「ただいま」。
ちょっとずつ、ちょっとずつ進む話。
森から抜け、乾いた荒野を小走りで進む。
道でもあれば良いけれど、中々それも難しいみたいで。
……そもそもこんな僻地に道を作ってくれる程、領主様も優しい訳がない。
それどころか、ジェイク男爵家始まって以来の駄目な人らしい。
時々やってくる、行商人の人が呟いていたのをたまたま聞いてしまっただけだけど。
ただ、それは本当なんだろう。
……そうやって呟く言葉の大半は、本当のことを占めていると知ってしまっていたから。
そんな事を思い浮かべながら。
魔獣にも運良く出会す事がなくて安心(とはいえ、警戒はしたままだけど)しながら、只々歩く。
ーーーー魔獣。
何故産まれるのか、今では全く不明とされる害を為す存在。
魔物とも呼ばれるソレは、その理由も分からないまま僕等を襲う。
喰らう為なのか。
それとも……唯、弄ぶ為なのか。
それさえすらも未だ分かっていない怪物。
種類によっては抵抗出来ない事もないのが救いであり。
少なくとも僕は、最下級……獣程度には何とか抵抗出来る程度は自己流で身につけている。
まともな武器も無いから、主に体術と昔拾った錆び付いたナイフ。
後は木の棒で叩くくらいだけど。
それでも、「抗える」手段だけは必死に身に付けた。
万が一、襲われてしまえば逃げるしかできないとしても。
戦う覚悟なんて、全く出来ていないとしても。
――――それでも。
ざくり、ざくり。
小石を蹴飛ばし。 まばらな枯れた草の上を駆け抜ける。
段々と見えてくる、”故郷”。
見るからに痩せ細り、このまま朽ちていくだけのような既に終わりが見えている村。
そんな村の、本来の村の入口でなく。
裏口のような、柵の隙間に出来た一人分の隙間を抜けて中に滑り込む。
顔を見せるだけで、嫌な顔をされるから。
姿を見せるだけで、侮蔑されるから。
いるだけで――――。
……きょろきょろと、誰もいないことを確認しながら村の外れ、崩れ落ちそうな教会へと脚を向けた。
今は、此処が住処。
もう、母さんと過ごしたあの家は無い。
……潰されてしまったから。
……消えてしまったから。
……思い出と共に。
「……ただいま。」
きぃ、と小さな異音を立てる戸を開けて小声で囁く。
「……おかえり、なさい。」
……だから、今僕が持つ”好意”の感情は。
ただ、彼女と共にある。 それだけ、なんだ。