クマの子ライと塔のトビラ
コンコン。
ライは、塔のトビラを叩きます。
「こんにちは!僕はクマの子ライといいます。よろしくお願いします!こっちは、リスのタロ。」
「タロです、こんにちは!」
いつものように元気にあいさつをして、元気に自己紹介をしたライとタロは、トビラが開くのを待ちました。
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待っても、待っても、開きません。
「なんだろう?」
「聞こえなかったのかなぁ?」
「寝ているのかも……?」
ライとタロは、もう一度、あいさつをします。
「こんにちは!」
「こんにちは!」
「ライです!こっちは、タロ!」
「タロです!こっちは、ライ!」
コンコン!コンコン!コンコン!
「こんにちは!」
「こんにちは!」
コンコン!コンコン!コンコン!
「……やかましいですわ……!」
「?!」
何度あいさつをしたときでしょうか。
開かないトビラの向こうから、声が聞こえてきました。
「冬の女王様ですか?!」
「他に誰がいるっていうんですの?ここに立てこもっているのは、冬の女王たるワタクシ以外にいるとでもおっしゃるのかしら……?ワタクシは、はらはら降る雪とヒシヒシと冷えた空気を司る冬の女王……。」
冬の女王様の声は、まるで冬の朝に張った氷のように、キーンと冷えきったものでした。
ライは尋ねました。
「どうして、冬の女王様は、ここに立てこもってしまったんですか?」
冬の女王様は、笑います。
「これは復讐ですわ。」
「ふくしゅう?」
「女王たちも、国の民も、冬のことなぞ忌み嫌っていますわ。毎日毎日冷え込む。雪は民の足を奪う。花は咲かず、作物も育たない。そんな季節を、誰が心待ちにするというのでしょう。」
冬の女王様の声色は、いっそう冷たさを増していきます。
「早く春が来ないかなぁ、そう言ってみんな、冬の終わりを願うのですわ……!そんな季節、果たして必要なのかしら?ワタクシはもう、この塔になんて来たくなかった。嫌われ、憎まれるために、季節を変えるなんてもう嫌だった。だから、みんながいよいよ冬に嫌気がさすように、ワタクシはここに立てこもったのですわ。」
まくしたてるように、冬の女王様は話します。
ライとタロは、じっと、トビラと向こうにいる冬の女王様のお話を聞いています。
冬の女王様の顔は見えませんが、ライはわかりました。冬の女王様はきっと、泣いています。
ライは、「お友達ができない」と泣いて母クマにお話したときのことを思い出していました。あのとき、ライも、「みんなきっと、僕とは遊びたくないんだ……。」と想像して悲しくなったのです。
涙が流れていなくても、冬の女王様のココロは、悲しくてさみしくて、シクシク泣いているのに違いありません。
ココロが、氷になってしまったのです。




