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これはなんだ?
ポカーンとその生き物を見つめるけれども、ずんぐりむっくりしていることしかわからない。
見つめられていることに気付いていないのか相変わらず湿ったもの…多分鼻先を押し当ててくる。
なんでしつこく押し当ててくるんだろう。嫌がらせかな?
正体はわからないけれども、恐怖心を抱くこともなく、されるがまま。
てか横眼で見続けるのも目が…疲れるな。
こうして見ず知らず?な私に近づいてくれている訳ですし、好意的…なはずですし、こう、その、ねぇ…
撫でたい。
もう癒しが欲しい。さっきまで心が折れかけてたんです、ブロークンハートだったんです。
このもさもさしてそうな生き物に触れあって、癒されたい。抱きしめて、もふもふして、わしゃわしゃして、ぎゅーってして、ぺろぺろして…
もうこの生き物になにもかも受け止めてほしい。
意を決し…欲望に身を任せ顔を思いっきり生き物の方に向ける。
びっくりしたのか、ビクッとするように黒い塊が揺れ、スッと倒れた。
「!?」
え、倒れた…!?
「ちょっおまっ」
し…死んだ??びっくりして…死んだのか!?なんなの!
焦るけれども、その生き物は起き上がることはなく、動かない。
どうすればいいんだ…
恐る恐る生きているのか確認するため手を伸ばす。
もふもふ
……
もふもふ
もふもふーーーッ
これは、もふもふしている!私の人差し指がもふもふに包まれる…ッ
そして暖かい…
生きているはず…と思い、両手で掴んでみるとそれはまたビクッと動くけれども、また静かになる。
これは…拒絶されていない?
期待を込めて、ゆっくりと胸に寄せる。自分とは別の生き物が腕の中にいる。
少しぎゅっと抱きしめる腕を強める。
ここには自分だけだと思っていた。でもここには私以外にもいる。
それがとても安心を与えてくれて、とてもうれしくて。
訳も分からず、また涙が出てくる。
今の気持ちをこの生き物に伝えるならば
「ありがとう…」
みっともないくらい泣いていて、鼻水もずびずびにでてるのに、その言葉にこたえてくれるように頬を舐めてくれた。