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今日も家事に精を出す。畑の水やり、家の掃除、レイさんから薬草の見分け方を教わり、ご飯を作る。息抜きに動物に野菜くずをあげて懐かないのかと距離を縮めてみようを画策したりして。
「なかなかにいい感じでは?」
昨日の雨のおかげで今日は快晴。春の日差しが気になるところですが、ご安心を。麦わら帽子を被っていると日差しは遮られるし、通気性がいい。でも朝から昼食の時以外に外で活動しているため、流石に少し蒸れてきた。一休みのために畑の傍にある木下の日陰に行き、持っていた鍬を草の上に置く。腰を降ろして手袋も揃えて置き、帽子を取りパタパタと扇ぐ。
涼しさを感じていると何かの花の匂いが微かにする。いい匂いだなぁ。昔虫網持って走り回っていた頃、田舎のおばあちゃんと散歩しているとよく匂いで何の花なのか教えてくれてたなぁ、とぼんやり思い出す。
今ではアパートの駐輪場の脇に植えられていた金木犀の匂いくらいしかわからない。仕事だったし、年を重ねるごとに家の居心地の良さを知っていって、外には仕事と買い物以外で外に行くことなんてあまりなかった。こうして自然の中で生活するなんて想像もしていなかったなぁ。
しばらくぼーっと空を見上げて雲の流れを見ていると頭上から声を掛けられる。
「どうした」
「レイさん…休憩中です!」
帽子は手元、レイさんの顔を見ないように視線は変えずに答える。とても失礼な態度を取っているのはわかっている。でもレイさんだから許してくれる。そう信じてる!
私の普段通りの態度に何も言うことはなくレイさんは隣に座り、足を伸ばしている。午後は薪木を切るって言っていたと思い出す。こっそりレイさんを見るとタオルの巻かれた首筋に木漏れ日で薄っすらと肌が光る。うぅ、かっこいい…。いつも何ともないような顔してるから、こう、顔じゃなくて身体に変化があるといいますか、こうギャップのようなものがあるとキュンキュンしますわ…
にやけそうになる顔をこらえているとあることを思いつき、抱えていた足を伸ばし、レイさんの足と並べる。
二人して足を伸ばせば足の大きさを比べられるのでは?と興味本位でやってみたけれども、なんだかレイさんにも伝えたくなった。
「ねぇねぇ見てください、レイさん!」
「なんだ」
「私達ってこんなに足の大きさが違いますよ」
私の足の大きさは一般的な大きさのはずだし、小さいわけではないのだけれども、男の人と比べるとやっぱり小さい。
レイさん大きい!と笑っていると、おもむろに右腕を握られ持ち上げられる。何事ですか。
「そうだな、小さいな」
そう言って私の手のひらとレイさんの手のひらが合わされる。手も確かに圧倒的に私が小さい。
「1.5倍…いや2倍ですかね?指も大きいし、幅がある…どうですかね?」
「そうか?」
「あ、レイさんからじゃ私の手、見えないですよね」
「いや、触れているからわかる」
「そうでしたねー。持って見てみてもいいですか?」
「構わない」
「それじゃあ遠慮なく…」
合わさっていた手を離して、レイさんの手を自分の方へ向ける。
触った時に思ったように手は全体的に分厚く固い。
「なんでレイさんの手は固いんですか?」
「剣を握るからだろ」
「はーなるほど…」
竹刀だこみたいな?そんな感じかな。
今でも魔物を倒して魔石を採るために剣を握っている。このたこはずっとここにあり続けるんだろう。
労わってあげたいと思い、手を揉む。
「何してんだ」
「こう…労わりを……痛くないですか?」
「痛くない」
「えへへ…たまにこうやってマッサージしましょうか?」
「…」
返事が返ってこない。なにかおかしいことでもしたのかと不安になり、レイさんを見上げる。
…なんか怪訝そうに見られている。え?納得していらっしゃらない?もっと強く揉みます?
「…」
無言で揉む力を強める。が、顔は変わらない。?どうしろと?
「あの、そんなに見られても…なんか言ってくれませんか?!」
反応がないことに一人戸惑っていると、ようやくレイさんが口を開いた。
「…いや、なんでもない」
「それ絶対になにかあるって意味ですよね?何ですか?もしやマッサジー嫌いですか?」
「そうじゃない」
はぁ…とため息をつくと私の両手に揉まれていた右手をすり抜き立ち上がる。つられて立ち上がり、膝に載せていた麦わら帽子を被りレイさんの後を追う。
「なんなんですかー教えてくださいよー!レイさーん、レーイーさーん!」
「しつこいぞ」
「いでっ」
レイさんに付きまとっていると拳をぐっと頭に置かれて痛む。それでもレイさんの呆れた顔を想像して笑った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。これまで大体月一ペースで更新してきましたが、リアルの方が大変忙しくなってきましたので更新を一旦休止します。次話から展開に変化が起こるため、ここで一区切りとさせていただきます。出来れば来年の頭くらいには再開したいと思っていますが、どうなるのかわからない現状です…それでも美佐子とヴァズレイ、二人の関係がどのように変化していくのか最後まで書いていきたいです。更新に気づいて頂けましたら嬉しいです。




