Episode.7 性別の審判
先生を救うために、肉体を女体化させた五人。セミ人間化から解かれた坂宮は、感謝を述べつつも内心女性になったことに疑問を抱いていた。そして血液検査を受けることになったのである。
5人は、坂宮先生の車に乗せられて病院に連れていかれた。
坂宮先生の車は、ホンダのオデッセイのホワイトパールをピンクに自家塗装した車であった。車の中も女らしさで溢れていた。
「あの?坂宮先生どこ行くんですか?」私……青山瑞季は、先生に聞いた。助手席に座ることになったからである。
「病院に決まってるでしょ?男から女の子になるなんて有り得ないから。」坂宮先生は学校の自動販売機で買ったウーロン茶を飲みながらそう言った。
「そりゃあ、まだ実感が無いんですけど、確かに女ですよ。声も高いですし、胸も膨らんでいて、その口に出して言えないモノも無いですし。」
「良い?血液中にY染色体が見られなかった事で初めて女の子になったって認められるの。そんな口だけで女になったって判断しないでよね。」坂宮芽依は、きっと何かの冗談だろうと思っていた。本当は男の子であり、魔法が醒めていないだけで、皆騙されているのだと思っていた。だからこそ、病院のような科学的施設で自分を安心させようとした。
そして車を運転して、医療法人社団野島会第一病院に着いた。
予約をしていなかったので30分ほど待たされた。
「5人とは、沢山連れてきたことよ。今回は特殊な事情があるっていうことですね。まずは、採血をさせていただきましょうかね。血液検査。何しろ女性だったら赤血球の量が男に比べて少ないからね。看護師さん。採血を宜しく頼んだ。」医師の橘誠也は、そう言うと機械の準備に向かって行った。
「採血なんて嫌だよ。」
「叶音。ここで逃げたら男じゃないぞ。」明日香がそう言う。
「男も何も、もう私は女じゃないの!」
「落ち着いて下さいね。痛くないようにしますから。」看護師さんは、直ぐに刺した。叶音は痛みで顔を驚かせていた。
「ちょっと、笑かすな……」明日香はそれを見て笑いそうになる。
「明日香さん。良いですか。針を刺しますよ。」担当の看護師が針を刺した。明日香は最初、なんてことは無いだろうと思っていたが、女体化の影響か痛みが増しているように感じた。
他三人も無事に採血を済ませた。
五人の血液を特殊な機器にかけて調べた。すると坂宮先生が想像もし得なかった結果が出た。
「そうですね。血液のデータを調べ上げましたが、血液に問題はありません。健康な血液ですよ。皆さん。」橘先生は笑顔でそう言った。
「あの赤血球の量はいかがでしょうか。橘先生。」坂宮は尋ねる。
「勿論。生理、医学的に言わせて頂くとですね。女性です。」坂宮は今起きている信じがたいことに言葉も出ないほど驚いていた。
「そんな、嘘ですよね?五人は今日の朝まで男性だったんですよ。」
「幻覚でも見てたんじゃないですか?確かに着ている服は男性用ですがね。不安なら子宮造影検査やりますか?明日以降ですけど。」橘はそう言う。
「お願いします。」坂宮は頭を下げた。
再び、地獄が始まろうとしていた。