デール国の建国史
国の成り立ちです。
路肩に停車中の馬車へ戻る。
「お待たせしました。時間大丈夫ですか?」
それほど立ってはいないはずだが御者に聞いてみる。
「余裕もって出てますんで大丈夫です。」
ちなみに3つもどうやって持ってきたか。
果実水も販売してる知恵だろうか、瓜をくり抜いて果実水を入れ、くり抜いたものを蓋の代わりにして針金でバネのように開閉できるようなっていた。
1つはラルゴの分、1つはアリアの分、1つは俺ではなく御者へ渡す。
「オレの分でいいんですかい?」
「待ってもらったしどうぞ。俺はあまり水分取らない方なので朝のミルクで今のところいいんですよ。」
「ありがとございます。いやぁうれしいですね~。御者への差し入れは初めてですわ。おっ、オレこれ好きなんですよ。」
これは本当の事だ。普段でもあまり飲まない。あの腹がちゃっぽちゃっぽするのが心持しんどい。
馬車へ入り手渡す。
「ヤスツナありがとー。」
「ありがとうざいます。ドウジギリ様。」
「これ甘酸っぱくておいしーね。」
笑顔のラルゴにこっちも顔が緩む。
「すみませんわざわざ。」
コクコクと飲むアリアにさっきの慌てぶりを聞いてみる。
「ミラさん、どうかしたんですか?体調というかなんか変な慌てぶりでしたよ?」
瓜型水筒を両手で抱え膝に置いたアリアは眉間に皺を寄せて言う。
「私情ですので大丈夫です。すみません、お気遣いいただいたのに。」
頭を下げられた。深く詮索しないほうがいいのだろうか。
「そうですか。何かあったら言ってくださいね。」
俺はそう話を終える。
「そういやラルゴ君。店で女助司祭さんに会ったよ。いやぁ助かった助かった。」
「えー?どうして。」
「はは、情けない話。それが財布無いの注文してから気づいてさ、どうしようかって時に颯爽とこれを。」
顛末を語る。颯爽というか声かけられるまで気づかなかったけどな。
「へぇーそんな事あったの。それじゃこれがこの国のお金?いろいろあるね。」
「ああ、今日にでも勘定や文字も教わっておこうと思う。」
「ボクも覚えるよ。」
しばしの小休憩を終え城まで進む。
馬車はここまでと城門へとたどり着く。堅牢な城壁と堅そうな門構えが印象的だ。
御者はまたお願いします。とカラカラと戻っていった。
アリアの後ろを歩く俺達。
「ドウジギリ様、エクス様ここでお待ちください。」
アリアが門と一体となっている受付で止まり門番とやり取りをしている。
「出入りも厳重ですね。誰がいつ入ったか記録するんですか?」
「はい。デール国は平定されておりますが、それでも賊がいないわけではありませんので警備を怠りません。」
なるほどねぇ。どの世界も一緒なのか。
「お待たせしました。では参りましょう。」
しばらく歩くといよいよ城へと入る。
「おぉ……。壮大。」
直球な感想がこぼれる。まさにこれが王城だというくらいだ。なんせ写真でしか俺は見たことがない。
赤い絨毯を進みながら俺は周りを見る。
ところどころにある花瓶と絵画が飾っているし、屈強な兵士達が巡回やらなにやらしている様子が見える。
「ラルゴ君の世界はこういう感じのお城なの?」
「そうだね。ボクの世界でも同じかな。」
ふむ。完全にお上りさんな俺は観光気分になってるな。
通路を進むと円状の噴水の真ん中に大きな銅像が立っている所に出る。
戦士の銅像だ。両手で剣を掲げている。
「あちらが初代国王様のデスト=デール様の銅像です。」
「ほー。どんな人だったんですか?」
国王が戦士の格好しているのに興味がわいたのでアリアに尋ねた。
「それでは少しこの国の歴史を話します。元々この国は様々な国に分かれていたそうですが、小競り合いが続いていました。それがやがて……。」
「大きな戦いに発展していったんだね。」
アリアの説明の後をラルゴが悲しそうに言う。
「はい。350年前にムーデル大戦と呼ばれる戦争が起こりました。権力・領土拡大を狙うモンド王が自国の民を無差別に兵士として送ることが拡大の発端となりました。姿は民、中身は兵士。誰が誰と疑心暗鬼にかられた人々は恐慌状態となったそうです。」
