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第19話 人を虐殺4/6

 夜中に遠くで射撃音が聞こえたが、多分橋を渡ろうとした部隊がいたんだろう。

 俺はあぐらをかいて双眼鏡を覗きながら干し肉を囓り、敵の襲撃に備えるが、朝食でも作っているのか煙が多く見える。

 そして九時になった頃、遠くから街道を隙間なく兵士が整列し、こちらに向かって来ているのが見えた。

「ヘイ起きろ、奴等数任せで突破するつもりだぞ。一人じゃ手が足りねぇ!」

 俺はヘイを揺すり、慌てて飛び起きたので双眼鏡を渡すと橋の方を見ている。

「クソが……()の眠りを邪魔しやがって――」

 あ、今のでわかった。寝起きは良いが、意味もなく起こされると機嫌がクソ悪いタイプだ。

「駄目だと思ったら橋を爆破してくれ、とりあえずリロードの最速記録が出せそうだ」

「期待してる」

 余計な事は言わず、俺はとりあえずウォールブレイカーのACOGを覗き込む。


 兵士が橋を渡り始め、先頭が死体を無視して踏みながら、こちら側に足を着けた瞬間にヘイが銃をフルオートでぶっ放し、無言でリロードをし始めたので、その合間に俺もフルオートで撃ちまくる事にした。

 それでも勢いは止まらず、お互いがカバーするのを止めて撃ちまくっていたら、同時にリロードをするタイミングが来てしまい、こちら側に数列の兵士が足を踏み入れたので、俺は黄色のリモコンを二回握って橋を中央で爆破して落とした。

 橋に乗っていた奴と、押されるようにして川近くにいた兵士がそのまま落ちてこちら側に這い上がってきたので、そいつ等も銃で川に流してやった。


 そしてしばらくして、敵は邪魔だと思ったのか死体を川に捨て始め、死体や木材を持っている奴を撃つと、そいつも一緒に川に落とされ、どんどん流れていって、下流側の水が赤っぽくなっている。

「敵さんは必死だな。ってかやべーぞ、こっち来るぞ」

「だねー。どうにかしないとやばいねー」

 ヘイの機嫌も直っているが、少しあり得ないって感じの焦りが見える。

「装備を変更するか、俺が走ってC4投げてくるか……だ」

「弓兵は後方なのか見えないけど、装備変更の方が安全だね。吹き飛ばしちゃって」

「了解」

 俺は装備を変更し、ジャベリンで橋の奥の木材を吹き飛し、橋をさらに大きく崩す。



「スピナ様とヘイ様ですか!?」

 数十発くらいジャベリンを打ち込んだら、馬で走ってきたビスマスの騎兵に話しかけられ、少しだけ振り向いて見ると数名だけ確認できる。

「そうだ! 何の用だ! 今忙しいんだからさっさと用件を言え! じゃなきゃお前等があそこに行って進軍止めてこい!」

 銃を撃ちながら川から這い上がってくる兵士を撃ち殺し、ヘイは街道から離れた場所で上がってこようとしてる奴を撃ち殺している。正直通信以外は邪魔に感じる。


「今の状況と、何名殺したかの報告をお願いします!」

「ここから少し行った丘で迎撃、それから後退を繰り返しつつ遅滞戦闘、そして今! 先行部隊の一万ぶっ殺してからは数えてねぇよ! 友軍到着までどのくらいだ!?」

「我々は偵察部隊です。申し訳ありませんが、どんなに急いでもあと五日はかかると思います! しかも疲労もありますので進軍速度を上げる事はできません!」

「背中にある町の防衛の準備はどのくらいだ。もう堀とか掘って柵でも立ててんのか?」

「柵だけです! 堀はどうしても時間がかかります!」

「魔法使いはどうしたぁ!? この前の戦争で死体埋めんのに、地面くぼませてるの見たぞ!」

「アレは我々の国の工兵です、あの町にはいません!」

「なんで一緒に連れてきて、さっさと防衛の準備させねぇんだよ! 町が奪われんぞ! もういい、気が散るからさっさと戻って報告してこい! あと保存食を必要ない数だけ置いてけ!」

