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幸せになりたい。  作者:
1 出会いと秋
4/48

4

 男は暗い森を進んでいく。

 私は男に腕を掴まれたまま、後ろからついていく。

 だけど、私はオークからの逃亡で体力がすっからかんな状態だ。

 足取りはおぼつかない。半ば男に引っ張られるように歩いている。

 どこへ行くのだろう。

 引っ張られながら、おんぶってくれないかなーなんて思っていたら、足に何かが引っ掛かる。

 それと同時に勢いよく転んだ。


「っ~~!」


 っちょーいてぇ!!!

 転んだ勢いで男の腕が離れたのか、腕が地面につく。鼻がいてぇ…

 足元を振り返って見てみると、木の根っこがある。…これか、またこれに躓いたのか。

 男を見るとこちらに体を向けてじっとしている。


(…こういうときはさ、「大丈夫か」とか「痛くないか」とか言わない?なんか声かけろよ!コミュ障か!)


 ちょっといらつきはしたが、どこかへ連れて行ってくれていることを思い立ち上がろうとする。


「っ!」


(むりだーもう力が入らん…)


 寝っ転がったままじっとしている。…なんかすごく間抜けな感じがする。

 そして沈黙がつらい。まじでなんか喋れよ。

 …やっぱりこれ私から喋りかけないといけない感じか?何喋る?


 もう動けないです…捨てられそう

 おんぶしてください…嫌がられそう

 眠い…捨てられる

 なんか喋れや…失礼だ!


「おい」


 顔を上げると男の顔が目の前にあった。

 ちょっ顔近!いつの間にしゃがんでいやがったこいつ!気配なさすぎ、忍者か?びびるわ!

 ってここまで顔が近いとなんとなくだが、男の顔がわかる。


 …Oh…おっさん?おっさんですか?じょりっとしそうなお髭ぇ…

 まぁあの声でそこそこ歳いっているとは思っていたから驚きはしないけど、おっさん…

 異世界っつたらイケメンのイメージだったから、んー少しがっかりだわ…いや、もしかしたら髭の生えたイケメンかもしれない!…髭の生えたイケメンって存在するの?


「聞いてんのか?」


 はい!聞いてなかったです。

 なんか話していたらしいけど、全く聞いてなかったぜっ!さっきまで「喋れや」とか思ってたのに…私が悪い。

 ここは素直に謝ってもう一回聞こう。


「すみません、もう一回言ってもらえませんか?」


 すまなそうに喋れ、そして申し訳なさそうに、表情筋をつくるんだっ!ぬおおお!


「…はぁ、歩けないのかって聞いたんだよ」

(はい歩けないっす)

「…聞いてんのか?」


 あ、脳内で喋ってたわー。こいつ、直接脳に…?!とかならない。よかったーおっさんに読心術なくて!


「あ、歩けないです…」


 なのでおんぶしろ。と思う。


「…」

「…」


 …ねぇ、なんか返事しろよ。

 やっぱりコミュ障なの?…しゃーない、私から話しかけよう。うん…何から話す?てかお互い名前知らないよね、そこからだよね!


「あ、あの!お名前を教えてください!」

「は?」


 おぎゃぁぁあぁぁ!!!言っちまったよ!そして返答がやばい、キレてんじゃない?って感じのトーンだわ怖えぇっ!

 思わず目をつぶってしまうが、言ってしまったものはしょうがない、突っ切るぜっ!(諦め)


「えっと、私の名前は成井美佐子(なるいみさこ )って言いますっあ、あなたのっぶっ!」


 あなたの名前は?と続けようとしたとき、強い力で口を押えられた。


「ふぐぐぅっふぐっ!」


 ちょっ押えすぎ!手でか!くぐもった声しか出ねえよ!

 思はずその手から逃れようと暴れるが、体力のない私と筋肉質そうなおっさんの力の差は歴然としている。おっさん強えー…


「騒ぐな」

「んぐっ?」

「騒ぐと寄ってくる」


 …何がですかね…

 取りあえず騒いでほしくなくて抑えられたのは理解した。オーケー。で、何が寄ってくるんですかね?


「わからないようだから簡単に説明する…夜になると魔物が活発になる。騒ぐと寄ってくるぞ」


 魔物って?首を傾げてしまう。

 一瞬そんなのいる訳ないじゃん。と思ったが、オークに追いかけられたのを思い出す。オークって魔物なの?

 ちんぷんかんぷんで、「どういうことか」と言うが、押えられているため「ふぐぐぅふぐ」とよくわかんない声しか聞こえない。

 そんな様子にあきれたのか、男はため息をつき、話を続ける。


「だからさっさと(うち)に行くぞ」


 そう言い切ると、私に背を向けた。え、置いてくの?

 と思ったが、軽々と私を背負って歩き出す。

 いきなりのことで、落ちそうになるのを防ぐため、男の首にしがみつく。

 おんぶしてくれとは思っていたが、実際にやられると恥ずかしいな…

















 暗い森の中を迷うことなく私を背負い、男は歩く。


 身体は密着していて、大きな手で太腿を掴まれている。

 必然的に男の首が顔の近くにくる。

 こんなに他人と触れたことはなかった。

 ここに来てから初めてのことばかりだと思う。


 背負われているため、男が歩くたびに揺れる。それが心地よくて、うとうとしてくる。

 

 寝てもいいかな、疲れてるし、起きた時にまた名前を聞こう


 自分のものではない体温を感じながら目を閉じた。



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