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第12話 豚を虐殺 前編

 翌朝、軽い倦怠感を感じながら目覚めベッドから起きあがる。いつも通りの起床。隣にはグリチネ。魔法は成功したみたいで助かった。欲を言うなら、後一回少なければ心地よい眠りって感じなんだろうな。

 ベッドの上であぐらをかいて、目をつぶりながら軽く頭を前後に動かし、ゆっくりと体を覚醒させていく。

「おはよう」

「あぁ、おはよう」

 グリチネは俺の奇行を無視し、挨拶をしてきた。

 まぁ奇行と言っても、まどろみの中で起きようか、けど寝ていたいって戦いが好きだからな。

 そしてグリチネは、煙草を吸いながら、下着やシャツを着て、小さな鏡でピアスを耳に付けている。

 着替えを見るのは良いねぇ……。

 いつも通り朝食を食べ終わらせ、出かけようと思ったらキスをされた。

「たばこ臭い――」

「少しくらい我慢して」

 微笑みながら、手を振って送り出してくれた。


 ギルドに着くと少し騒がしく、オークの集落を見つけたパーティーがあるらしい。そしてその情報を元に討伐隊が結成されるらしく、ギルドに来た新人以外は参加願いが出されていた。

 ふむー、こう言う事もあるんだな。まぁランク3の俺にはほぼ関係ないか。後方支援というより、森の浅い部分の討伐らしいし。

「ようおっさん、あんたは前衛だろ? 仲良くやろうぜ」

 昨日の、鎧を着た調子のいい男が話しかけてきた。

「森の浅い部分だ、こう見えてランク3だからな」

「うっそだろ!? あんだけ強いのにか?」

「基本的に討伐依頼の紙を見て、討伐部位を持ち帰って来るだけの生活だ。ランクなんかあがらねぇよ」

 ギルドカードを見せ、ランクの部分を見せる。

「もったいねー」

「ランクが高いと今日みたいな事になる。面倒事は極力避ける質でね。金が稼げてランクが低い方が良い」

 鼻で笑いつつ受付を済ませ、ギルドが用意した馬車数台に百人くらい乗り込んで森に向かった。



「良いかお前等! 危なくなったら、全力で逃げてこい。森の浅い部分は低ランクの奴等が狩りをして数を減らしている。逃げた先で遭遇って形は低くなる。安心してぶっ殺してこい!」