 銃をフルオートで撃ち、射撃音でうるさい中お互いが叫ぶように会話をするが、友軍は絶望的だった。


『おい、聞こえてたか。友軍は絶望的だぞ』

 マイクをオンにしていたから、多分向こうにも聞こえてたと思って聞いてみる。

『今のセリフ。千九百七十年代の西部劇の終わり方みたいだね。敵に囲まれて絶望的な状況で、物陰から飛び出して終わるってのが一時期流行ってたらしいんだよ。やるつもりはないけど。ってか川沿いに敵が広がり過ぎて対応がし辛い。そろそろ後退も視野に入れないと』

『昼飯は後ろで食ってて、今やりあってる奴が交代で飯を食う感じだろうな。食える奴は半分以下だろうけど』

生きてたら(・・・・・)飯が食えるってやつだね。煙が見えるから準備してるか食べてるかだね』

「保存食はここに置いて置きます。では報告に戻ります。御武運を」

『御武運だってよ……。勘弁して欲しいぜ……』

『この時代は、大軍同士をぶつける事が多いからね』

 小声で話していたら、保存食を置いて報告の為か去って行った。まぁ仕方ないよな。大軍相手に騎兵数名じゃどうにもならないし。


『さて、飯はどうするよ』

『食べながら防衛するしかないでしょ。一応ここが防衛しやすいし。かなり上流下流に回られたらどうにもならない。その場合は町の兵士に任せるしかない』

『頃合いを見計らってドローン飛ばすしかないな。どうにもならないけど。んじゃジャベリンそっち側に撃ち込んで怯ませるから、取りに来てくれ』

『りょーかい』

 俺はジャベリンを構えて、ヘイが撃っていた辺りに撃ち込み、袋を開けて自分の分を大体半分くらい取り、下ろしておいたリュックの上に無造作に置く。

「これが僕のだね」

 ヘイは一言だけ言い、袋の方を左手で持って片手で銃を撃ちながら戻っていった。意外に器用だな。



 川沿いにいる兵士が下がり、第二波が来ると思ったら白旗を持った兵士が数名、落とした橋の上に来た。

『白旗だねぇ。どうする?』

『どうするも何も、一応応じるしかねぇだろ……。ドローンを飛ばしてから向かうから、先に対応しててくれ』

『了解』

 俺は装備をいじり、ドローンを飛ばしてから、橋までの五百メートルを銃を構えたまま走る。


「仲間が来た。喋ってくれ」

 ヘイは敵との話し合いだからか、真面目モードになっている。

「その前に覆面を外すのが礼儀だろ。しかも武装も解除していない」

 戦争するのに何の優位性もない、少し豪華さがある鎧の男が口を開いた。

「こちらは正規の兵士ではない。礼儀なんて物は存在しないんだが?」

 ヘイは黒の目出し帽だが、喋りやすいように鼻の辺りまでめくっていた。俺も喋る時はめくるか。

「とりあえず用件は何だ? さっさと言え。時間稼ぎなら死体になって戻ることになるぞ?」

「貴様! 口の聞き方には気をつけろ、このお方は、ぎゃぁ!」

「うるさいぞ? 余計な口出しするなクソ袋が」

 ヘイは持っていたAKで、口を挟んできた奴の膝を打ち抜き汚く罵った。案外ヘイもやるな……。

「邪魔が入ったが続けてくれ」

「あ、あぁ……」

 えげつねぇなぁ……。この状況で喋らせるんかよ。


「我々は多くの兵を失った。だから撤退をする前に、殺された者の遺品を回収する。しばらくこの辺一帯への滞在を許してもらいたい」

「死者の遺品回収と埋葬は勝った側の仕事と聞いてるが?」

 俺はスカルマスクをめくり、前の戦争の時に聞いているから言ってみた。

「それはそちらに兵士がいないからだ。放っておくと誰が誰だかわからなくなる」

