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第11話 豚狩りとパーティー 後編

 ゲームでも叫ぶだけ叫んで、思い通りに行かない相手に熱いラブレターを送ってくる奴がいるが、送った奴に無視されて運営に通報か、一対一で戦ってボコボコにされて、名前を消して動画サイトに投稿されてさらし者にされてるかだ。だから時と場所と場合(TPO)をわきまえてるつもりだ。

 ちなみに俺は全無視だったけどね。

 銃を一切持たないで、囮になって味方に殺させるスタイルは結構珍しいらしく、よく熱いラブレターをもらっていた記憶がある。

 スクリーンショット( S S )付きで日本の掲示板に晒された事もあるが、対戦した人達からの書き込みで盛り上がったのを見た事もある。


 あいつは絶対真っ先に敵の航空機を落とす。撃たれてても関係なく落とす。航空機が落とされなければ弾がないだけ。

 アレは劣勢な場所に駆けつけるか、激戦地に飛び込む馬鹿。キル数は殆どゼロだが、点数的にはほぼ上位にいるから仕事はしっかりしてる。

 一作目から盾を使ってるって聞いた。銃を持ってたらレアだからSS撮っておけ。それと、地味に盾の使い方が上手いから、参考にしたければ対戦後に見れる、対戦中の奴の視点とかを参考にしたほうが良い。初心者でも視点の動きと、立ち回りは参考になるから一回は見ておけ。

 味方にいれば心強いが、敵にいたら厄介の一言。ノリはいいから後ろにいると、絶対にこっちを守ろうとしてくるからキルが稼ぎやすい。利用したいならしたほうが良い。ってか利用されると、銃持ちが倒しにくくて厄介。俺は両方経験した。


 結果的に、味方なら文句は出ないし支援特化だから、ある意味気配りができるいい奴。敵なら文句を言いたくなる目障りな奴。という結論になった。そして対策も練られ、最低三人以上で弾をとりあえず撃ちまくると言う結果に落ち着いたっぽい。それでも盾で弾を防いで時間を稼ぎ、数人くらい仲間が撃ち殺すんだけどね。


 ってな訳で、味方を守る事に関しては長けていると思っているが、隣で剣や斧を持った奴の守り方を教えて下さい……。

「あまりパーティーを組んだことがないからな……、自信はないぞ? それに味方に魔法が当たると嫌だから、地味なのにするぜ?」

「それだけ堅牢なら、それでも問題ないぜ。おっさんに任せて俺達が豚を殺す。そうすれば楽して稼げる。皆もそれで良いか?」

 鎧を着込んだ調子の良さそうな男がそういうと、賛同の声があがり、俺は前衛のタンク役をする事になった。

「んじゃ、その辺をうろうろするけど、俺はリーダーをやらないぜ? さっきも言ったが誰か仕切ってくれ」

 そういうと、魔法を使いそうな男が名乗りを上げた。

「俺がやろう、裏からの方が見えることも多い」

「一応纏まったな? なら動くぞ?」

 俺は自動小銃をしまい、いつもの自動拳銃に持ち替えて盾を持ちやすくした。


 しばらく歩くと、森の奥の方からオークが二匹歩いて来たので、俺は走り出し、真っ先に前に出る。

 そしてオークと対峙したら、盾で思い切り殴りつけ、よろけたらもう一匹の方に盾ごと体当たりをぶちかまして吹き飛ばし、銃を抜いて最初のオークの膝に四発ほど撃ち込む。

 そして、吹き飛ばした豚の両膝に四発ずつ撃ち、オープンホールド状態の銃を一度手放してから、盾の縁を右手で持って豚の胴体に叩きつけからアンカーを打ち込み串刺しにする。そしてブラブラしている銃をつかんでマガジンを交換する。

 そして一匹目の方を見ると、前衛が剣や斧で切りかかっていたので、もう一度マガジンを交換して、弾を十二発プラス一発にして胸のホルスターに戻しておく。

 癖でダブルタップという、引き金を二回引く射撃方法が身についてるので、弾は奇数の方が管理しやすい。二発六セットでマガジンを交換すれば、弾切れ状態のオープンホールドにならないからな。

