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第21話 勲章授与1/4

今回から前後も含め、数話ある場合も連日投稿とします。

ご了承ください。

前四話で4000・4000・4000・5000で別けます。

「んじゃいってきます」

「教育係をぶっ飛ばさないように」

「教育的な指導から来る、軽くはたく程度なら問題ない」

 翌日、朝食後に軽く挨拶をしてから公爵家に向かおうと、ドアを開けたらトニーさんが迎えに来ていた。

「なんで迎えが来るんだ? そんな事で税金を無駄に使うなよ」

「逃亡のおそれもあるから、迎えに行けとの事です」

「自分が処される可能性もあるからだろ。まぁいいさ、折角だから乗せていってもらうわ」

「助かります。じゃないと自分が怒られますので。ではお借りします」

「返してねー」

 グリチネはだるそうに挨拶をし、トニーさんがドアを閉めた。


「アニタはヘイの所か?」

「えぇ、この間の勘がはずれたのが悔しかったのか、なんか変に固執しています」

「そうか。ある意味真逆だったしな」

「高級娼館がスラムの統括ですもんね」

 てっきり女性と二人っきりにさせるのを、避けるためだと思ってたわ。



 公爵家に着くと、既に似たような馬車が止まっており、ヘイはいつもの部屋でお茶を飲んでいた。

「やぁ、おはよう」

「あぁ、おはよう。今朝はずいぶん早いじゃないか」

「昨日さー、アニタさんに宿で待ち伏せされててさ、迎えに来るから宿にいろって力強く言われてね」

「下手したらお泊まりだもんなー。そりゃ言うわ」

「だから宿っていう名の娼館からそのままこっちに来ちゃった。今ごろ探し回ってるのかな?」

「鬼畜な行為だな。トニーに言えよ。ってかここにいる時点で誰かがアニタを探し回ってるか……」

 軽く挨拶をしていたら、メディアスとメイドさん、そしてなんか白髪で髪を纏め上げている、痩せ形で五十代のキツそうな女性が入ってきた。


「やぁ、二人ともおはよう。この方が私の教育係だ。厳しいから覚悟するように」

 メディアスが紹介をすると女性が一歩前に出て、軽く会釈をした。

「あぁ、問題はない。悪意のない指導での暴力ならやり返すことはない。よろしくお願いします」

「女性に手を上げることは滅多にありません。よろしくお願いします」

 軽く挨拶をすると、メディアスは頼むと言って出て行ってしまった。


「では、早速歩く事から始めましょう。作法や手順はそれからです」

 教育係がそういうと、メイドに持たせていた本を受け取りこっちに出してきた。

「まずは頭に乗せて歩きなさい。姿勢を正して歩けば落ちる事はありません」

「基本からだな……」

「正しい歩き方ができれば上半身はブレない。風船で頭が引っ張られてると思えば習得は楽らしいよ」

「ほー。どれ……」

 俺は教育係から本を受け取り頭に乗せて歩く。ついでに小走りもする。


「おー上手いじゃん。僕もやってみよー」

 ヘイも本を受け取ると頭に乗せ、普通にスタスタと歩いている。

「お、ヘイも中々やるじゃん」

「銃を構えて歩く時に上半身を揺らさないで、下半身だけで歩いたり走ったりするじゃん? ソレ」

「あ、俺もソレ」

 教育係は口を半分開けて無言で立っていた。とりあえず仕方がないので、二人で室内をうろうろ歩き、本棚から本を取ってイスに座って読んだりするふりをする。

 そして自動拳銃を抜いて構え、膝でクッションを取るようにしながら、部屋の端から端までヘイと歩いた。


「多少の上下はあるけど、基本これだよな」

「だねー。上半身動かさないでの構え小走りは基本だよね」

 そう言いいながら、引いてあるイスに足をかけて膝ぐらいの障害物を乗り越えたりした。

「もういいです、次です!」

 教育係に怒られた、どうもやりすぎたらしい。


「次にテーブルマナーです!」

 テーブルマナーも粗方オッケーをもらえた。ナイフやフォークの使い方はもちろん、各種フルーツの食べ方も知識で乗り切ったが、ヘイは完璧だった。なんか育ちがわかっちゃうな。

 ってか教育係より動きが綺麗だった。

「朝飯食ったばっかりだから、なんか胃が重い」

「軽く食べておいて正解だったよ」

 教育係はプルプルしているし、メイドはおろおろとしていた。

 なんでこんな奴に教養があるんだ? って感じだろうか?


「で、では。食後のお茶を会話しながらやりましょう。私を王妃様だと思って会話しなさい」

「謙譲語でいいか? 尊敬語?」

「国のトップだからね、謙譲語でいいんじゃない?」

 その後はお茶が運ばれて来たので、たどたどしい謙譲語を使いつつ、どんどん会話をしていく。そしてやっぱりヘイは完璧にこなしている。恐ろしいわー。

 そして途中でメディアスが入ってきて、国王夫妻という設定でお茶を飲むが、ずっと能面のような顔でこちらを見ていた。そんなに意外か?



