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幸せになりたい。  作者:
4 別れと梅雨
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 美佐子が必死にベゼッセンの手から逃れようとがいている様を楽しそうに見つめながら結界の外へ出ようと足を進める。


(あと少しで結界の外だ)


 家の周囲に張られた魔封じの結界。ベゼッセンは仮説を立てた。


(恐らくこの女に魔法を使わせないようにするため…この森に閉じ込めている)


 ベゼッセンを上回る魔力を持ちながらも無力な女。ベゼッセンを恨み、殺意の湧いた姿。もっと見ていたい、もっと怒り狂わせてやりたいと歪んだ感情を抱きながらも冷静に考える。


(このまま結界の外へ連れ出せば…爆発してもおかしくはないな)


 優先順位は連れて帰ること。女を怒り狂わせることは後でいくらでもできる。

 首を絞める力を強る。血液が巡りづらくなり、顔色が更に悪くなる。それでもベゼッセンを睨む瞳は変わらない。噛みついてやろうとする瞳をいじらしいと柄にもなく思いながら美佐子の鳩尾に拳を振るい落とす。

 美佐子の口からかひゅっと息が押し出され、首を絞める手を掴んでいた両手がだらりと下がる。力なく垂れ下がった美佐子の体を横抱きし、服の下に手を入れ下腹部に掌を当てる。


(隷属させてこの場を離れる)


 結界の外へと辿り着き、まず行うことは美佐子を隷属させることだった。連れて帰る途中で目覚められては意味がない。意識のないうちに行えば安全だと判断した。

 雨宿りできる木陰で美佐子の下腹部にベゼッセンは魔力を流し込む。

 気絶している美佐子の顔が苦悶に歪む。他人の魔力を無理矢理流し込まれることへの不快感と痛み、本能的に危機を体は訴えるが意識を失った美佐子には成す術がない。

 体の隅まで魔力を行き渡らせる行為は時間がかかる。

 体の隅まで行き渡らせた後、魔力が混ざり溶けるようにこねくり回さなくてはならない。

 面倒ではあるが、感情に任せて魔力を暴発させることほど恐ろしいことはない。魔族の子どもの暴発でさえ周囲を更地にするほどの威力を持つ。美佐子の魔力が暴発するとなれば周囲どころでは済まされない爆発が起こるとベゼッセンは理解していた。美佐子を隷属させ、魔法を発動させないようにしなければどちらの命もなくなりかねないことだった。


「あと少しなんだが…?」


 急激に近づいてくる気配に気分が害される。隷属を完了させるにはまだ時間が足りない。近づいてくる気配がこの場に着くまでには終わらせることは不可能と判断し、美佐子を結界の中へ放り投げる。


「さて、どんな奴がやって来るんだ?」


(少しは骨のあるやつでないとこの貸しは高く付くぞ)


 そう笑いながら腰に着いた剣を抜いた。


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