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そうして4日たった日にレイさんの友人さんが来た。が、中々にキャラの濃ゆい人だった。
「久し振り、会いたかったわ~」
「そうか…」
レイさんはどこか疲れたような態度で出迎え、私はなるほど、変な人ってこういう意味なのかと納得した。されど恐れることはない。いや、ちょっとこわいけれど…日の光に当たるブロンドがショートウエーブの髪型で相まって波打つように輝いていて、ラベンダー色のアイシャドウが大人チック…男の人なのに、女性的で美しい!美!!そして口調からも察せるように、つまりはオネエキャラなのだ。
お姉さん(?)はキャッキャッしつつ「最近どうだったの~」、「もっと手紙寄こしなさいよ!」とレイさんに楽しそうに話している。一見親しそうに見えるが、一方のレイさんは歯切れが悪いというか、面倒くさいという雰囲気が短い返事から感じられる。レイさんがこういう陽キャみたいな人苦手なんだという新たな一面を発見した…
玄関で2人が立ち話している様子をレイさんと扉の隙間から覗いているとパッチリと目が合った。
すると、ふーんと顎に手を当てて「その子ね」と目を細めて見つめられる。背筋がぞわぞわっとする。なんだろう、ぴりぴりするような…
もしや、「私のレイに近づくなんて…許さないわ、この泥棒猫っ!!」的な?!嫉妬ですか??いや、怖い!!無理だ、勝てない、お姉さん(?)みたいな綺麗な人と比べて私、芋みたいなものですよ。嫉妬の矛先は向けなくとも、そんな気、もう………
だめだ、考えちゃだめだ。心を落ち着かせよう。…あーこの場にポチが居れば、安らげるのに、今日に限ってあの子は森に散歩しに行ってしまった…。私も行きたかったけど、この家の周りから遠くには行ってはいけないとレイさんから言いつけられているから毎回付いて行けない。あのモフモフのふわふわが恋しい…
「あぁそうだ」
「もーそんなに睨まないで頂戴!何もしてないでしょ!」
レイさんが立ちふさがるようにしてお姉さん(?)と距離を取ってくれたため、わからないがレイさんの向こう側で焦ったような声が聞こえる。レイさん、ほんとパパ…過保護…
お姉さん(?)が何もしていないのに睨まれているらしい。惚れた相手(暫定)に睨まれるなんて可哀そうだし、いつまでもここで話していても仕方がないため話を切り出す。
「あのー立ち話もあれなんで、中に入りませんか?」
「えぇ!上がらせてもらうわ、ありがとうね~」
待っていました!と言わんばかりにレイさんの身体を瞬時にどかし、私の腕を掴んでさささーっとリビングまで連れていかれる。
ええええーーー早っ
レイさんの「おい!」と少し怒ったような声が玄関の方から聞こえる。そりゃ怒りますよねー。
怒っているレイさんがちょっと新鮮でおもしろいなーっと思っていると隣から視線を感じる。ちらっと見てみるとがっつり目が合う。今日はよく人と目が合う日なんだね…そういえば自己紹介とかまだだった。
「あの、はじめまして。私は成井美佐子っていいます」
「えぇ、初めまして。私はギャビン・アデリーヌ・サリバンよ。今日はよろしくね」
え、名前ながっ…
「名前、どう呼べばいいですか?」
「んー…ギャビンでもサリバンでも気にしないわ、好きに呼んで頂戴。それよりもあなたのことはどう呼んだらいいのかしら?」
「あ、私のことは成井でも美佐子でもいいです。…この世界だと姓名どっちで呼んだらいいんですか?」
「じゃあミサコね。呼び方は別にどっちでも構いやしないわよ。まぁ同姓が2人以上いたら名前の方がいいわよ」
つまり鈴木さんが2人いたら下の名前で呼んだ方がいいと…と思っているとまだこちらを見ている。なんだ?アジア系の顔が珍しいのかな?
「あなた…部屋でも帽子を被る風習があるの?」
「あ、それはレイさんの顔が見えないようにしてるだけなので…そうですね、外しますね…」
この麦わら帽子を被っているのが当たり前になっていて家の中で普通は外しているべきことを忘れていた…非常識だったと外し壁に掛ける。
「レイの顔?」
あ、そこからの説明ですね。振り向き直して説明しにくい理由を説明する。
「あははは…レイさんの顔が良くて…直視できないというか、その…」
「あいつの顔が良い…?ごろつきみたいな顔じゃない」
「そんなことないです!とってもイケメンじゃないですか!」
ご、ごろつきだと?!確かに、髭面だったときはごろつき呼ばわりは否定できないけれど、今はどう見たって褐色のムキムキイケメンだろうが!!
食いかかる勢いで反論したせいか、唇をひきつらせている。初対面の人にひどい態度をとってしまった…と顔をさーっと青くするとレイさんもリビングに入ってきた。片方が顔を青くしていて、もう片方がドン引きしている状況をみたレイさんがまず初めに発した言葉は、
「お前、何した」
「何もしてません!」「何もしてないわよ!」
でも安心した、レイさんに惚れていないんですね!…惚れてないんですよね?




