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幸せになりたい。  作者:
3 魔力と春
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 暖かい陽気の中、ポチと日向ぼっこをしたり、久しぶりの餌タイムを過ごしたりしていたある日、白い鳥が飛んでいるのを見つけた。

 珍しい色の鳥だと思いつつもぼーっと見ていると家の周りをゆっくりと飛んでいることに気づいた。この家に何かあるのだろうか?

 うさぎを餌で釣るのをやめて鳥を観察する。よく見てみると羽がない?翼はあるけれどもそれを構成する羽が見当たらない。鳥の形をしているだけで無機物のような感じがする。なんだか久しぶりにファンタジー感のある場に遭遇した。


「もう少し近づてくれればいんだけどなー」


 飛んでいるせいで詳しく見られない。もっと近くで見れればいいのに…

 と思っていると背を向けて飛んで行った鳥もどきが弧を描くようにゆるやかにこちらに飛んできた。そして目の前で漂うようにゆらゆらと留まる。少し驚いて後ずさるも、ただ漂うだけで異変はない。いや、近づいてきただけでも異変は起きている。

 でも考えてもしょうがないと考えると危機感よりも好奇心のほうが勝る。

 改めてまじまじと見てみると…これは、何なのでしょうか。やっぱり羽がない。周囲に溶けこむように白く光っていることもわかった。これは多分生き物じゃない!以上!!足元にいるポチは興味津々なご様子でしっぽをふりふりさせている。かわいい!よし!!

 知識のない人間が見たところで好奇心が満たされただけだった…レイさんに見せた方がいいよね。生き物ではないのなら触って大丈夫かなぁ、そう思って鳥もどきを両手に乗せて持っていこうとする。

 差し出した指先に触れた瞬間、するりと形を変えて白い手紙になった。いや、いやいやいや、私何を言っているのか…あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!「鳥が触ったら手紙になった」な…何を言っているのかわからねーと思うが、私も何をされたのかわからなかった…

 慌てて落ちかけた手紙を両手で挟み捕まえる。恐る恐る挟まれた手紙をみる。文字は読めないけれども紫の蝋印のされた変哲もない手紙だと思う。


「…伝書鳩てきな?」


 いや、でも消えたし鳩じゃないよね。何だったんだろう…ファンタジー……

 不思議な体験をしてしまったと思いつつ手紙をレイさんの元に届けるため家に入った。







「レイさん鳥が手紙になりました」

「あぁ」


 絶対におかしな会話だったのに驚きもせずにレイさんは手紙を受け取り蝋印を外した。もしやあれはこの世界の伝書鳩なのか…

 私が新たなこの世界の常識もどきを体感している間にレイさんは同封されていた手紙を読み終えたらしく、私に話しかけた。


「…どうやって受け取った」

「え?いや、触ったら手紙になりましたけど…」

「飛んでいただろ」

「あ、飛んでましたね」

「それをどうやって捕まえたんだ?」

「えー、うーん」


 なんかあったけ?鳥もどきが私の所にくるまでに…


「そういえば、こっちに来ないかなーって思いましたけど…」


 何の気なしに思い出したこと口にすると少しの沈黙の後に「そうか」といつものレイさんの声が聞こえた。なんなんですか、今の沈黙。顔が見えない分めっちゃ怖い。


「あと四日で着くそうだ」

「それは友人さんのことですか?」

「友人ではない。信用できる奴なだけだ」

「あ、腕前だけじゃなくて人として信用できるんですね。ちょっと安心しました」

「…どんな奴が来ると思っているんだ」


 そう聞かれて思っていたことを話す。


「こう…マッドサイエンティスト的な?研究熱心な人かと」

「マッドサイエンティストの意味はわからんが、一般的な倫理観は持っている。信用できる奴だ」


 言葉の意味は通じずともニュアンスは伝わるんだな…とどうでもいいことを思っていると、それと、と続けてレイさんが話し続ける。


「興味本位で知らない物に触るな」

「はい…」


 い、痛いところを突かれた……こうやって興味本位で穴を覗いたことでこの世界に来てしまった私にその言葉は効く………


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