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線の上。

作者: 川見 雅

付き合う、とか。

デートとか。

憧れがなかったわけじゃないし、人並みに、もしかしたら人並みに以上に。そういう欲求も、持ってた。

でもそれが現実味を帯びることはなく俺の中高時代は過ぎ去っていた。

身近に女子がいなかったわけではない。中高一貫の共学校で、決してキモい男子の部類でもないわけで、1度や2度は女子との噂がたったことだってある。

でも、それだけ。

それは単に俺が憧れは憧れのままそれはそれとして淡々と毎日をそれなりに面白く、けれども取り立てるほどのこともなく過ごしていただけだったということ。

誰かをめちゃめちゃ好きになって体裁も取り繕わずに、なんて青春をしている奴らを尻目に。

リア充なんてと軽口を叩き。

男友達と楽しくふざけて。

なんでもない風に取り繕って。

それでも俺は本当はいつだってそんな恋愛を目で追ってた。

いいな、と心のどこかで思っていた。

俺には、無理なのかなとも。

誰のことも好きになりきれない。何をしていてもどこか目の前に1枚のフィルターを挟んだような、どこか醒めた感覚。

そんな俺の前に君が現れたのは神様からの贈り物か、それとも人を羨んだ罰か。

「気付いてくれるのね、私に。」

誰よりも楽しそうに笑ってみんなの中に入ってくるのに、少し目を離すと違う所へいってしまう。

あっちの女子のグループと、こっちの男子のグループと、

そこのオタクのグループと、隣の秀才グループと、

見えない線で区切られた学校という大きなハコの中で君だけが自由だった。

自由で、いつでも誰かと一緒にいるのに、ふと気付くと1人で歩いている子だった。

見えない細い線の上を足元も見ずに1人で歩いて行く子だった。

そんな時に話しかけると君は必ずちょっときょとんとした顔をする。普段自分のペースに周りを巻き込んで会話する君が他の人にはあまり見せない表情。

きょとんとしてそのあとふっと笑う君のその顔が好きだ。

気付くよ。いつだって。誰といたって。俺の前にある一枚のフィルターが君を見つけさせてくれるから。


なのに


俺はもう1つ気付いてる。

俺にバイバイと嬉しそうに手を振って、沢山の人をかき分けて、君が向かうその先に、たった1人の男がいることを。

アイツは君を見つけてなんかくれないのに。

気付いてなんかくれないのに。

君はいつでも彼を見つけに行く。

俺は、それに、気付いてる。


望めなかった俺に

望ませてくれた君の存在は

今日も俺を苦しめる。

俺が出会うべきだった君は

君が出会うべきだった1人に

もう出会ってしまっている?

それとも……

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