「おっさんのおかげで後衛の出番がないな。皆には悪いが、もしもの時の為に魔法はしばらく控えさせてもらうぞ」

 臨時でリーダーになった男は確認するように言い、俺を含む前衛達はそれに了解した。

「なぁ、前から思ってたんだけどよ。魔法って使いすぎるとどうなるんだ?」

 俺は少し魔法の事で気になったので、なんとなく敵を倒してから聞いてみた。

「えぇっとですね、ものすごく気怠くなります。最悪無茶すると気絶しちゃいますね」

 そして後衛の、小柄な女性が説明してくれた。

「回復する手段は?」

「魔法を使わない、休憩をする、コレしかない。だから後衛は順番で魔法を使うか、前衛が倒せるなら使わないで、温存が定石となっている」

 今度はリーダーが説明してくれ、魔法は多少使い勝手が悪いと判断した。

「そうか、詳しく教えてくれて感謝する」

 そう言って豚に刺さりっぱなしの盾を回収し、左肩のナイフで鼻をそぎ落とし、弓を持っているスカウトに投げて渡した。

「おっさんのスタイルは面白いな。シールドバッシュがメインってそんなにないぜ?」

「これで長年やってきた。今更変えられないな」

 ゲームではシールドバッシュで転ばせることはできないし、物陰に隠れるために寝転がってる奴にくらいしか、盾を突き立ててアンカーを刺すことができない。こっちではそれがやりやすくていい……。

 強化アーマーの質量で、こっちでは簡単に転ばせることができる。自由度があがりすぎだと思えばわかりやすい。

「渋いなー。極めるってこういう事なんだな」

「そんなもんじゃねぇよ……。さて、どうするよリーダー」

 俺は無駄話を止め、リーダーに指示を仰ぐ。

「……相談だ。奥に行くか、一旦戻るかだ。明らかに遭遇率が増えている。その事も考慮してくれ。俺は慎重に行きたい。他にも討伐組はいるから、俺達が無理をする必要はないと思う」

「そうですね。私も賛成です。ギルドでは数を減らす事が目的のようですので、私達でオークの集落を探したり、落とす必要はないと思います」

「そうだなー。おっさんもいるし、もう少し下がって安全な場所でやった方がいいだろうな。実際に大量のオークに襲われたからな」

「俺も賛成だ。さっきので矢を半分以上射ったから、狩りの終了予定時刻まで持たない」

 俺が入るからって、欲をかかないで安全に事を進めようとする姿勢。嫌いじゃないな。生き返れないかもしれないからこその意見だな。

 ってか蘇生ってあるの? ないなら注射器は考えて使わないとな。ウェスに使っちゃったけど!


