

極めてマニアックな一部の人達にとっての大事件なのである。


(ブラックバス)なる魚の存在は、一般の人達も、その名前くらいは聞いたことがあるだろう。元々日本の在来種ではなく、海外から持ち込まれた魚であることを知っている方も多数いることだろう。なかには、(たいへん獰猛な魚で日本の固有魚を食い散らかし、生態系に悪影響を与えている)というような印象を持たれている方も居られるだろう。

最後の印象については、個人的には大いに意義ありなのだが、まあこれは置いておこう。


一つ確実なことがある。

少子高齢化が進み、子供の遊び道具も電子機器が中心となり、野球やサッカーの競技人口が年を追って減少している昨今であるが、釣り人口だけが、他のアウトドアアミューズメントと比較して、その減少カーブが少し緩やかなことは、実はこのブラックバスという魚のお陰なのである。


一度興味のある人は、近所の書店で釣り雑誌のコーナーに立ち寄ってみて欲しい。

それほど広いスペースを確保されている訳ではないものの、ルアー釣りの専門雑誌が棚に並んでいる様を見止めることができるだろう。

この時期なら目に入る文字は、(メバリング)か(アジング)。3月に入れば、季節を先取りした形で、(エギング)という活字が一気に増えていくことだろう。


どの言葉も釣り人によって作られた一種の造語で、即ち、メバルをルアーで釣るのを、(メバリング)、アジをルアーで釣ることが(アジング)、エギという疑似餌を使ってイカを釣ることを(エギング)と呼ぶ訳であるが、これらの釣法を、試行錯誤の末、現在の姿まで昇華させたのは、間違いなくかつてのバスアングラーなのである。


バスフィッシングから活動のフィールドを海に移し、そして彼らが開拓したソルトウォータールアーゲームの裾野拡大が、釣り愛好家の減少を最小限に止めているというのが、今の我が国の釣り業界の実情なのである。


さてここ辺りからがかなりマニアックな話となる。

このバスフィッシングという分野には、プロと呼ばれる人達が存在する。

釣り道具メーカに勤めている人達のことではない。

釣り番組に登場している人達のことでもない。

ここでいうプロとは、賞金の出る釣り大会に出場し、収入を得ている人達のことである。


あまり細かいところまで説明しても仕方がないので、とてもざっくりと説明すると、日本でこの賞金の出るバストーナメントが初めて開かれたのは、今から約40年前。

このバス釣り人気が最も熱かった1990年代半ばには、一部のスター選手も出現した。

イチローに憧れる野球少年の数万分の一、中田英寿を目指すサッカー少年の数千分の一といった割合だったろうが、それでもバスプロ○○を目指しているという少年達が、確かにその時代には存在したのである。

大型バスボートのデッキ上に、巨大なブラックバスを一気に抜き上げる。

手にするは自らがプロデュースに関わった最新最強タックル。

そんな紙面で見て、自分も将来あんなバスプロになりたい、そんな思いを胸に抱いた少年アングラーが、僅かではあるが確かに存在していたのだ。


そしてタックルの売れ筋は、それをプロデュースしているプロ達の人気と概ね比例関係にあった。(あのプロが使っているから)という理由だけで、少年達にとっては決して安価とは言えない竿やリールが、どんどんと売れていたのである。


さて、このプロと呼ばれる人達の人気なのだが、試合でのパフォーマンスも然ることながら、そのルックスやスタイルに因るところが確かに大きかった。ここでいうスタイルとは、背が高いとかお腹が出ていないとかいう、その人間の体型のことではなく、そのプロアングラーのフィッシングスタイルの事を意味する。

じっくりと釣るスタイルよりもスピーディーな釣り、そこそこサイズを数釣るよりも大物狙い、そんなスタイルの方が一般的に人気が高かった。やはりバスフィッシングらしいダイナミックさ、スポーティーさが羨望の対象となる傾向にあったのだろう。


このトーナメントと言われるプロアングラーの試合の場では、その成績は普通5匹の魚の総重量で競われることが多い。この5匹という匹数制限をバッグリミットというが、その呼び名の由来は、アメリカの各湖で設定された、バッグに入れて持ち帰ることのできる魚の制限から来ている。


このルールが実によく出来ていたのである。

5匹の総重量で競われるというルールであるが故、ひたすらアベレージサイズの魚を釣れば良いというものでもないし、ただ大きな魚を狙い続ければいいというものでもない。


解り易く説明しよう。

ブラックバスという魚、およそ30センチの魚で、その重量が300グラム程度である。

1キログラムの魚で大体長さにして40センチちょっと。50センチの魚で2キログラム弱。

もちろん試合の行われるフィールドや開催時期によって多少変化するが、一部のビッグフィッシュレイクや異常にタフな時期に行われるトーナメントを除いて、およそ5匹で5キログラムというのが優勝ラインの目安となる。

