おしまい〜クマの子ライとステキな友達〜
こうして、国の季節は再び廻り始めました。
アカシロ山の動物たち、ライの母クマも冬眠から目を覚まし、いつも通りの春がやって来ています。
ライもようやく、母クマとお花見をすることができました。
「お母さん、今年の桜も、とってもきれいだねぇ。」
「ライ、あっちに、梅も咲いているわよ。」
「あっ、ほんとだ!」
ライが、梅の花のほうへ駆け出したときでした。
「おーい!」
声をかけてきたのは、リスのタロです。
「お客さんだよ、ライ。」
タロの後ろからやって来たのは、春の女王様です。
「こんにちは、ライ。そして、ライのお母様。」
「春の女王様!こんにちは!」
「あらっ。春の女王様!こんにちは。」
「その節は、本当にお世話になりました。」
母クマは、あらっ?と首をひねります。
「女王様が、こんなところまでやってきていいんですか?」
春の女王様は、ふふっ、と笑いました。
「ルールが、変わったのです。ね、ライ、タロ。」
ライとタロは、顔を見合わせて、キャッキャと笑いました。
・・・・・・
あのあと、冬の女王様と春の女王様を交代させることができた……ということで、王様から連絡がありました。
「お触れの通り、褒美を取らせる。なんでも言ってみよ。」
「うーん、うーん。」
2匹は頭を抱えてしまいました。
なにしろ、褒美がほしくて頑張ったわけでもないのです。それに、2匹だけのおかげで、冬の女王様が出てきてくれたわけでもないのです。
「あっ、そうだ!」
・・・・・・
「それで、ライは、女王様たちに相談して……。」
「女王様たちが、自由に国の中をお散歩できるようにって、お願いしたんだ!」
そうなのです。
ライとタロは、国のみんなのため、女王様たちのためになる「褒美」を考えました。
今のルールだと、女王様は、お城の塔に入ったら季節の間出てくることができません。
その季節でないときも、いつもハルナ山にこもって、外に出ることもありませんでした。
ライとタロは、言いました。
「お外を自由にお散歩できるようになって、いろんな人たちとお話をしたら……。このあいだの冬の女王様みたいに、みんなに嫌われてるのかもって、悩むことはなくなるよ!」
「俺たちもまた、女王様たちとお話したいしね。」
「うん!だって僕たち、ううん、この国のみんなは、みーんな、お友達なんだから!」
「お友達、わたしのことかな?」
草のあいだから顔を出したのは、ウサギのシャオリーです。春を迎えて、毛並みはすっかり茶色に生え変わっています。
「あ、いつもの毛だ!」
タロはシャオリーに言いました。
「それでこそ、シャオリーって感じ!」
シャオリーは、じろっとタロをにらみます。
「ほんとやめてタロ。わたしは白のほうが気に入っているんだから。」
ライはニコニコしながら言いました。
「どっちも似合っているよ、シャオリー!」
「あら♡ありがと♡」
「ライ……お前……。」
と、そこへ、後ろからわんわん!にゃあにゃあ!と声がしました。
「チャラ!それに、タカも!」
アカシロ山のふもとに住む、黒イヌのチャラとネコのタカでした。背中に大きなカゴをくくりつけています。
「お前らがちっとも降りてこないから、遊びに来てやったぞ。ほれ、サクランボだ、食え。ご主人様からだぞ。」
「きゃはは。今年のサクランボはうまいぞ。それにしても、春は外にいても、おこたつの中にいるみたいねぇ。あーあ、眠い眠い。」
「わあ、ありがとう!」
「ずいぶん、山奥に住んでいるんだなぁ。」
のしのしと歩いて来たのは、ハルナ山のふもとに住む農家、ゴンヌです。
「ニンゲン?!」
母クマは警戒します。
「大丈夫だよ、お母さん。こわくないよ。」
「あ、母クマさんですか、こんにちは。鍋ごちそうしたかったんだけど、もう温かくて、鍋物って季節じゃあないなと思ってね。山菜採れたんで持ってきたんだ。」
「わあ、ありがとう!」
「あらあら、ずいぶんたくさん、お友達が増えたのねぇ。」
母クマは、目を細くして言いました。
「うん!みんな、とっても優しいんだ!」
「ずーっと、あなたには、山のお外は危ない、出てはいけないと言っていたけど……。いつの間にか、1人で冒険して、こんなにたくさんのお友達を作れるくらいに、成長していたのね。」
春の女王様は、にっこり笑って、言いました。
「今度はみなさんで、ハルナ山へ遊びに来てくださいね。おいしいものを食べて、みんなで季節を楽しみましょう!」
・・・・・
こうして、国は無事に季節の廻りを取り戻しました。今の季節を満喫しながら、次の季節を心待ちにする。そんな人々のあり方は、これからもずーっと続いていくことでしょう。
めでたし、めでたし。




