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幸せになりたい。  作者:
3 魔力と春
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 レイさんがイケメンにビフォーアフターしてからどぎまぎした態度しか取れていない。あんなに親子のような暖かな関係だったはずなのに…。


「やはり人は見た目なのか…」


 ちまちまと雑草を抜きながら自分の卑しい部分を感じる。優しかったら、いい人なら見た目なんて関係ないという考えのつもりだったのだがな!もうイケメンがイケメンで私は声を掛けられても御顔が見れないわ、手の届きずらい場所の片付けを手伝ってもらった時に身体が触れただけで奇声を上げたりで、レイさんに…


「はぁ~レイさんに申し訳が立たない…」


 罪悪感しかない。今までのように接しようと思っても、どう接していたのか、というかよく男性に対して明け透けもなく接していたな!吊り橋効果?と思う。


「いや、もうどうすれば…」


 考えるほどに自分に男性免疫がなかったことに驚き、今までの自分を恥じる。このループが終わらない。この雑草抜きのように…

 もう春。新しい芽吹きの季節、新緑の若葉の間からは暖かな木漏れ日が射している。そして雪解けた畑には元気ぐんぐんな雑草たち…表の畑は雪かきをしたり、種まきがあったからきれいに整っているけれども、秋に肥料を撒いて種まきをせずに休ませていた裏口の畑は精霊さんのおかげで雑草が酷く生い茂っている。考える時間が欲しくて、レイさんがやるはずだった仕事(雑草抜き)を強奪して今ここにいるのだけれども…


「終わらない…」


 ポチも雑草抜きを手伝ってくれていたけれども今は日向ぼっこをしている。私も日向ぼっこしたい。レイさんとのかかわり方に解決策は見いだせず、仕事も終わらないなんて詰んだ。それに任せてくださいと言いきっといて終わらないとか…最悪じゃないか。

 

「私、このままじゃいけないよね」

 

 お世話になっているのに余所余所しくなったり、仕事もできない、いっそのこと吹っ切れてしまいたい。もしくは独り立ちしてここから離れること。でも私は世間ではやべぇ扱いをされるらしいからここに居るしかない。やっぱり詰んでいる。

 元のレイさん?に戻って欲しいけれども知り合いの人が帰るまではイケメンのままだ。今を耐え忍ぶほかないのかな?

 雑草を引っこ抜きながら考えているとなかなか抜けない雑草がある。両手で引っ張るけれども抜けない。とっても深く根付いているのかな。用意しておいたスコップを持ってこよう。そう思い起き上がると帽子を持ったレイさんがいた。その大きなリボンのついた麦わら帽子をどこから持ってきたのだろうと思いつつも反射的に俯く。直視したらどもりどもり、話せなくなってしまう。それでもイケメンと話すのだから緊張する。手の置く場所がわからず両手を握る。


「レイさん、いつからそこにいたんですか?」


 緊張で声が強張っている。こんなんじゃだめなのに、以前のように話せない。


「…」

「?あの、レイさん?」


 あーなんか懐かしい感じがするー。と思っていると雑草を踏む音が聞こえる、レイさんが近づいてくる。何なのだろうと少し緊張感が増しているとポスっと頭に何かが覆いかぶさり、視界が狭くなった。


「えぇ?え、帽子?なんで?」


 レイさんが持っていた帽子を私にくれたということですか?

 戸惑っているとレイさんが話す。


「お前、前よりも余所余所しく変な態度を取るようになっただろ。俺が髭を剃ってからだ」

「あー、はい…」

「考えたんだが、俺の顔が見えなければ前のようにいられるんじゃないのかと思ってな」

「…それで帽子ですか」

「つばも大きくした。話しかけていちいち顔を背けられるのは堪える」

「すみませんでした………これ買ったんですか?」

「編んだ」

「え?!編めるんですか!すごい…」


 つばの部分を触って見てみる。少しよれているけれどもレイさんの性格っぽくきっちりと編み目が連なっている。

 レイさんなんでもできるじゃん。というか編んだの?麦わら帽子って編んで作るんだ。いや、確かに考えれば編んでいるんだろうけれども、家で編んで作るものではない気がした。それにしてもレイさんが編んだんだ…体格のいい男の人がかぎ編みを使って作ったんだ。私のために。

 想像すると、きゅんとする。私知ってる、これはギャップ萌え。それと同時に胸の内が暖かくなるような感じがする。

 今なら顔が見れそう。つばをクイッと上げてレイさんの顔を見る。やっぱりイケメンだ。でも、今は、


「レイさん、ありがとう」


 自然と言葉がでる。不要な力が抜けて話せた久し振りの感覚。ずっと緊張してばっかりだったからそう感じるんだろうなー。

 私のために作ってくれるってこんなにも嬉しいものなんだなーと思ってると、頬を優しく撫でられた。思わず後ずさる。すみません、そういうサービスはしていないんです。私の行動が面白かったのか笑いをこらえる声がする。笑うなんてサイテーですよ!と言おうとしたが、それよりも先にレイさんが話しかけた。


「ずっとは付けているなよ、お前の顔が見れないのはつまらんからな」


 そう言うと、「後は俺がやる」と言って家に押し込まれた。

 …………………え?

 しばらく茫然として、徐々に顔が熱くなっていく。


「いや、無理でしょ…」


 目の前にはレイさんはいないし、レイさんと話すことに支障はもうないはずなのに、胸のどきどきが止まらない。つばを思いっきり引っ張り麦わら帽子を深くかぶる。触れた耳がとても熱い。

 私、もしかしてレイさんに惚れてる?


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