表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せになりたい。  作者:
4 別れと梅雨
45/48

42

(あ、なんの、音だろ…)


 聞きなれない高音が聞こえて目が覚めた。瞼は濡れていて、目を開くと水が当たった。


(…あー雨?)


 体に当たる水が雨だとやっと理解するほど頭が回らない。体が全て濡れていて、全身が水になってしまったような感覚がする。


(それとなんだろう、すごく気持ち悪くて痛い)


 濡れてしまったことが一因であるだろうけれど、それ以外にも何か原因があると確信できるほどの不快感と痛み。

 

(目がかすんでよく見えない…ポチ、ポチはどこ?)


 首を動かそうとするも、力が入らなくて重たい頭は少しも動かせない。


(なんにもできない)


 ポチはどうなってしまったのか不安で胸が一杯になる。

 私なんかのために危ないことをして、きちんとしからないと、それで、ありがとうって抱きしめてあげないといけないのに。

 考えることしかできない中、ひときは大きな金属音が聞こえた。


(さっきからキンキン音がする…何の音だろう)


 ぼやけた視界の中に、動くものが見えた。

 はっきりとは見えないけれど二つの何かが動いている。


(わかんない、こわい)


 怖くて、寒くて、気持ち悪くて、不安で痛くて震える。

 何もできず、体の奥から熱が徐々になくなっていく感覚だけがはっきりとわかる。


(なにもわからないまま、しんじゃうのかな)


 なんだかそんな気しかしない。


(レイさん、レイさんに会いたい)


 いつもみたいに不安でいっぱいな私を抱きしめて欲しい。

 レイさんがいれば何でも解決してくれる。

 こんな意味のわからない状況もどうにかしてくれると勝手に思ってしまう。


(ははは、レイさんレイさんってばっかりだな私、)


 頼りになるから好きになり、かっこいいから恋をしたなんてほんと単純。


(だからレイさんに好きだって言えない)


 言ったところでレイさんの負担にしかならない、自己満足にしかならない。レイに迷惑しかかけられないお荷物な私が嫌い。役に立てればいつか言える立場になれると思ったりしたけれど、迷惑しかかけてないな。


(でも、今日死ぬってわかってたら、好きって言いたかったかも)


 雨に混じって涙が流れる。こんな風に気付かれない恋だったな。

 目を開けているのも辛くなって瞼を閉じる。そして最期ならと強く願う。


(レイさんに会いたい、レイさん助けて)


「う゛ッ」


 突然の浮遊感に吐き気が催される。

 何かが私を抱きかかえている。


(まさか、レイさん…?)


 頑張って目を開けてみるもぼやけて誰なのかわからない。

 ゆっくりと私を抱き寄せてくれる。もさもさで暖かい?

 

「だ、れ?」


(レイさん胸毛深くはないよね…多分)


 でもレイさんの髭凄かったよな…つまり胸毛も凄いのでは…と疑問に思いながら、意識が遠くなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