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第3話 夜目が効くって素晴らしいな 後編

 朝になり、進行方向側にいた商人と護衛達、こっちも二人が辺りを見回っている。

 そして話し合いは済んだみたいだ。

「全員倒した君に権利があると言う結論になった、私達全員は、君が言った事に文句は一切言わない。最悪全滅してましたからね」

 進行方向側の商人がそう言い、こっちの商人や護衛達全員も首を縦に振っている。


「そうか、わかった。盗賊に遭遇したのは初めてだから、討伐報酬が出るならそれを半分もらう。装備はいらないから、使えるのがあったらそっちで好きにしてくれ。こいつらがもし宝石や貴金属を持ってるなら、全部集めた後に全員で頭割り、金もだ。ただ、ポケットの小銭……。銀貨以下は俺がもらうこれでどうだ?」

「君がそれで良いって言うなら、私達はそれで良い。出発は遅れるがここで精算しよう」

「確かに早い方がいいな、どこかで分かれるかもしれねぇし」

「なら動きましょうか」

 その言葉で、全員が動き出した。


 盗賊の右手を切り落としてるのが見えたので、俺もそれに習う事にした。

 炭坑では遠くだったけど……、改めて見ると吐きそうになるな。銃で撃たれて穴だらけの死体ってのは……。

 その後は装備を剥がし、指やズボンを確認し小銭や宝石の付いた貴金属を集める。


「この革の鎧って使えるのか? 一応剥がしたが……」

「穴があいてますし、無事なものでも状態が悪いので無理ですね。武器だけが無難ですかね」

「……そうか」

「もう一度確認しますが、持っていた小銭は全てそちらに、宝石とかはこちらで買い取り、全員で山分けでいいんですよね?」

「あぁ、それで良い」

 本当は手首も買って欲しいくらいだ。こんなの持ち歩きたくないな。けど、ギルドでの功績に加算されるから、そうもいかないらしい。


「計算終わりました」

 しばらくして、進行方向側の商人が口を開いた。

「そちらの商人と数回計算しましたが、宝石とかは平均的な値段になり、私が買い取りお金に換えます、それからこちらが六人でそちらが三人。なので九で割った物がこちらです」

 わかりやすいように、地面に色々な種類のお金が積まれ、それとは別に袋に入った物もあった。

「その袋は?」

「盗賊が持っていた小銭ですので、全て貴方の物です。まぁ小銭ですので、宝石を買い取って九で割った物と同じくらいですがね」

「言った事を曲げるつもりはない。それで十分だ」

 そう言ってから袋を取り、地面に積んであったお金も袋に入れる。


「地理的にここがどこだかよくわからない。だから報告とかも任せていいだろうか?」

「えぇ、かまいません。証人もいますし。では、私達は先に移動しますね」

「わかりました。宝石の買い取りありがとうございます。自分のような駆け出し商人には持ち合わせがありませんでしたので、本当に助かりました。またどこかでご縁がありましたら宜しくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 商人達の挨拶も済んだみたいだ。

「俺は夜の見張りに備えて寝かせてもらうぞ」

 俺は雇ってもらった商人の馬車に乗り込み、ボロいローブを羽織ってフードを深くかぶり、また夜の見張りに備えた。



 それから五日経ったが、特に襲撃はなく、町と言えるような場所に付いた。

「色々な場所から乗り継いでも、金額的にここまでだね。あの時は助かったよ。もし良かったらもう一度乗ってくかい? それか俺のお抱えにならないかい?」

「いや、いい。しばらくここに滞在して、路銀を稼ぎつつのんびりさせてもらう」

「そう言うなら仕方ないね、こっちもしばらく滞在してるから、何かあったら声をかけてよ」

「わかった。何かあったら頼りにさせてもらう」

 そう言って、門から真っすぐ進んで町の中央に向かった。まずはこの腐りかけて、異臭を放ってる盗賊の右手を処分したい。


 文字は読めないが、絵なら記号的な感じで覚えてる。その絵を探し、足早にギルドに入った。

 一番近い受付に行き、こんな物を持っていたくないので速攻で聞くことにする。

「とある商人の馬車に乗って護衛をしていたが、盗賊に出会った。盗賊討伐は初めてでな、こいつをどうしていいかわからないんだ。聞いた話だと、ギルドに持って行けばいいと聞いた」


