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ノックなんてできません。もはや安全地帯のような、結界のような存在を失った私には、レイさんしかいないのっ!
いきなり入り込んだ私にすぐに気づいたレイさんは、ゆっくりとベッドから起き上がる。
うわーこわーい。いつもよりなんか、目つき悪くないですか?もしかして寝起き悪い感じですか?
「なんだ、なにかあったのか」
目つきがとてつもなく悪いけれど、機嫌は悪くないらしく、いつもの雰囲気がする。適当な感じが安心する…
「安心する…」
「は?」
「あ!そうなんです!何かあったんです!」
「…静かに話せんのか」
煩わしいように、更に目つきが凶悪になる。は~めっちゃこわっ!でもね、さっきの謎の生命体のほうが怖いから平気~
レイさんに近づき、声のボリュームを下げて事のいきさつを話す。
「じゃあ、ポチはその生き物の方に行ったんだな?」
「そうですね…」
「放っとけ」
「え」
(え?本当ですか?)
「それは精霊だろ…危険なものではない」
「精霊?」
「話は明日するから寝ろ」
そういって布団を被ろうとする手を掴む。
「いや、待ってください。その精霊さん私の部屋の窓の傍にいるんですけど」
「だから?」
…ここは恥じてもしょうがない。
けれども、やっぱり恥ずかしいことは恥ずかしいことに変わりない。自分の顔が熱くなっているのがわかる。絶対赤くなってる。そしてそのことは夜も目の利くレイさんにはわかっている訳でして…
いや!ぐずぐずしてる場合じゃない!レイさんの眼やばいっ!もはや睨み殺すような形相ですわ。下手なこと言ったら殺されそうなんですけど。
「も、戻るのがこわいんです…」
なんとか出た言葉も語尾になるにつれて小さくなる。
レイさんの返事を待つが、何も返ってこない。レイさん眠たいんですか?それとも夜分に突撃してきた私に怒ってます?もしや呆れて声も出ない的な?俯いていた顔を上げ、レイさんの顔をうかがと、相も変わらずやばい形相のレイさんがいた。なんていうかあれですね、じっとするのが好きなのかな?
そう思っていると、掛け布団を少し開き手招きをしてきた。…これは、どうすればいいのだろうか…と、思った矢先、ぐっとレイさんの腕が私の首根っこを引っ張り上げてベッドにいれてくれた。わーあったかーい。
………いや、まて。これはなんだ?明らかにこれはそいね…添い寝!!理解した!これは添い寝だ!!!
気づけばレイさんの腕がお腹にいらっしゃる!これは添い寝だ!スチル付きのもののイベントが、ここで起きてるぞ!!
「あのっレイさん、寝ぼけてませんかね?」
「そうかもな」
「やっぱり!」
ほぎゃーーー!!いや、まあ、部屋に入ったのは私ですけど、一緒に寝ることになるとは思ってなかった!!私は安心感が欲しかったんです!寝たいわけではなんです!!
「レイさん!これは違いますよ!」
「そうかもな」
「ちょっそう思うならっこの腕!離してもらえませんかねっ」
くっこの屈強な腕に私の腕は敵わない…とにかく離してもらおうとお願いするも、一向に離れる気配はない。むしろ、レイさんの身体に、みみみっ密着してませんかねっ?!
「レイさん?!起きてるんですよね?!」
「そうかもな」
「ちょっと!レイさん!そうかもな、しか言ってませんよね!」
「そうかもな」
(おい!おっさん!!寝ぼけてんのか?!!)
「もう!おきてくださっぶっ!」
思いっきり大声でを起こそうと振り返り声をかけると、頭の方にあった腕で口を塞がれた。
「もう夜だろ?いい加減寝ろ」
「は、はい」
もう沈黙するしかない。耳元で、吐息のようなバリトンボイスの添い寝はあかん…まじ、どこの添い寝CDだよ…
そして、私が寝られるはずもなく夜は明けていった…
※レイさんはぐっすり寝ていました。