 いかにも冒険者上がりの、ギルド職員って感じの男が、五十人くらいの集団に向かって吠えていた。アレが討伐組か。

 そして吠えていた男は高ランクで引退して、そのままギルドに就職って感じかな。ああいう感じの職もいいな……。

 さてさて、特にパーティーを組む事もなく、森に入り強化アーマーと盾、昨日と同じ装備の自動小銃のHK416を装備し、森の浅い部分をうろうろする事にした。


 豚を見つけては撃殺すを繰り返していると、動かない光点を見つけたので向かうと二人組がいた。片方は怪我をしているっぽい。

「どうした、怪我をしているならベースキャンプにでも運んでやるか?」

「あぁ、助かるよ。足首をやっちゃってね。相方は力がないから、肩を借りるのも不安でね」

 その相方を見ると線が細く、いかにも魔法使いです。っていった肉付きだ。

「すみません、僕に力がないばかりに……」

 声質的に男か……。一瞬女に見えたわ。

「気にするな」

 そう言って物を運ぶ様に女性を右肩に女性を乗せた。

「ちょ、ちょっとなんでこんな運び方なのよ!」

「俺が楽だからだ、尻が前だと恥ずかしいか?」

「そう言う意味じゃないわよ! 肩を貸してよ!」

「恥ずかしいなら恥ずかしいって言え」

 そう言いつつ足と足の間から右腕を出し、フルオートで十五発ほど撃ち込み、こちらに向かってくる豚の胸をぶち抜いた。

 女性は熱がる様な声を出していないので、銃からでた薬莢は太ももに当たってはいないはずだ。

「もうしわけないが、鼻を切ってきてくれ」

「は、はい!」

「ちょ、ちょっと、何が起こったの!? ナニしてるのよ!」

「うるさいな。ほら、見せてやる」

 そう言って振り向き、何があったのかを見せてやると、それ以降女性は静かになった。


「怪我人だ」

 ベースキャンプに戻って女を下ろし、森に向かおうとしたら皆の前で吠えていたギルド職員の男に捕まった。

「お前が例の噂の男か……。話がある。俺に時間をくれないか?」

「……かまわんが、話の内容にもよる」

「いや、有名な奴だったのに、朝に見かけなかったからな、気になっただけだ。ギルドカードを見せてくれ、昨日からずっとここで狩りでもしてたのか?」

 俺は言われた通り、腰のポーチからギルドカードを取り出し男に見せた。

「……その。なんて言ったらいいか。なに者だお前は?」

 ランクを見たのか、職員の男は怪訝な顔でこちらをみている。なんだよその顔は……。

「スピナシアだ」

「いや、そう言う事じゃねぇよ……。なんで今噂の奴がランク3なんだ?」

 俺はなんでランクが3なのかを、とりあえず教えた。


「お前……なんで冒険者やってんだ?」

「日銭稼ぎだが? とりあえずさっきも言ったが、その日暮らしをしてたからな」

「なんでその力を役立てないんだ……」

 ギルド職員の男は、額を押さえ落胆している。上昇志向のない、面倒がなんとなく嫌いなおっさんロールプレイを、馬鹿にしないで貰いたい。

「なぁ、今からでも良い。集落に向かった奴等を追ってもらえないか? 頼むよ」

「命令か?」

お願い(・・・)だ」

「ならいいだろう。命令なら断ってたが、お願いじゃ仕方ねぇ。場所はどこだ?」

「あ、あぁ。ここから、太陽が昇る方角と沈む方角のちょうど真ん中をまっすぐ行くと見えてくるはずだ。足跡とオークの死体を追ってくれ」

 ギルド職員は森の北側を指さし、板に乗せた紙に何かを書いている。討伐組に俺の名前でも足しているんだろうか?

「了解。正式な依頼じゃねぇから、ランクを上げるんじゃねぇぞ」

 俺はそれだけを言い、森に入る事にした。


 足跡を追いつつ、鼻のない死体を目印にどんどん森の奥に進むが、豚との遭遇はない。五十人くらい投入すれば根絶やしっぽい事くらいはできるか。問題はこの森がどのくらい広くて、どこに集落があるかだけどな。

 時々、討伐組と運良く会わなかった豚が襲いかかってくるが、出てきた時点で弾を胸に十発撃ち込んで黙らせる。

 そして余裕があっても、マガジンは常に満タンにしておき、安全をとる事にしている。

 ゲームの出始めの頃に、一人倒したらリロードをする癖が付いていたが、今はゲームじゃないし、一回見かけた後の遭遇でも結構時間が開くので、物陰から二匹三匹と出てくる事はなかったから、さっさと交換しておくに限る。

 それこそ二匹から四匹が固まってるから、一匹だけ処理してもリロードはしておくべきだ。



 ゆっくりと三十分くらいは歩いただろうか? どんどん豚の死体も増えていき、中途半端に立木が切られ、引きずったような跡も見える。

「切り口が雑だな。半分まで切って、無理矢理千切った感じだな」

 軽く呟き、さらに五分ほど進むと叫び声が聞こえてきた。

「後衛! 回復急げ!」

「多少の巻き添えはかまわねぇ! 前衛を巻き込みながら魔法をぶっ放せ!」

 ひでぇな。混沌としてやがる。

 俺は木の陰から様子を見るが、丸太や木の枝を組み合わせただけの家風の物や、丸太を削って持ち手を細くした、棍棒を作っている途中の物もある。

 しかも体長が三メーター近い奴が二匹いるな。棍棒の先になんか剣が刺さってて、釘バットみたいになってるし……。冒険者から奪ったのだろうか? まぁいい、皆には一分ほど待ってて貰うか。


 俺は腕の端末をいじり、対物狙撃銃のマクミランTAC-50を選択し、一分経ったらアンカーを撃ち込んだ盾の上に対物狙撃銃を乗せ、釘バットを持ってる奴をスコープ越しに覗く。

 途中で釘バットを狙いながらボルトを上げて、中途半端に引いて薬室に指をつっこみ、弾が装填されている事を一応確認し、ボルトを戻してから狙いを付ける。

 釘バットの周りに多くの前衛職が集まり、多分オークリーダーだと思われる奴も取り巻きとして多くいる。普通の豚もまだまだいるな。


 俺は数回深呼吸をし、呼吸を整えてから全て吐ききり、釘バットが棍棒を振りかぶった瞬間を狙い、引き金を引いて大きな音と共に前衛職の頭の上で釘バットの胸が弾け、頭が数メートル吹き飛んで倒れ込んだ。

 俺は急いでボルトをコッキングし、次弾を装填してもう一匹を狙い、今度は釘バットを振り下ろしたタイミングで引き金を引いた。

 真横からわき腹を狙う形になったので、今度は腕が残ったまま胸辺りから千切れてぽろりと地面に落ちた。

 オークリーダーは、前衛と頭一つ分くらいしか体長が違わないので、高火力は危険だな。自動小銃も外したら味方に当たりそうで怖い。

 その場にいた全員が驚いていたが、急いで端末をいじり、近くで撃てばいいんじゃね? って弾の数とリロードのしやすさって事で散弾銃のM1216にアクセサリーは特に何もつけていない物を選択し、一分後に森の中から走って出る。