 ミンチにした奴もいるが、その辺はどうなんだろう? 今まさに足下に転がってたり、流れてるけど。

「理に適ってはいるな」


 俺は上昇させっぱなしのドローンの映像を見ると、部隊を二つに分けたのか、上流と下流に向かって進軍をしている。

 綺麗な四角だから、大体五十掛ける五十で一個の四角が二千五百人としてそれが四組に、前にぞろぞろいるのは騎兵だろ?

裏にいるのは、弓兵と魔術士だとして、一万五千くらいか。

 街道の奥にいるのは輜重兵か? なんかごっちゃりいるぞ?

 俺は端末をヘイに見せつつ、小声で大体の人数を言った。


「あぁ、かまわない。だが、上流と下流に向かわせてる兵士達を戻らせて回収させろ。時間稼ぎなら白旗を持ってても、一番偉そうなお前だけ残して殺す」

 ヘイがそう言うと、持っていた自動小銃を構え、膝を撃った奴の頭をぶち抜いた。

「わかったなら偉そうな奴が残れ、捕虜にしてお前達兵士が進軍を止められなければ殺す。しらを切るなら先ほどの宣言通りに護衛を殺す、偉い奴じゃないと上に話しが通らないからな。言葉は選べよ?」

 ヘイが続けざまに言い、俺も自動小銃を構える。


「ま、まて、これは交渉だぞ? なんで武器を向ける」

「兵力を分散させて、上流と下流に向かわせてる時点で交渉ではなく時間稼ぎだ。さっさと答えろ! 交渉の場に出てくる時点でそれなりの身分なんだろ? 鎧を見ればわかる」

「ちょっと待て。何か勘違いをしているぞ! 兵士は動いていない」

 偉そうな奴が余計な事を言ったので、俺はもう一人の頭を撃って黙らせた。

「兵士の進軍距離とお前がここに来た時間が合わない。知らないってのは通用しないぞ?」

 俺はわざとらしく口角を上げ、似たような武器を持っている事を教える。


「早くしろ。こっちの気分次第で全員を殺し、二手に分かれて行動に移すぞ? どのみち返答次第ではそうしないといけないんだからな」

 いやーヘイさん。一人で一万五千の相手はきついっすよ? ちょっと強気じゃないっすかね?

「……お前等。戻って交渉は決裂し、進軍がバレていると言ってこい。私は残る。皇帝陛下から預かった大切な兵を無駄に殺されたら、指揮している我々や家族も危うい。行け」

 偉そうな奴がそう言うと、白旗を持った奴が大急ぎで後方の馬に乗り、駆けていった。


「約束は守るんだろうな?」

 偉そうな奴が殺気を飛ばしながら言ってきた。貴族のボンボンって感じはしないな。

「あぁ、約束は守る。安心してくれ。さーて、真面目になるのも疲れたなー。寝転がって良い? 疲労がたまり過ぎてて、すんごくイライラするんだよねー。あーよっこいしょっと」

 ヘイがそういいながら橋の手摺りに寝転がったので、俺も反対側の手摺りに腰を下ろす。

「貴様、ふざけているのか!」

「いやいや、大真面目。こっちは戦いっぱなしで疲れてるんだよね。偉い奴はいいよねー。後方でふんぞり返ってる事が多いし。寝る時も豪華そうなテントとかで、ベッドもあるんでしょ? 食事も豪華そうだよねー」

「あー。確かにそんなイメージだな」

「私は違う! 兵士達と供に寝起きし、食事を供にしている!」

「へー、信頼関係の構築が出来る良い人なんだねー」

 その後ヘイは、橋越しに雑談をしつつ、カロリーバーを囓ってのんびりとしていた。

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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