恐ろしい。お隣が突然攻撃してくるかもしれない、引っ越してきたあいつは敵国のスパイだった。なんてことがことが続けばどうなるかなんて想像しやすいことにな。
アリアの話は続く。
「そこでデスト初代国王様は立ち上がられたのです。自国の王でもあらせられたデスト様は鍛え上げた戦士達と一緒に先陣を切って戦いました。まずは積極的に説得、そして和解。無理とわかると攻め抜く。そして人死にをなるべく避け近隣をまとめました。次々味方が増えてこの地で終局とあいなったのです。」
「この地?ってこのデール国ですか?敵が攻めてきたんですか?」
俺はアリアへ質問する。
「攻められたのでは無く攻めたそうです。ここデールの地はもとは発端となったモンド王の領地でした。」
「自国じゃなく敵国に王城構えたんですか?」
「そうです。デスト王はモンド王を打ち取った後に生涯を改革に専念しました。恐怖政治で縛っていた国民と打ち解けるよう努力なさったそうです。流石にモンド王家と側近達は断罪としましたが。」
凄い話だ。味方となるなら全力で生かし、敵とあらば斬るか。
「この300年の平和を見るに大成功だったんだね。」
ラルゴの率直な意見。その通りだ。
「はい真に。王が変わっても結局はなんて話はよくありますからね。」
せっかくだし聞いてみよう。
「この300年の間に事件やら大きなことがあったりしなかったんですか?」
「デール国王家の方々は皆素晴らしい政治をなさっていますので歴史的な争いはありませんね。」
「なるほど。でも救世主を呼ぶ程の何かあったりしませんか?」
「そこなのです。歴史を紐解いても記述がないのです。ですが王家に伝わる碑文は存在している。ちょっとした謎になっていたのです。」
どういうことだろう。化物的な伝説が無いのか。
「ボク達がここに来た何かってこと?」
「そうそれ。煙の無いところで火は立たぬってな具合に大きな事あったんじゃないかなとね。話によれば後1年と聞いたけど、それにしては町は活気に溢れてる。」
「王家碑文ですので近しいものしか知りません。過去に何かあったのなら市民の間にも伝わっているはず。ですが実のところ噂ですら出ていません。」
「ふーむ……。」
まとめるとこんな感じか。
☆☆☆
1.350年前に大戦起こってデスト初代国王がこの地を平定
2.建国から現在までの間に歴史的大事件の記録は無い
3.王家碑文だから基本は知らない人の方が圧倒的に多い
4.また信憑性が高い王家碑文なため、何かは起こる可能性は高い
5.だが後1年なのに市民は騒がないどころか噂すら出ていない
6.碑文では300年後つまり昨日から数えて1年後に大陸を脅かす何かがあるとの話
☆☆☆
「あれ。350年から300年の間。その50年の間には何も?」
「そうですね……。デスト初代国王様は40才で建国しその後は息子のサス様とご一緒に改革に尽力したとの記録です。」
「うーん。300年も前だし記録に抜けがあるってのも大事件抜かすのもおかしな話だしな。」
「王家縁の歴史学者も都度研究はしているのですがこれといって。」 アリアは首を振る。
謎だな。と俺とアリアとラルゴは云々考えるが今は何も出ない。
そこへ声がかかる。
「アリアさん。そこにおりましたか。準備が整ったようですよ。」
長身の細身、耳まで伸びている金髪で爽やかな眼差し、アリアと同じ制服を着ている。なんというイケメン!
「バジル隊長。」
アリアが敬礼しイケメン、いやバジルと呼ばれた男が敬礼を返す。
「そちらが例の人達かい?」
「はっ。エクス様、ドウジギリ様です。」
「ふーん。お初にお目にかかります。僕はバジル=ムゥーワと申します。以後お見知りおきを。」
そう言いバジルは片方の拳を胸の前に当て一礼をした。
「どうも初めまして。ドウジギリです。」
「エクスです。」
ラルゴが一礼する。
おや?ラルゴが大人モードになったぞ。どういうことだ?
「では行きましょう。」
俺達はバジルについて歩き出す。