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(…どう答えよう…)
もう素直に「別の世界から来ました☆」って言いたいけど、頭おかしいんじゃないのって思われそう。私なら思う。
だからと言って、嘘をつくのはいつかボロが出そうだし、この世界についてまだ知らないことがたくさんありすぎる。
それに、理由はどうであれ、助けてくれた人…レイさんに嘘をつくのは道徳的にしちゃいけないと思う。
じゃあ、素直に話す?…いやー無理だ…
つい俯いてしまう。
正直に話した方がいいと思うが、信じてもらえなかったとき、私はどうすればいいのだろう。今までの話を聞いていると、この人以外の前にいることは危険なのだ。だから人里に向かうことはできない、一人でこの世界で生きることも不可能だ。なら、本当のことを言わないで、ここに居させてもらえるように頼むべきなのか?でもそれは、助けてもらったのにそんなことをしてもいいの?
私は、こんなに情けない性格だったけ?
今まで、どう生きてきた?
わたしは_______
「おい」
頭を上げると、そこには怪訝な顔をしたレイさんがいる。
ずっと黙ったままだったからね、なんか話さないと。
そう思うが言葉が出ない。
一度開いた口を閉じる。
そんな自分が情けなくてまた俯いてしまう。
「はっきり言え」
苛立ったような声がする。しかられたような気持になってしまい、思わず身を固くする。
静かだった空間を切るように話始めた。
「ただ黙っていられても何もわからねぇんだよ。
お前がどこの誰だろうと、俺が助けたんだ。死にたくて森に入ったなら有難迷惑だろうが、そうじゃないんだろ。死にたい奴はあんなでけぇ声で喚いたりしない。生きたくて、しょうがなかったんだろ」
(うん…あと悔しかった)
「普通の奴だったら助けん、助けても町に送ってけばそれで終わりだ。でもお前は違う。町に行けば普通のように生きることができず、最悪生き地獄を味わうことになるかもしれない。…黒を宿す人間の人生は最悪だ。本当は関わらない方がいい存在だ。
だが俺にはお前と同じような奴に恩がある。助けてもらった恩がな。もう何も返すことができないが…せめてでも、そいつと同じ立場の人間を助けるって決めてるんだよ」
俯いていた顔はいつの間にか上がっていて、レイさんから目が離せない。静かに、心強く私に話してくれる。
「何言っても信じてやる、助けになる、だから話てみろ。お前はどこから来たんだ」
…なんだかな、ここまで言われるとこっちが恥ずかしい。言っていて恥ずかしくないの?すごいよ。
でも、さっきまで悶々と悩んでいたのがあほらしく思えてきた。
どうせなら言っても後味が悪くないように本当のことを言おう。
それでと話すのは緊張する。まるで大勢の前で話すように緊張して、手先が震えている。
だからそれを抑え込むように両手を強く握る。言うんだ、
「あ、の信じてもらえない、かもしれないんですけど…」
か細い声しか出ない。
「わたし、気がついたら、この森の中にいて、わけがわからなくてっ…わたしは、この世界の人間じゃないっ別の世界から、きたんです」
話し終えると、レイさんは目を見開いた。
「…召喚されたのか?」
「はい?召喚?」
「…」
レイさんは手を顎に置き、何か考え込むようにして、黙ってしまった。
(いや、説明してくれ〜)
は、話しづらい…
定番の話のネタとして、今日はいい天気ですねっていう?
いや、窓から見える景色的に今日は曇りだ…使えねー…
何か切り出そうと考えていると、右の頬に手が触れた。
私の手ではなく、大きくてかさついた、レイさんの手だ。
…段々顔が火照っていく。これは照れて火照っている訳ではない、男性免疫が少ないからだ!
っあああああ、もう!なんなんだ!こっちはそんなに触れられることに慣れていない、純朴な女の子なんだぞっ!…26歳も女の子に入るっけ?
いや、そんなことはどうでもいい、昨日も頬触られたけど、これなんか意味あんの?この世界でのなんかのあいさつ?ジェスチャー?とにかく、恥ずかしいぃぃ!!
「っなんなんですか!昨日も触りましたよね!これ意味あるんですか?!」
(んぎゃあああああ!言っちまったよyou!でも超気になる!この行為に意味はあるのですか?!)
「いや、特にない」
「え゛?!」
もう驚くしかない、意味もなく触っていたのかよ。フェチか?フェチなのか?
「だが、昨日もそうだったが、あんたはすぐ青くなるから暖めてやろうと思って触ったんだが、」
意味あるじゃん。おっさんのフェチを発見してしまったと思ったわ…
「触ったとたんに顔を赤くするからな、おもしろいな」
にやりと笑い、頬から手が離れた。
……え、昨日の火照り顔も見られてたってこと?Why?
あぁ、そういえば、暗くても見えるんだっけ?仕組みはわからんが、便利だね。
ってそういうことじゃない!見られてたのかよ!ちきしょう!恥ずかしい!おっさんに辱められた!
この火照りには上限がないのか、まだ顔が赤くなっていく。
もう顔を見せるのが恥ずかしくて、手で覆い、テーブルに伏せる。
すると、くぐもった笑い声が向かい側から聞こえてきた。
おっさん、笑ってるな?
むかついたから、おっさんの脚を蹴るが、超硬かった。
流石ごついおっさん、強い…
「ぅっ」
思わず声が漏れたが、それが聞こえたのか、笑い声がさっきよりも大きくなった気がする。
性悪のごついおっさんを前に、私はただ早く顔の火照りが引くように、念じるしかなかった…