 少し異臭のする袋をカウンターに置いて、ギルドカードも一緒に提示する。

 受付嬢が少しだけ嫌な顔をしたが、丁寧に討伐部位の買い取りに行ってくださいと説明してくれ、お礼を言ってからそっちに向かった。

 盗賊も討伐部位……ねぇ……。

「盗賊を討伐した。証拠の右手だ……。多少傷んでるが、数を数えてくれ」

「かしこまりました」

 受け取った、討伐部位の買い取り専門カウンターの女性は、その場で袋を開け、素手(・・)でカウンターの上の、革でできたテーブルクロスっぽい物の上に置いて行った。


 慣れなんだろうか? 絶対に腐りかけの人の手を、素手で触りたくないな。病気が心配だ。

 そう思っていたが、何か呪文みたいなものを唱え、出てきた水に手を入れ洗っていた。なんか滅菌とかできるやつなんだろうか?

 査定が終わるまで待っていたが、直ぐに終わったから一人いくらなんだろうな。

「では、こちらの紙をカウンターに預けて下さい」

 紙に何かを書いて渡された。多分だが盗賊の討伐数だろう。文字が一行だけだし。

 そしてカウンターにその紙を持っていき、討伐部位の値段として、金を受け取った。

 そして、あまりお金を多く持ちたくないので、しばらくは滞在できるだけのお金を残して、全部預け、お決まりのようにある、ギルドの向かいの安い宿屋に泊まった。



 数日間、俺は狩りをしつつ討伐部位を集め、確認作業をした。

 装備覧に小型UAVを入れて、オプションにMG4を取り付け総重量が二十キログラム以内に納める、これでバッテリー的な飛行時間をのばせる。

 そして自爆の威力を上げるのにC4爆弾一個をセットする。最悪墜落した時に、確実に証拠隠滅出来る。

 カーボン製だから、火の出る焼夷系でも良かった気がするが、最悪自爆目的の特攻もできる。


 そして町の外で飛行試験をする。

 人気がない事を確認し、背中から取り出した小型UAVを手早く組み立てる。

 土台の足を広げ、下側にMG4を取り付け、畳んである四枚分の羽部分を持ち上げてロックをかける。

 そして左手の端末操作で電源を入れ、羽を回す。そうするとチェーンソーを空回ししてるような音が鳴り、飛んで高度が上がったら、土台の足が左右に開きほぼ平らになった。

 左手の端末で画像を確認するが、俺がかなり小さく見える、高度は約五十メートルか。耳を澄ませば羽音が微かに聞こえるので、百メートルまで一気に高度を上げる。

 そうして俺が黒い点に見えるくらいになったら、事前に用意した藁を入れた大きめの布袋を放り投げ少し下がる。


 そして端末を操作し、カメラをどんどんズームさせる。袋が適度な大きさになったら、白い点の場所を右手で軽くタッチする。

 そうすると布袋に当たり、穴が空いた。

 次は長押しをするが、一発目は命中したが、二発目からは外れる事が多くなっていく。

 小型UAVの中のジャイロが、銃の反動について行ってないのか……。そして試しに袋の周りを円を描くようになぞると、いびつな円の跡が出来た。

 精度を期待するなら、単発か水平射撃か。よし、自爆させよう。

 俺は端末の左上にある、赤い丸を押すと、中央に警告、自爆させますか? 『はい』『いいえ』と出てきた。


 迷わず『はい』を選択すると、空中で爆発し、取り付けていたC4に誘爆し、一秒くらい遅れて音が聞こえ、粉々になったパーツが降ってきた。これも地面に付いて十秒くらいで消えた。

 証拠隠滅は消えるなら問題ないな。これなら最悪C4は必要ない。

 そして、水を飲みながら十分ほど待機してたら、また背中に小型UAVが復活したので、組み立ててみるが特に選択したオプションに変化はない。何かの装備を犠牲にしてサブウエポンの場所にメイン武器二つ……。例えるなら盾と短機関銃(サブマシンガン)でもいいかもしれない。

 まぁ、奇襲用にしか使えないと思うけどね。



 文字や簡単な計算については、教会で定期的に教えているという情報を手に入れたので、適度に稼ぎながらどんどん帝都から離れ、ちょうどいいのでギリギリ町といえるような場所の教会に向かう。

 そして、大抵の文字が読めない大人は、教会で子供と一緒に勉強するのがいやらしく、殆ど通ってない事が()わかった。

 だって、俺以外の大人はいないし。

 ってか子供達が小部屋の隅に逃げたり、修道女さんに抱きついたりしてるのでへこむ。このアバターが裏目にでてるな。

 それに。この世界の神を祀っているのか、やけにマッスルな半裸の男が剣と盾を持っている。何の神だろうか?