 そして盾を構えたまま前進し、後衛を狙おうとしていた豚を、盾をなるべく体に近づけながら体当たりをして吹き飛ばしてから、胸に一発撃って次の標的を見つける。

「あ、ありがとうございます」

「気にすんな、自分の役割を果たせ」

 そして三匹同時に襲いかかってきた豚共の胸を狙い、一発ずつ撃ち、銃口を一回上に向け、左手でカチャリと筒を一回回す。

 この散弾銃は、四発の弾が入る筒が四本束になっているので、合計で十六発撃てる事になる。てか銃身長すぎて、銃口を上にしないと盾に引っかかって回せねぇ!


「数だけは多いな。変なところまで豚に似やがってよ! 後は任せるぞ」

 俺は襲われそうになっていた後衛に言い、オークリーダーと戦っていた奴の近くまで走り、愚痴を吐きながら膝の辺りを撃ってから盾ごと体当たりをして吹き飛ばし、今まで戦っていた奴に後処理を任せる。

 そして十六発撃ったらマガジンを外し、腰にぶら下がっているマガジンを着け、集落を一周するように走る。

「きついなら少しこっちにまわせ!」

 周りに聞こえるような大声で忠告し、背中を向けていたり、襲いかかってきた豚をどんどん処理していく。

 一発撃てば死ぬか瀕死になるので、そうなった奴は他に任せればいい。


 二本目のマガジンを交換し、立っている豚がまばらになってきたので、俺は中央に向かって走るが、前衛が多かったから既に中央には生きている豚はいなかった。

「おっさん!?」

「喋ってる暇があるなら後衛の所に走れ!」

 今朝も喋りかけてきた、鎧を着た調子のいい男に檄を飛ばし、さっさと後衛を守るように促す。

「貴方のおかげで助かりました」

「俺の事は良いから、さっさとキウィとベリィの所にいけよ、残ってる豚に襲われちまうぞ」

「なんで二人の名前を……」

 俺は盾の縁でバイザーを上げ素顔を晒し、にやけながら顎で、見覚えのあるコスプレみたいな神官服っぽい女を指す。

「は、はい!」


 さてさて、残党処理といきますか……。

 適当に辺りを見回し、後衛が孤立しているところに向かい、他の組と合流できるように先導し、近寄ってきた豚を散弾銃で吹き飛ばす仕事に変わっていた。

 さてさて、俺は帰るかねぇ……。もうあらかた散ってるし。

 そして特に挨拶する事もなく、銃を自動小銃のHK416に戻し、森の入り口の方まで戻った。



「おぉ! 戻ったか! どうだった!?」

「討伐組に聞いてくれ。戦果報告はそいつ等がするんだろ?」

 俺はバイザーを上げ、樽にあった水をカップに汲んで飲み、森の浅い所で狩っている奴等の所に戻る事にした。

 そしてしばらくウロウロしていたら、討伐組が戻ったと言い回ってる奴がいたので、また戻ることにした。

 待っておけばよかった……。


 何で俺が吹き飛ばした首があるんだよ……。

 ベースキャンプに戻ったら戻ったで、あの釘バットの首が二つ転がっていた。

「オークキングとクイーンだ。こいつ等のせいで集落ができて繁殖していた。逃げ回っていた奴を見かけるかもしれないが、しばらくは平気だろう。よし、被害状況を報告しろ」

 被害状況を聞いていたら、担ぎ上げた女戦士の足首の捻挫から、棍棒で殴られて骨折、釘バットの剣が刺さって腕が上がらないまで様々だった。

 そしてひどい奴には、ポーションと思われる物が支給され、飲んだり振りかけたりしていた。

 死亡者は出なかったみたいだ。よかったよかった。

 その後はPMC装備に戻し、ベースキャンプの片づけをしたりしてから街に帰った。

 ってか撤収が早い……。集落を落としたのが思ったより早かったのか? まぁいいか。


 ってかさ、見た目が同じなんだけど、キングとクイーンなんだよな? 腰布みたいなのでも外して確認したの? 頭の骨格が違う? どう見分けてるんだ? 謎は多いな……。

緩い銃説明

M1216 筒の中に弾が四つ入り、それが四つ束になっているので合計十六発撃てる。引き金をひけば撃てる。

弾の使い分けも簡単にできる。

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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