拝啓、名も知らぬ記憶。
恋愛タグ付けたは良いけれど中々進まない。
動けるようになって最初に確認したのは、手脚の異常の有無だった。
軽く伸び。
手首と足首を軽く回す……異常なし。
身体的におかしいところは見当たらず。
取り敢えず一安心、とばかりに大きく息を吐いた。
空気が妙に美味しく感じる。
恐らく、まともに呼吸すら出来てなかったからだろう。
(……に、しても。 これは、何なんだろうか?)
無理に精神を落ち着かせながら一度、目を閉じた。
この「記憶」が何なのか。
少しでも情報が欲しかったから。
ーーーー「記憶」は断片的だった。
恐らく、持ち主は男性だったのだろう。
妙に長い外套を羽織り、歩き回っている。
かと思えば、次の瞬間には長い木で出来たような棒……杖、だろうか。
それを手に、何かを呟いている。
そこからも、くるりくるりと光景は移り変わった。
春の時。夏の時。秋の時。冬の時。
視線も伸び縮みしながら。
視界に残る外套も、新しく、古く。
時を行き、戻るように。
そして、常にその視線の中には。
知らない、知っている誰かがいた。
(……記憶の誰かの……大事な人?)
誰かーー便宜上、「彼」と呼ぼうーーの全てだったかのように。
笑い、泣き、怒り。
とても、幸せそうだった。
(結局、分からずじまいか……。)
まず間違いなく、こんな事を言い出せばーー信じて貰えるなら、という奇跡を前提にしてーー狂ったか、急に道化師にでもなったのか、と笑われる。
いや、正確には一人だけ信じてくれるかもしれない。
だが、心配はさせたくなくて。
「取り敢えず、帰らないとな。」
いつの間にか足元に転がっていた果実を拾い上げ、村へと歩みを進めた。
……想定より大分遅くなってしまったけれど。