「だぁお前達! なんでそんな教養があるのに私に使えないんだ! 普段から使えよ! どれだけ私を苛つかせれば気が済むんだ!」

 ある程度会話をし、スコーンにジャムを付けている時についにメディアスが吠えた。やりすぎだったんだろうか? それともジャムを付けすぎた? ってかこのスコーン美味いな。持って帰りたいくらいだ。

「いや、初めて会った時に気に入らなかったから。それからダラダラと……。最初の態度とか接し方が違えば結果は違っていただろうな」

「メディアス様。私はそのような言葉使いを、お教えしたつもりはございませんが?」

「いやー。人で態度を変えるっていけないってわかってるけどさ、国王様は別だよねー。最悪退位してもらうことになるけど」

「不敬罪になるぞ?」

「ははは、まぁ相手の出方次第って事で」

 そんな会話を二人は、白い目でこちらを見ながら聞いていた。


 その後は式の流れになり、別な教育係の説明を聞きつつ数回で覚えた。ヘイは一回目で成功させてるし、かなり絵になっている。

「あ、服装とかどうなんだ? 作るのか?」

「それ気になるなー。なんか動きにくそうなの着たくないし」

「いえ、初めてこの屋敷に来た時に来ていた物で良いとの事です。洗練された雰囲気があると、メディアス様がおっしゃってました」

「あー、あの五タイトル記念礼服……」「あー。あの少し目立つアレかー」

 二人で呟き、とりあえず嫌な顔をしておく。だってゴチャゴチャしてて、なんか引っ掛かって邪魔だし。

「どのような物なのですか? あるなら袖を通してもう一度通しでやってみましょう」

 その後は例の礼服に装備を変え、両方特に間違える事なく終わらせた。

 そして訓練は問題なさそうって事で、三日に一回復習する程度で良いことになり、手紙が届くまでの間は仕事を取るなと厳命された。



 それから三十日後に手紙が届いたらしく、式の復習中にウェスから、明日に王都ビスマスに向かうと言われた。ってか片道二十日だって聞いてたけど、早馬みたいなのでも出したんだろうか?

「んじゃ行ってきます」

 リュックに必要な物を詰め込み、片方の肩にひっかけながらカウンターに小指の指輪とハンカチ、一応ギルドカードを置いた。

「国王やそれの親族とかをぶっ殺さないように。一応手を出したらヤバイ部類だから」

 一応じゃなくて、かなりヤバイからね?

「あぁ、わかってる。ぶちかますのは最後にしておく」

「毒に気をつけてー。三人までならメイドとか貴族の令嬢に手を出してもいいわよー」

「あいよー」

 グリチネはいつも通り手をヒラヒラと振り、ドアを閉める時に後ろを確認したらもうタバコをくわえていた。

 ってかこんな状況で手なんか出せるかよ。絶対ハニートラップだって。


「お迎えに来ました」

 相変わらずトニーさんが迎えに来てるし……。ここ一ヶ月の稽古はずっと迎えに来ている。ヘイは五回目で折れて、ずっとアニタさんの迎えで来ている。娼館に入る前から見張られてたら嫌になるよなー。ってかアニタさん意地張りすぎだよなー。

「あぁ、助かる」

 もう毎回なので俺もグチグチ言う事は止めた。ってか公爵家に集まってから出かけるのかよ。門で拾ってくれよ……。


「やぁ、おはよう。しっかりヤる事はやってきた?」

「あぁ、おはよう。そっちこそ悔いのない様に買ったか?」

 毎回こんな感じで挨拶をするが、今回は後ろに立ってるアニタさんの笑顔がひきつっている。なにやったんだ?

「うわ、香水臭い」

「水浴びしたんだけどさ、香りが取れなくて」

「香りじゃなくて臭いだよ。ってかこの状態で馬車に乗ったら最悪吐くぞ? どうにかしろよ」

 抱いた時に付けてる香水の香りが移るとか、帰宅時に石鹸の香りがするとか聞いた事あるが、直接振りかけたように強烈だ。


「泥の中か、残り湯をもらうか……」

「馬車の屋根の上だな」

「尻が死ぬね。幸い数台で行くから、最悪俺一人乗りだね」

「馬を一頭借りた方がいいんじゃね?」

 そんな事をしていたら、メディアスとロセットさん(目標A)が出て来て、後ろにはウェスが付いていた。


「朝から何を騒いでいる。いいから乗れ、出発するぞ」

 メディアスはそれだけを言って馬車に乗り、ロセットさんは笑顔で会釈をしながら馬車に乗った。

「お前達二人はその馬車だ、一番先頭を走ってもらう。待ち伏せしてる盗賊がいたら殺せ、俺達は最後尾で何かあったら知らせる」

「了解。ってか俺達はゲストだろ?」

「公爵の方が偉いし、戦力はもう知られてるから諦めよう……」

「ってかヘイと二人かよ! 絶対吐くぞ?」

「窓全開で走ろうぜ!」

 ヘイは笑顔で親指を立てて馬車に乗った。ってか片道何日よ? 馬車で二十日だっけ?


「さて、向こうに着いてからの話し合いでもしようか」

 馬車に乗り込み、メイさんにドアを閉めてもらったらヘイがいきなり真顔になった。かなり真面目な話なんだろう。香水関係は保険だったのかもしれない。

「あぁ、そうだな。何か策はあるのか?」

「ストーリーモードで使えるハエ型の偵察機があるだろ? 俺に過剰な接触をしてきた奴を追うつもりだ」

「あれか。肩につけたりして操作すれば問題はなさそうだ。俺も使うか……。その後はどうするんだ?」

「とりあえず毒だけ警戒、それとそのメイドの裏の雇い主を調べる。報告には行くだろうな」

「問題はこの端末が他の奴には見えない事なんだよなぁ……」

 今のところプレイヤーにしか見えてないっぽいので、録画とか録音しても俺とヘイにしか確認できない。そこをどうするかが問題だ。

「俺に任せろ。ある程度きっかけを作るから、その時はノってくれ。後は運とか流れで」

「わかった。ソレでいこう」

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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