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最初の夕食と風呂場の吐露

町へは出ません!

 抑揚のない質問だ。

「いえ、失礼ながらまだお二人はお若いご様子。」

 俺は手に持っているナイフとフォークを戻し言う。

「俺達は突然召喚されて、その……」

――むしろはた迷惑だ!

 なんては言えない。なぜなら召喚をしたコット司教も同席しているかだ。せっかくの自己紹介の印象を下げたくはないし見知らぬところで敵に回す相手ではない。

 オブラートに包む流れにしよう。

「その、突然召喚されて混乱はしています。ですが、この国が未曾有の危機の予言があるということを国王様、コット司教様より聞きました。まだ何もわからない状況ですが、何かできるならなんとかしたいです。」

「ドウジギリ様。ありがとうございます。」

 コット司教よりお礼を言われたが、まだそんな気持ちにはなれないのが本音。

「それはそれは殊勝なお心がけですな。」

 グレゴル宰相は態度こそみせないが好感度はマイナスから始まっているようだ。なんだってんだまったく。

「コット司教、お二人に以前の事をお話しになられましたか?」

 グレゴル宰相はコット司教に言う。以前の事?

「いえ……。本日お越しいただいたばかりですので明日にでもと陛下と打合せ致しております。」

「左様ですか。ふむ……。」

 目を右上に考えているようだ。

「では明日再度お会いしましょう。」

 話しを切り上げ食事を始めるグレゴル宰相。俺は陰鬱な空気に最初の異世界料理をあまり堪能できなく終了した。


「デール国へお越しくださいましてありがとうございます。」

 表情は固いが帰り際にアリアさんから言われたのがちょっと嬉しい。クールビューティーなんつってな。


「ドウジギリ様。お料理はお口に合いませんでしたかな?」

 コット司教に言われて味を思い出す。

 食べる前は楽しみにしてたのに、場の空気というスパイスは大事だなというのが感想。

「いえ、おいしかったですよ。ラルゴ君はどうだった?」

「うん。おしかったよ。ボクはあの魚料理が何か気になりました。」

「それはよかったです。あの魚はブリューニュという種でここら辺の名物です。」

 俺は思い出して一通り言う。何がどの料理かなんて覚えてない。早く平らげるのに力注いだからな。

 しかしラルゴはああいうのも慣れているのだろうか。

「ドウジギリ様、エクス様。明日は城へ行きこれからを説明します。」

「わかりました。夕食ごちそうさまです。」

「ごちそうさまです。」

 俺とラルゴは部屋へと戻る。


「お部屋の前にだれかいるね。」

 電気がないので今はところどころにあるランプが頼りの暗さだ。

 あそこに見えるは女助司祭さんじゃないかと声をかける。

「夕食ありがとうざいました。どうしたんですか?」

「救世主様方。ご入浴の用意を致しましたのでご案内いたします。」

 風呂か。いろいろ突飛すぎたし今もやもやしてるしさっぱりしたいところではある。


「お風呂ー!」

 ラルゴ君転ぶなよ?いそいそと服を脱ぐラルゴに声をかけ俺も準備する。

 貴賓用なのか案内された浴場は5人入れる広さ。

 女神像が2か所に配置している。いいのか男湯だぞ。

 備え付けの洗い場へ移動。

「ラルゴ君、背中を洗ってあげようか?」

「いいの?ありがとう!」

 男同士の裸の友情を育もう。(よこしま)な感情ではないですよ!と女神様へ黙祷。

 聞きたいこともあるしな。

 石鹸を泡立ててラルゴの背中をゴシゴシする。しかし体の線が細いな。

「なあラルゴ君。」

「ん~?」

「夕食の時俺はこの国のためにとか言ったけどさ。実際のところそんな気持ち無い。突然この国へ来て、しかも『貴方は救世主だ』なんて言われてもさ。力もない平凡な人なんだよ。」