 そして修道女さんが紙芝居風な感じで、果物や動物が描いてある物を取り出して授業が始まり、右上に頭文字が大きく書かれている。

 俺はメモ帳として買った紙に、教会から借りたインク壷と羽ペンで文字の形を書いて、日本語を書く。

 そして母音となる記号と子音の記号がある事を知り、別の紙にあいうえお順で並べ、母音と子音の組み合わせの記号だとわかった。

 あとはこの記号を、音として覚えるだけだ。かなり面倒だけど。

 授業が終わり、紙を見ながら色々な文字に慣れるように、看板の文字を見ながら、飴や果物を買う。



 そして翌日、教会に少しだけ早めに行き、昨日の修道女に声をかけ、飴や果物を渡した。

「これを、そちらから子供達に配ってもらいたい」

「あら、見かけによらずお優しいのですね」

「見た目が怖い事は自覚してるし、子供は嫌いじゃない。だからそれとなく配って下さい。まぁ、怖がらせたお詫び……ですかね」

「わかりました。休息中にお出ししますね」

「あぁ、そうしてくれると助かる」


 しばらくして授業が始まり、休憩中にリンゴを使ったお菓子が出てきた。パウンドケーキだ。

 ある程度のお菓子文化もあり、砂糖やバターもあるのか。

「はーい。このお菓子は、一番後ろに座ってる、冒険者のスピナさんからみなさんに配ってくれと言われて、もらったリンゴで作りました。みなさんお礼を言いましょう。ありがとうございます」

 修道女は笑顔で先導してくれたが、子供達の反応は悪い。


「どういたしまして。せっかく教会の人達が作ってくれたんだ、食べないともったいないだろ?」

 俺は立ち上がり、一切れだけとって口に運び、また隅の席に戻る。うん、悪くない。適度にリンゴのシャキシャキ感が残ってるし、焼きたてだからパサパサしてない。

 そして復習として文字を書きながら、残りも口に運び飲み込む。

「美味かったですよ。皆も早く食べないと、休み時間が終わっちゃうぞ?」

 なるべく優しく言ってみたが無駄だった。まぁ、食べなければ包んでくれるだろう。


 そして授業が再開されるが、いきなり俺の名前が呼ばれ、紙に書いてある文字を読んで下さいと言われた。

 当てられるのかよ。

「あー……。ぼくはりんごとあまいものがだいすきです」

「はい、正解です」

 俺じゃない大人だったら、馬鹿にされてると思われるような内容だが、文字を覚えるには、簡単な文章だからしかたないな。

 ってか、よく俺を当てる勇気があったな。

 そして、数字は十種類なので、これは簡単に覚えられた。むしろアラビア数字に近すぎて、間違えようがない。


 数日ほど通い、ある程度メモなしでも文字が読めるようになり。物の名前も同じだったから、特に苦労する事なく生活に支障が出ない程度には、なった。

「いままでお世話になりました」

「とても勉強熱心だったのでこんなに早く覚えられたんですよ。魔物に気をつけてお仕事して下さいね」

「えぇ、注意します」

「それにしても……。結局子供達とは打ち解けられませんでしたね」

「仕方のない事です。色々気を使っていただきありがとうございました」

「いえいえ。では、何かありましたらまたおたずね下さい。我々の神はどのような方でも受け入れます」

「ありがとうございます。では、失礼します」


 丁寧にお礼をしてから教会を出るが、無償で色々教えてくれるってのは評価できる。

 俺は無神論者だけどね。

 さて、この町ともおさらばしないとな。

 俺は帰り道に、保存の利く食べ物を買い翌日に備えた。



「これでいけるところまで頼みたい。出来るならアラバスターとは逆方向がいい」

 門の前にあった、乗り合い馬車の御者に言う。

「すまないが隣町までだ、そしたらまたそこで探してほしい」

「わかった、それで良い」

 俺は隣町までの料金を支払い、さらに帝都から離れることにした。

緩い武器説明


UAVドローン 四枚羽のアレ。 実際荷物運搬などですでに使用されている。某国では子供を運んだ実験もしている。


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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

― 新着の感想 ―
[良い点] 何年も前に登録して最近読み始めました [一言] UAVドローン 四枚羽のアレ。 実際荷物運搬などですでに使用されている。某国では子供を運んだ実験もしている。 ↑ 40kgも運搬出来るなら、…
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