1人目と2人目の召喚者①
1日を書き溜めておきました。とびとびではさっぱりになる気がします。
通路を進みやがて2階へ上る階段へとたどり着いた。
先を行くバジルは足を止め振り向きこうアリアに尋ねてきた。
「ところでアリアは救世主様方と親しいのですか?」
「え?」
アリアは反応に困っている様子。
「いえ。私などが親しいなど……。とんでもありません。」
Oh……。悲しいお知らせ。
「そうかい?先ほど会話が弾んでいたように見えましたけど。」
「デール国の歴史をお話し致しておりました。」
「ふーん。まぁいいでしょう。」
どういうことだ?許可か何か必要なのだろうか。
ラルゴは押し黙ってなんか怖いな。君はニコニコ顔でいてくれ。
「……バジル隊長、国王陛下が待っております。参りましょう。」
アリアに言われバジルは階段を上る。
それからほどなくして衛兵が二人扉の前に立ってる場所へと着く。
「ご苦労様です。救世主様方をお連れしたよ。」
「はっ。お通り下さい。」
衛兵は敬礼をして迎え入れる。
「アリア嬢はここまでです。」
バジルはアリアにそう告げた。
「アリアさん一緒に聞かないんですか?」
俺はそう尋ねる。
「はい。私はここまでのご案内となります。後ほどお迎えに参ります。」
敬礼のポーズをとり失礼します。と下がっていった。いや残念だ。
ノックをしバジルは扉を開ける。
「陛下、参りました。」
「うむ。ご苦労。」
俺とラルゴは後に続き入る。
部屋は会議室だろう。中央に長方形のテーブルが配置されている他、奥の壁には国旗が大きくかけてある。
デール国王、ミラ宰相他、2名が先に居た。
なんという威圧的な顔ぶれか。胃がきゅっとするぜ。
「始める前にご紹介します。」
ミラ宰相が2名を紹介する。
「まずこちらがデール騎士団団長のオーズ=ソルティ殿。」
オーズ=ソルティ。騎士団団長を張っているだけではある見た目。筋骨隆々で角刈りにしている黒髪、どっしりとした腰構えだ。殴られたら俺一撃だな。
「よろしくな。お二人さん。」
片方の拳を胸の前に一礼。
「童子切 安綱です。ヤスツナが名前です。よろしくお願いします。」
「ラルゴ=エクスです。」
俺達は頭だけを下げ一礼。
「次にこちらがデール騎士団副団長のホーラル=アムズ殿。」
ホーラル=アムズ。副団長か。顔は優しいおじさんって思えるが如何せん、坊主頭で眼鏡。この国で眼鏡仲間を見つけたが、怖い関係者に見える。団長ほどじゃないが首が太い鍛えて抜いてる。4発、いや5発で俺は沈むぜ。
「よろしくお願いします。」
こちらにも俺たちは挨拶をする。
「僕は挨拶済みではありますが、デール騎士団2番隊隊長をしております。」
爽やかイケメンで2番隊長。この若さで凄いな。
「1番隊隊長のネイラ=ホーラルは任務の為出ております。」
「ホーラルさんって。」
同じ苗字ってことは。
「はい、ワタシの妹です。」
妹さん!?兄妹そろって隊長って軍家系なのか。
「さて、それでは始めましょう。」
紹介が終わりミラ宰相は話を進める。
「お二方はこの国に来ていただいた理由については陛下より聞き及んでいるとの事で省略しますがいいですかな?」
「はい。確か1年後にくる『災厄を防ぐ』為ですよね。」
俺は返答する。
「そうです。ではお二人には今後についての話をします。」
いよいよ俺達がどう動くかがわかるのか。
「大きく分けまして3つ。1つ"災厄の調査"、1つ"その為の準備"、1つ"災厄を退ける"となります。」
「調査?調査も俺達がするんですか?」
0からスタートとか厳しくないかと疑問を提議。
「調査、準備については我々も全力で行います。その結果に次第で退けるの内容が違ってくるのです。」
「記録がないから現状予測がつかないってことですか。」
「そうです。もし調査の結果で我々だけで対処できるのならば、そのように準備します。また、我々の力だけでは対処不可能の場合、救世主様の力が必要になる事でしょう。そのように準備します。」
なるほど。仕様書作成の前段階の基本計画を立てなきゃいけないのか。かーっ!嫌になるね。
「要求はわかりました。どこをどう探せばとか調査方法について何かありますか?」
異世界に来て行き成り「はい探せ。」はないだろうと聞いてみる。
「調査方法ははいくつか検討してあります。」
良かったとホッとする。
「ですが――。その前にお二人に確認しておきたい事があります。」
雰囲気が変わった。昨晩の夕食の時の感じだ。
「陛下、宜しいですな。」
「ああ。遅かれ早かれだろう。もうあまり予言の時期まで猶予はない。」
そうデール国王が答える。
「実を言いますと我々は救世主というのには期待をしていないのです。」
「なっ!――それはあんまりじゃないですか!」
俺は言う。何しに来たんだよと。
「お二人の事ではないです。"救世主"ということについてです。」
俺たちは違うけど救世主は期待してない。どういうことだ。
「今回の"召喚の儀"は過去2回行っております。今回は3回目です。」
「過去3回って……。どういうことですか。」
「我々もギリギリまで待っていたのではないのですよ。事前に計画を練っていたのです。」
色々つっこんで聞きたいが今は一通り聞こう。
「1回目は100年くらい前と記録があります。計画では風化せずある程度の記録が保てるくらいの救世主の子孫を根付かせる目的です。」
「根付かせる?」
「ドウジギリ様も調査方法についてお尋ねになったのは異世界に来て日が浅い為、この世界を知らないから出たのではありませんか?」
見抜かれてた。
「ですので不便が無いようにこの世界で生きていけるところから始めようとしたのです。」
救世主の血筋ならこことは違う知識・力を温存できるしこの世界でも数十年単位で把握もできるって事か。でも1回目って言ってたし。
「ですが3代目でお家は潰れました。」
「潰れた……。」
「はい。今から50年前でしょうか。3代目が異世界の力を使い、賊まがいの行為をはたらきました。そして一つの村を滅ぼしたのです。」
村を滅ぼした?ゾワリとする。
「1回目の救世主はなんでもマテライズと呼ばれる不思議な力で火・水・風を自在に操れたそうです。」
魔法っぽいフレーズ。マジか。
「当主だった初代は我々に力を貸そうとしてくれたようで、2代目もそれに習うようにしてくれておりました。ですが初代がお亡くなりになった後で3代目が生まれ大切に育てていたそうです。」
「それじゃなんで。」
「そう、"大切"の度を越えたのですな。」
甘やかされた坊ちゃんは天狗になったか。
「意にそぐわないことは異能の力でねじ伏せるようになりました。最初は2代目が抑えていたそうですが抑えがきかなくなり、やがて父殺しと。」
絶句した。反発してそして手にかけちゃならないことをしてしまったのか。
「そこから行方不明となって数年。とある村に潜伏しているとの情報が入り我々は密偵を送りました。ですが誰も戻っては来ず。そこで先代達は精鋭10人を送りました。」
救世主は秘密の事でもあるのだ。1つの村に大軍を送るのはおかしいし、そこで選りすぐりの戦士を差し向けたのだという。
「そしてどうなったんですか?」
俺は続きを促したところ俺と向かい側にいたオーズ=ソルティ団長が話を引き継ぐ。
「精鋭は無事3代目を討ち取って戻ってきたぜ。」
俺はそちらに注目する。
「ただし……、7人と村一つと交換にな。」