表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

クマの子ライとウサギのシャオリー

ハルナ山は、アカシロ山のとなりに立っている山です。

季節の女王様たちは、お休みのあいだ、ハルナ山で季節を楽しむと言われています。

なので、動物たちも、人間たちも、ハルナ山に近づく者はあまりいませんでした。誰もがみんな、女王様たちのお休みを、邪魔したくはなかったからです。

そんな風に、国のみんなと女王様たちは、互いの住む場所をわけながら生活していたのでした。


「さあ、もう少しで、アカシロ山の出口だぞ。」

タロは、ライの背中から言いました。

「道案内ありがとう、タロ!」

「道もわからないのに、どうやってハルナ山まで行くつもりだったんだか、まったく!」

そう、クマの子ライは、アカシロ山から出るのは初めてだったのです。母クマから、山から出るとニンゲンがいる、ニンゲンは怖い生き物だ、と教わっていたからです。


そこへ、一匹の白ウサギがやって来ました。

「あれっ。そこにいるのは、タロじゃないかい?」

タロは、すばやくライの背中から降りて、白ウサギのほうへ近づきました。

「シャオリー!どうしたんだい、体が真っ白だ。君、茶色ウサギだったろう?雪の色に染まってしまったのかい?」

シャオリーと呼ばれた白ウサギは、笑いながら答えました。

「わたしたちウサギは、冬になると毛が生え変わって、真っ白になるのさ。わたしはこちらの毛色のほうが好きなんだ。柔らかそうな色だろう?」

「そうかぁ、俺は冬今時分はいっつも寝ているからなぁ。知らなかったなぁ。」

二匹はケタケタと笑い声を上げました。


シャオリーは、はたと気がついて訪ねます。

「そうだよタロ。まぁだこんなに雪深くて、寒くて、いつもだったら寝ている真冬だろうに。なんだってこんなところをほっつき歩いているんだい?」

ライは「あっ。」と、代わって答えます。

「春の女王様に会いに、ハルナ山に行くんです。季節を、冬から、春に変えてもらうために!」

「季節を変える、だってぇ?」

シャオリーは驚いて言いました。

「褒美でも欲しいのかい? あのお触れ。たくさんの人たちが挑戦したけれど、今もまだ季節は冬のままなんだよ。」

「いいえ、僕は、季節を、次の季節にちゃんと変えたいんです。それだけです。春のお花見を、お母さんと一緒に見たいんです。だから……。」


シャオリーは、「ふうん。」と言いながら、まじまじとライのことを見つめました。

「気に入ったよ。君、名前はなんて言うんだい。」

「ライといいます」

「ライ、ね。覚えておくよ。仲間たちにも伝えておこう。季節を廻らせるために、勇敢なクマの子が旅立ったと。いざという時には力になろう。」

ライは、ぱぁっと顔を輝かせて、言いました。

「わあ!ありがとうございます!」


「でもねぇ、ライ。忘れないでくれよ。」

シャオリーは念押すようにライに言いました。


「わたしは、白い毛でいられる冬が一等好きなんだ。冬がいつまで続いてくれたっていいんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