 そして俺達は一旦森の入り口を目指し、移動することにした。一応俺が後ろを守ることになった。理由は簡単だ、森の奥側だからだ。

 足が遅かったから、常に味方の後ろを走っていたが。味方の後ろを守る事は数えるほどしかない。広いフィールドで、偶然後ろを取られることは少ないからな。

 そして、オークが現れたら、鎧を着た前衛が足止めをしている間に、足の遅い俺が走っていき、膝に弾をぶちこみ盾で殴って転ばせ、味方が剣か斧で処理をする。

 転ばせたら、俺の仕事はほぼないので周りの警戒をするが、弓を持っているスカウトらしい男も警戒してくれている。ありがたい事だ、警戒の目は多い方がいい。

 そして森の入り口付近で一旦休憩を入れ、森に十分くらい入った場所で、欲を出さず少数を相手に豚を狩りまくった。


「いやー、おっさんのおかげで今日は助かった、死を覚悟したからな」

「本当だ。あそこにいなかったらどうなっていた事か……」

「本当です。おっさんありがとうございます」

「いや、こっちも仲間がいる時の動き方を学べてよかった、感謝する」

 あの後はギルドから出ている馬車で帰り、集計中の合間に雑談し、とりあえずまた縁があったらって事になった。

 五人二組だと思ったが、三、三、四のパーティーだったとは驚きだ。ランク3って書いてあるから、そんな数だったんだろう。危険だな……。

 そして、ドミニオンズさん達のパーティーをギルド内で見かけたが、とりあえず無視しておいた。今は触れない方がいいだろうからな。

 ちなみにオークリーダーの鼻が三個あり、かなり高値だった。あの力と知能じゃそうなるか。



「戻りました」

「あぁ、お帰り。今日は早いんじゃない?」

「ギルドで馬車が出てたからな、ギルドが閉まる前に着いた。ちょいと早いですがそろそろ風呂が開くので行ってきます」

「はいよ」

 仕込み中のグリチネに軽く声をかけ、俺は風呂に行き、戻ってきたら早めの夕食を食べ、店の手伝いをする。

 そして店が終わったら、余り物の食材を調理してもらい、一日の終わり様のスイッチであるビールと、つまみを食べる。

「スピナっていつも麦酒一杯よね」

「あぁ、一日の終わりに区切りをつける儀式だからな、今日はこれ以上働かないって意思表示だな……。確か前にも言ったっけ?」

「なんとなく覚えてるわ」

 俺はビールを飲み、肉入り野菜炒めを口に運び、グリチネはニコニコとしている。

 小さな幸せって感じがする。

「そう言えばウェスが来たり、嫌がらせはないか?」

「驚くほどないわね、約束は守ってるんじゃないかしら? それかこれ以上、スピナからの評価を落とさないようにしてるか……」

「まぁ、あいつの事は嫌いじゃねぇからな。約束が守られてるなら、仕事は受けるつもりではいるさ。ただ、よくよく考えてみれば、城壁とかの石レンガを直す工事って、この街の税金から支払われてるって思ったら、少しヘコんでる」

「別に、まだ税が上がるとかは聞いてないね。ってかそんな事気にするタマだったとはねぇ」

 グリチネはニヤニヤしながらお茶を飲んでいる。

「俺のせいで税が上がって、みんなに苦しい思いをさせたくねぇからな。多少は気になるさ。あの時は頭に血が上ってて、そこまで気が付かなかった」

「なら今までの報酬の金貨を、公爵様の顔に投げつけるか、犬に渡せばいいのよ」

 あ、グリチネの中で、ウェスは犬固定なんだ。

 俺は残りのビールと野菜炒めを一気にかき込み、食器を渡す。

「ごちそうさん」

「はい、お粗末さま」

 そう言って、グリチネは手のひらから水を出し、食器を洗っている。

「なぁ、魔法の詠唱ってねぇのか? ポーターやってる時は何か言ってたぞ」

「ん? 魔族の魔法はイメージなの。こういう感じで出てくれって思いながら、魔力を込める。そうすれば出てくる。なんか阿呆みたいな魔法を使う奴が、この間出した酒を造ってる島にいるって話だけど、そんなの使ってよく気怠くなって気絶しないなーってところね」

「へぇ、だからグリチネは詠唱を使わないんだな」

 阿呆みたいな魔法で、そんなのって……、どんなもんなんだ?大魔法みたいなやつか?

「コレでも一応魔族だからね。スピナはどうなのよ?」

「あ? あー。コレは魔法みたいなもんだ」

「そうかい、便利だねぇ。それとさ……、今日は夜の魔法につき合ってくれれば嬉しいんだけど。どうだい?」

 気が付いたら食器を洗い終わっており、恥ずかしそうに目を逸らしながら煙草を吸っていた。

「あぁ、朝までコースじゃなければ問題ねぇぜ? できれば、三回くらいで終わらせてくれると嬉しいな」

「なら、前回よりかなり弱めってところね」

「前回が百なら、まずは十から試してくれ。足りなければ五で刻んでくれればうれしい……。その魔法は怖すぎる」

「そうね、激しいのは嫌いじゃないけど、お互い朝までは厳しいわね。あーあと当たる日は誘わないし、誘いにも乗らないから。そういうのは、お互い話し合ってからね」

 お互い鼻で笑いつつ、手分けしてランプの火を消して部屋に向かった。

 頼む、魔法は失敗しないでくれよ……。

緩い説明

ダブルタップ 引き金を素早く二回引く撃ち方。


盾のアンカー 実はパイルバンカーになる。エグイ

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作者が書いている別作品です。


長いので、気が向いた時に読んでいただければ幸いです。


魔王になったら領地が無人島だった

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