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幸せになりたい。  作者:
2 精霊と冬
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23

「ん…」


 起きればまだ日は登っていない。暗く、窓からの青い月明かりが差し込んでいる。

 ポチも私が起きたのにつられてもぞもぞしだし、おはようと言わんばかりに鼻を顔にくっつけてくる。


「んー、おはよぉ〜でもねぇポチ、私まだ眠いんだよぉ…」


 そんな私の気持ちなど無視してポチはベッドから飛び降り、窓の傍に置いてある椅子へ向かう。軽やかに椅子に飛び乗り、窓を覗く。

 なにか見えてんのか?


「さぶっ」


 のそのそとベッドから降りて、ポチの方へ向かう。ポチと同じように窓を覗くと、雪景色が見える。いつもと変わらない真っ白で、静かな森だ。


「ポチ、どうしたの?」


 何かしら訳でもあるのかと聞いてみると、タシタシと窓を叩く。こんな小さな体を伸ばして、足で叩く姿にかわいさを感じていると、くぐもったような、遠くから何かが聞こえた。


「…なんか、聞こえない?」


 部屋からではない、もっと遠く、響くように、聞こえる。何の隔たりもなく、感じる。

 …めっちゃ怖い。なにこれ?ホラー映画?え、冬のコテージに突如現る謎の生命体的な?


「ぽ、ポチ!寝よ!」


 でもポチは嬉しそうにしっぽを振っている。

 えぇぇ…何?どうしよう…

 今何時?レイさん起こす?いや、でも怖いから起こすって…それこそ正に子供じゃん…

 悩んでいる間にも音はどんどん大きくなってくる。そして、じっと森を見つめていると仄暗い森の奥から大きな何かが見える。ゆっくりと動くそれは、月光に照らされ姿がわかる。

 …緑。深い暗緑のもそもそした塊が見えた。よく見てみればそれは生茂るといった言葉が適切なように、身体に、草木を纏わせている。

 というよりもこれは生き物なんですかね?本当に謎の生命体現る、なんですけど。

 相変わらずポチは嬉しそうにしっぽを振り、それを見ている。

 まぁ、ポチが気に入っているようなら、悪いものではないのかな………悪いものではない…そうは思いたいけれども、未知の生命体と対面するかもしれない最中、安心できるものと一緒にいたい…

 そう思いつつ、ポチを抱きかかえる。


「きゃん!きゃん!」

「え?」


 ポチが…鳴いた…?!

 そのことに驚いていると、より近くから音が聞こえてくる。 

 ポチは鳴くのをやめて、どうしたのというような感じでこちらを見上げている。

 あぁ、かわいいけれども、この状況をどうすればいいのか…

 ポチはは窓をバシバシと叩いている。


「開けろってこと?…いや、めっちゃこわいんですけど」


 一応、開ける勇気がないことを伝え窓から離れる。すると窓ではなく、抱きかかえている腕をポチはぺしぺしとたたき始めた。

 これは、外にやはり出たいのでは?

 でも、怖いものは怖いので恐る恐る窓まで戻り、鍵を開ける。軽く手で窓を開くと、腕からポチが飛び出す。


(ポチ…さようなら…)


 そして私は猛ダッシュでレイさんの部屋に入り込んだ。

 


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