Magicruler/魔法と魔術。
厨二乙。
「魔法は使えなくて当たり前。 魔術は使えて当たり前。」
そう、育ててくれた神父様は教えてくれていた。
二つの違い。
それは、魔術が道具を介して行う物理現象(と言っていた。 要は手で触れるかどうからしいけど。)に対して。
魔法は、完全に体系化出来ない、才能に左右され過ぎる概念現象、ルールに介入するもの、らしい。
当時、まだ小さかった僕に。
神父様はこう教えてくれたのを覚えている。
「いいかな、ルイン。 此処に指輪がある。」
「うん、あるね神父様。」
「これは、魔導具……簡単に言えば、魔術を使う為に必要な道具なんだ。」
見ててご覧。
そう言いながら、指輪を嵌めて。
『我は請う、全てを燃やす五大属性の一角、火の加護をーーーー燃焼』
ぼっ。
そんな小さな音と共に、指輪から人差し指程の青白い炎が立ち昇っていた。
「……うわぁ。」
「これが魔導具……過去の遺産だ。」
目を細め、僕を見ながら。
その炎を消しながら。
更に、幾つかの事を教えてくれて。
擦り切れそうな、一冊の本とーーーーそれを読む為の、文字まで教えて貰えた事は、いつまでも感謝している事。
曰く、「魔術には、五大属性と呼ばれる五種類に属するものしかない。」
「火、水、土、風、純粋なエネルギー……属性に属さない属性、無。」
「その魔導具に刻まれた属性、増幅強度に応じて値段が変わる」ーーーーとか。
……そして、「魔法」。
これに関しては、本で学んだことだから本当かどうかは分からない。
神父様に聞いても、困った顔をしていただけだったから。
多分……教えたくても教えられない事だったんだと思う。
それを、本で理解したんだから。
その本で例えられていたのは竜。
圧倒的な存在と、力を持つその存在は。
『幻想種』と呼ばれ、畏怖される異界の生命体。
そして、竜はその異名の通り『幻想界』と呼ばれる世界の住人であり。
存在出来るルール自体が違う……らしい。
炎を吐く竜なら。
周囲で炎の魔術から、何からが吸収される。
生態のように、搾取するだけ。
ただ、魔法使いだけはそれに立ち向かう権利を持つ。
正確には、搾取されるみたいに無効化されない魔術とか、物理手段なら殆どかすり傷みたいなものらしいけど闘える。
だけど、魔法使いはお互いのルールを押し付け合う。
その結果、互いに互いを傷つけ合う……真っ当に、攻撃を与えられる、と。
当然、そんな存在が誰に、何も思われない理由も無く。
魔法使いは、その姿を消した。
其処までが、本に書かれていた事。
僕が見た夢は、そんな魔法使いにーーーー変わる為の、儀式の一環だと思う。
見る事自体が、儀式の始まりの。
何より。
目を覚ましたら。
世界がーーーー輝いて見えていたんだから。
……リンに、なんて言おう。