この5キログラムを釣るために、プロアングラーは様々なタクティクスを駆使するのである。

40センチクラスを5本揃えることを目指すスマートなアングラー。

強気に50センチを2本狙い、残りはアベレージサイズを3本釣って5キロ越えを狙うストロングスタイル。

このルールでは300グラムの魚を100本釣ることに意味はない。

その場合のウエイトは300グラム×5の合計1500グラム。40センチクラス2本の重量にも、これでは及ばないのである。

この5キロをどのようなタクティクスで狙うかが、プロアングラーの個性が出る場面であり、コアなファンは、このプロアングラー同士の個性のぶつかり合いに、当時は興奮したのである。


いま私は、日本のプロトーナメントの話をしたが、この5本の総重量というフォーマットは、本場アメリカのトーナメントも同じ、と言うよりはアメリカのトーナメントのフォーマットを、日本の団体がそのまま真似たというのが正しい。

近年、日本のトーナメントで実績を残したプロが、本場アメリカのトーナメントに挑戦する例が本当に増えてきた。この現象は、まさに日本のプロ野球選手がメジャーリーグに挑戦する現象に極めて似ている。

ワールドベースボールで、侍ジャパンがアメリカチームを下し、メダルを獲得しても、やはりベースボールの最高峰は、アメリカメジャーリーグなのである。プロとして最後にそこを目指すことは、やはり自然なことだと私も思う。


そして間違いないのは、バスフィッシングに於ける最高峰の試合は、B・A・S・Sという団体が主催するバスマスターズトーナメントという試合。優勝賞金は50万ドル、今の為替で換算すると日本円にして約5500万円ということになる。

テニスの4大メジャー大会の優勝賞金は約4億円。昨年末、日本のリングに上ったボクシング界の帝王メイウェザーのファイトマネーが一試合数百億円。そんな特別な例と比較すれば、所詮50万ドルなのだが、それでもこの世界の最高峰であることには違いない。


さて本題。2019年、B・A・S・Sの主要選手のほとんどが同団体を離脱し、新たにB・P・Tという団体を立ち上げる。そしてそのB・P・Tのトーナメントフォーマットが、バッグリミットなし、つまり匹数制限なしの重量制に決まったのである。

先の例で言えば、50センチ、2キロの魚を5本釣る(つまり10キロ)より、30センチ300グラムの魚を34本(その場合の重量は10.2キロ)釣ったアングラーの方が偉いということになる。

このフォーマットに日本の団体が追従するかどうかは現在のところ不明だが、この世界の最高峰がB・P・Tである以上、何かしらの影響は受けそうな雰囲気である。


このフォーマットの変化により、求められるのはクオリティー(質)よりもクオンティティー(量)。

少年達が憧れるプロアングラーのスタイルも大きく変わり、それによってタックルの売れ筋も変化する可能性が非常に大なのである。

既にアメリカのマーケットでは、(より小型のルアーにアングラーの需要が移っていくだろう)との分析がなされている。この傾向、実は日本のルアーメーカにとっては大きなビジネスチャンスであるかも知れない。やはり古今東西、小さく精密なものを作るに於いては、日本人の右にでる民族はいないのである。


それでは僭越ながら、私がマーケットの変化を推理することとしよう。

これから流行っていくのは、ずばり小型のリップレスクランクベイトである。

それも潜行深度1メートル、1.5メートル、2メートルとシステム化された商品となるだろう。

これは広く早く、活性の高い魚の数釣りが期待できるリップレスクランクの特性と、より小型の魚も視野に入れることによる需要の変化である。小型化に伴い、アピールが不足するという観点から、小型でありながら動きの大きなリップレスクランクが登場してくることだろう。まさに(山椒は小粒で・・・)というコンセプトとなるだろう。


そしてもう一つは小型シャッド。それもストレートリトリーブ主体で、リップレスクランクの苦手とする3メートル以深を効率よくカバーできるシャッドが生まれてくると予想する。

キーワードは遠投性能とレンジキープ力。遠投して一定層を長く泳ぐ性能を有したもの。トリッキーな動きを求める必要がないので、多少ファットなボディの方が、製品誤差も少なく、メーカとしては量産しやすいだろう。

より遠投性能を求められてきたソルトウォーター用シャッドフォルムのルアーが、バス用にカスタマイズされるという現象も起こるかも知れない。


このルアーのトレンドに伴い、ロッドで台頭してくるのがミディアムライトクラスのロングロッド。これまであまり需要の無かったクラスのロッドである。遠投性能と乗りのよいティップを有し、釣り人がロッドのホールド位置を調整することで、広くレンジ微調整が可能な7フィートオーバーのロングロッドが、2019年のトレンドとなるとずばり予想する。

ラインは8ポンドクラスのフロロカーボンラインの需要が伸びていくことだろう。

もしかしたらシーバス用8フィートクラスのショートロッド(シーバス用としてはである)を使用して、広く早く数を釣るというスタイルが生まれるかも知れない。


ルアーに注目すると、要チェックはメガバス社のバイブレーションXダイナと同マイクロ。

現存するルアーの中では、最も(山椒は小粒で・・・)の特徴を強く持つルアーである。

早ければ来月頃、海の向こうで、このルアーがウィニングルアーになったという嬉しいニュースが聞けるかも知れない。

2018年の売れ行きは伸び悩んだと聞くが果たして。


もし当たったなら、釣り業界の方、どうかアドバイサー柳をよろしく。


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