 自身を卑下することになるが25年生きていると程度が見え始めている。

 8才の少年にネガティブ発言はどうかと思うが数時間の付き合いだがこの少年には言えそうな気がした。

「ヤスツナ。それはボクも同じだよ。」

 鏡越しに見やる。

「ボクはまだ子供。特別なことはできないよ。父上からも母上からもまだ巣立てない。」

「いやでも、君はヴァステリオンも使えるし物怖じしない強さだってあるじゃない。」

「フフフ、ヤスツナ。ヴァステリオンは父上から見せて頂いている最中にこっちにきちゃったって言ったでしょ。」

 あっ。そうだったな。

「それに、ここ2年くらいそういう集まりとかはボクも連れられてから慣れちゃったんだ。」

 2年前、6才からの経験則、驚きだ。

「母上はお姫様、父上に嫁いできたから元お姫様かな。現在のエクス家の領地は父上の代から始まったの。だから近隣の貴族様や領主様からはあまり印象が良くないんだ。」

 ぽっとでの成り上がりに冷たいという事か。

「でも領民から慕われてるしデモネーダーとして困った時は近隣まで駆けつけるんだよ。」

「すごい父さんだな」

「うん。憧れてるの。父上から『相手に隙を見せるな、真意を見抜け』と言われているからボクもそう努力。」

 なるほどやはり教育のたまものか。

「だけどボクは何もしていない。まだまだこれから頑張らなくちゃ。それに思うんだけど本当は父上がこっちに来るはずだったんじゃないかな……。」

「えっ?どうして」

「ううん。思っただけだよ。」

 ラルゴは首を振る。

「へくちっ!」

 おっと手が止まってた。ザバーっと湯をかけてる。

 ボクも背中ゴシゴシするよの提案は今度にしてラルゴを先に湯船へ移動させた。

 俺も体を洗い湯船へと浸かる。

「ふひぃー……。」

 声と空気が肺からでる。体が浸かっているという合図だ。

「ハハハ、変なのー。」

「あれ風呂に入ると言わない?」

「言わないよー『ふひぃー』なんて。」

 コロコロ笑うラルゴを見て安心した。大人の様子を伺わせる表情をするのと反対に無邪気に戻ってる。 やっぱこっちがいいよ。


 ひとしきり異世界初風呂を堪能して脱衣所へ戻る。

 そういや変えの下着どうするかと思っていると扉越しから声をかけられた。

「救世主様。お着換えをお持ちしました。」

 女助司祭さんの声だ。

「あ、ありがとうございます。」

 俺はタオルを巻いて扉を開け衣類を受け取る。準備がいいな。

 部屋にあった寝間着と共に受け取った下着に着替えてみるとサイズもぴったりだった。わかるものなのか。

「ではお休みなさい。」

「おやすみです。」

 部屋まで戻りスッと女助司祭さんは廊下に消えた。


 部屋のランプを消して床につく。

「明日から大変だな。一緒に頑張ろうなラルゴ君。」

「うん。頑張ろうねヤスツナ。」

「あぁ、お休み。」

「おやすみなさい。」


 直ぐ寝入ったようにラルゴの小さな寝息が聞こえてきた。

「明日から本番か……。どうなることやら。」

 ふと思う。ラルゴは稽古の途中だったと記憶していた。

 そういえば俺はどの時だ?思い返そうとしても記憶が出てこない。

 スーツ姿だから出勤していることは確かだ。ラルゴはヴァステリオンを持っていたが俺はカバンとか携帯電話は持ってきてない。一種の生命線、眼鏡くらいだ。

 記憶喪失にしたって俺自身の事はいつでも思い返せるし昨日みた番組も日付も出てくる。

「……。」

 言い知れぬ不安が暗闇の乗じてかぶさる。

「だめだだめだ。明日に響く。寝よう。」


  ***


 夢をみている。

 いつも通りの朝。

 俺は簡素な朝食を準備する。冷凍おにぎりを電子レンジで温め、インスタント味噌汁にお湯を注ぐ。

 スーツに着替え、カバンを持ち、家をでる。

 自転車通勤をしている俺はいつもの時間にいつもの場所を通り会社へ着く。

――おはようございます。

――おはよう。

 挨拶をしてデスクへ座り今日の予定を思い描く。

 午前の部を終え昼休憩になる。

 会社を出ていつもの食堂へを足を運ぶ。

 いつもの日常、いつもの日課、いつもの午後がやってくる。

 なぜだろう。いつもとは違う場所へ行きたくなった。

――あんな所に公園があったのか。

 別に今の環境に不満があるわけではないし(すさ)んでもない。

 なんとなく惹かれるようにベンチに座り上を見てボーっとする。

 そして何となく後ろに頭を反らすと、そこには――。


 黒い何かが居た。


  ***


「うわーーーーー!」

 自分の声で起きてしまった。動悸がする。

「ど、どうしたの?」

 先に起きていたラルゴが心配そうに声をかけてくる。

「いや、変な夢みちまってな。ハハハ、自分でびっくりしちまった。」

 なんだあの夢は。寝る前に不安を抱えたから眠りが浅くなったか。

「大丈夫?顔が青いよ?」

 大丈夫。大丈夫。と声をかけ、起きだすことにした。

 顔でも洗うかと思ったところでノック音。

「はい。どうぞー」

 ラルゴが扉を開けると女助司祭さんが立っていた。

「おはようございます救世主様。よくお休みになられましたか。」

「ははは、いやぁまぁほどほどに。」

 とりあえずそう答えることにした。

「洗面所にご案内致します。どうぞこちらへ。」

 ナイスタイミング。シャキッとしたかった。


 各種道具は同じだなと洗面用具を見て思う。

 濃くはないがヒゲ反りが欲しい。さて電動はないが……。

「こちらをお使いください。」

 スッと差し出された剃刀の柄を向けられる。

「うおっ。」

 これで剃れというのだろうか。しかし基本T字なので使ったこと無い俺は困惑。さて困ったぞ。

「……。こちらへお掛け下さい。」

 椅子へ座り何事かと思っていると後ろへ頭を倒された。。

「あのー?」

「失礼します。」

 キランと刃が光る。

「!?」

 俺は顔が強張った。な、なにを。

 ジョリ…ジョリ…。

 なんてことは無い。ヒゲ剃りをしてもらった。

 最後に蒸しタオルまで準備していた俺はとてつないスッキリだ。

「すみません。ありがとうございました。助かります。」

「いえ。ご朝食の準備をしておりますので昨夜の食堂へお越しください。」

 スッと下がっていった。

「いやびっくりした……。」

「ボクもヤスツナの最後かと思っちゃったよ。」

 おいおいラルゴ君。始まって1日目で終了宣言はないだろう。

 

「よっし!シャキッとしたところで朝食をいただきこうじゃないか」

 俺とラルゴは食堂へと足を運んだ。

次はお城へ行きます。

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