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幸せになりたい。  作者:
1 出会いと秋
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 カーテンの隙間から朝日が射す。


「んんん…」


 眠たさと眩しさを感じながらも、ベッドを這いずりながら起き上がる。

 まだまだ寝たりないが、することがそれなりにあるから遅くまで寝られない。

 (レイさんから貰った)寝間着から、(レイさんからのおさがりの)普段着に着替える。大きすぎてだぼだぼするから裾を縛って、めくって着る。

 …別に着たくてレイさんの服を着ているわけではない、女物の服が一着もこの家にないからだ。


 ははは、あっても着たいとは思わないけど…

 だって、一人暮らしの男性の家に女物の服があるって、特殊な趣味か昔の女の残した物って感じだよね。うん。


 あの時、泣き疲れて話し終わったらそのまま寝てしまい、次の日お風呂(シャワー)に入るも、着替えがない…ということになり、急遽レイさんの服を借りることに…


 そんなこともあり、買い物ついでに服を買ってくると言い、昨日の早朝にレイさんはこの家をでていった。今日町から帰ってくる予定だ。このぶかぶかで裾を縛って着るおさがりも今日まで…ふふふ、この世界の女性の服ってどういうのなんだろー楽しみ!それにレイさんも帰ってくるし、気合を入れてお仕事頑張ろう!









 あの同棲生活を提案されてから、4日経つ。

 私が泣き止んでから、ここで生活する上でやること、守ることを色々話し合った。

 私がやることは

1、家のお掃除

2、薬草の採取の手伝い

3、川からの水汲み

4、畑のお世話

 部屋の掃除は叩いたり掃いたりで比較的簡単だからいいんだけど、その他が大変なのよ…

 薬草はレイさんに指導してもらいながら一度やったが、薬草の見分けが出来なくて、レイさんに青筋を立たせるほどやばかった。何も言わなかったけどとてもやばかった。そして、薬草を覚えて一人でも薬草を採取できるようになれと言われた。いや、あんた見てたろ?私この仕事(薬草採取)向いてないっすよ。

 あと、水汲みは飲むときとか、畑仕事とか、料理のときにするけど…うん、腰やばいね。ヘルニアになりそう。

 畑仕事は朝と昼、夕方、それぞれ必要なときに水を撒いたり雑草を抜いたりするけど…うん、腰やばいね。狭窄症になりそう。

 そんな仕事中、癒しをくれるのは動物!餌やり!兎とか鹿とかが来るんだけど、特に私が推しているのは熊です。もう、まじかわいい!!初めて見たときは死を覚悟したが、もう、かわいすぎ!あのつぶらな黄色の瞳、触ってみるとモフモフな白い毛並み…獣臭いけど、我慢すれば最高!

 餌をあげると、お礼に魚をくれるのも好ポイントだよ。うん。等価交換の概念知っているのかな?

 そのことをレイさんに言ったら驚かれたけど、なんでだろう。ファンタジーな世界だし、動物が危険でないことも物をくれることもありありな感じがするのだが…深く聞こうとするとはぐらかされる。謎。


 まぁいい、とにかくレイさんが居ない分、家事はたくさんある。帰ってくるまでに掃除は終わらせたい!


 そう意気込んで、部屋の隅に掛けられている箒に叩きを持ち、掃除を始める。

 埃はあまりないが、土足だから土が部屋に異様にあるように思える。やっぱり土足はやだね、玄関で靴を脱ぎたい。裸足でぺたぺたしたいなー。靴は履きっぱなしだと水虫になりやすいっていうし。


 そんなことを考えながらも真面目に掃除をし、リビングを掃き終えたら台所、廊下、各部屋を叩き掃く。

 でも、レイさんの部屋と、廊下の突き当りの部屋は掃除しない。入ってはいけないと言われているからだ。


 …私が守ることは3つある。

1つは森へは一人で行かないこと

2つ目はレイさんの部屋と、廊下の突き当りの部屋には入ってはいけないこと

最後は魔法を使わないこと

 森はオーク(襲ってきたのはやっぱりオークだった)だとか、魔物がいて危険だから。この家の周辺は精霊が守ってくれていて、大丈夫らしい。なので川までの道程(歩いて5分)はOKだが、それ以上はだめなのだ。レイさんの説明で精霊って超気まぐれなイメージを持っていたんだけど、案外いいやつなのかもしれない。

 入ってはいけない部屋については説明が何もなかったけど、…まぁ、誰にでも人に知られたくないことの一つや二つはあるよね。

 そして魔法の禁止。魔力を感知されるかもしれないっていうのを想像していたんだけど、そうじゃなくて、むやみやたらに使うのは身体によくないからだそうだ。それと、今まで魔力を使ったことのない身体だからなにか不具合が起こるかもしれないから禁止となった。まぁ使い方わからないから心配いらないと思うけど。


 最後に玄関を掃いて外に土埃を掃き出してお掃除終了!!

 やりきったぜ…

 ふぅとため息をつくと同時にぎゅるるるとお腹がなった。

 うん、朝ご飯食べよう。


 川で手を洗って水を汲む。腰がつらい。

 家の裏側へ水をもっていき、タンクに水を入れる。魔法できれいな状態で水が使えるけど、なくなるたんびに川から汲んでこないといけなくてめんどい…井戸ねぇんか。

 スープを作ろうと思ったが、疲れてやる気にならない。もう、今日の朝ご飯はパンにブルーベリーのジャムを挟んだやつ!

 質素だけど、昼はちゃんとしたの食べるからいいんだよ!



 パンと動物にあげる餌(パンくずと野菜)を持って庭に行く。

 レンガが積み重なっているところに腰を下ろす。


 疲れるわーデスクワークと違って動き回るからなー

 ジャムうまー


 パンを食べながら過ごしていると、向こうの茂みが揺れた。

 そしてガサッと音を立て、飛び出してくる。


「いらっしゃーい」


 飛び出してきたのは白い兎と茶色の兎だった。思わず顔がデレデレになってしまう。とすとすと草を蹴ってこちらにやってくる姿がたまらない…


 一定の距離になると寄ってこなくなる。

 まだ触れ合って日が浅いからだろう。レイさんには顔が危ないからだと言われたけど、そんなことはない。はず。

 そこで、かごに入れておいた餌を兎たちのいる方へ蒔く。次第に距離を詰めていく作戦だ。


(ふふふふ無防備に近づきやがって…)


 足元までやってきた。触ろうとすると逃げてしまうから、しばらく餌を食べさせることにする。いつか慣れてくれたら熊みたいにお腹に頭を埋めたい…と思っている。

 今日は兎しか来なかったなー


「んーエサなくなったよ~森へお帰り~」


 しっしと手を振るが、逃げない。

 これはもしや?と思い、そーーっと頭を撫でようとした。

 だが、撫でようとしたとたんにピューーーンと逃げられた。


(はははは、分かっていたさ、分かっていたさ…)


 気を取り直して、畑に水を撒く。たまに雑草を抜いて、きれいにする。

 これで大体お昼近くになるんだけど、そう思って窓からリビングに置いてある振り子時計をみる。11時ちょっとだ。


「お昼なににしよー…」



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