第九話 男と女で3:2
とりあえず一通りの案内は済ませたし、汗を流しているみたいだから、今日はもう部屋で休むようにと言われた。…主に視線を俺に向けて。
確かに汗かいてるのは俺だけで、あと皆涼しい顔だけど、そもそも戦った相手違うし!俺隊長とだし!と内心で言い訳をしてみたりする。
といっても、本当は俺だって分かっているのだ。
この中で一番弱いのは、俺であるということを。
でも、せめて皆の足だけは引っ張らないようにしなければいけない。
だって俺は―――
「此処の部屋です。中は広いので、男女に分けて使ってください」
どう考えても明らかに一つの部屋を指差して言うフィーアさん。
いや、未婚の女性と同じ部屋は無いだろう。
そう思ったのだが、中を見て俺たちは納得した。
広いのだ。普通の家とは比べ物にならないくらいに。
これだったら、何も問題は無いだろう。というか、広くするのが流行っているんだろうか。謁見の間とか、庭も広かったし。
「着替えは中に置いてあるので、使ってもらって結構です。何かあったら、そこにあるベルを鳴らしてください。では、また明日」
そう言うと、フィーアさんとオルガーさんは帰っていった。
「じゃあ、僕たちも休もうか」
話し合いの結果、右の部屋を俺たち、つまり男性陣が。
左の部屋を女性陣が使うことになった。
「いい?絶対にノックをして、返事があってから入ること!」
「そうしないと…どうなるか分かってるよね?」
女性陣のその台詞に、俺たちはブンブンと大きく頷いた。
誰だって、死にたくはないからな。
「ねえ、これ見て!」
部屋の構造を確認していた時のことだった。美咲が皆を呼んだのだ。
何事かと思い、俺たちはすぐに集まり、絶句した。
そこには、5着の着替えがあった。2着の男物の服と、3着の女物の服が。
「「「あははははは!」」」
「笑うな!」
訂正。どうやら絶句していたのではなく、笑いをこらえていたようだ。
啓が肩をプルプルさせているのが一番傷つく。それなら盛大に笑ってくれた方がマシだよ畜生!
「だって、さあ…」
「どう考えてもこれは…」
「…だよねえ」
「………」
やめて!皆してそんな眼で見ないで!
では、ここで皆の見た目について説明しよう。
まず、拓斗。彼はイケメンだ。爽やか系美少年だ。
男らしいが、男独特のむさ苦しさはない。そして、よくモテる。このことは、俺が最もよく知っている。
次に、啓。彼もイケメンだ。ただし、拓斗とは方向性が違う。
大柄で、精悍な顔立ちをしており一言で言えば、男らしいのだ。
まさに俺の憧れの体型。
そして美咲と瑠香は、世間一般の美少女だ。
美咲は可愛い系、瑠香は綺麗系である。
最後に俺だが、俺もどちらかと言えば顔立ちは良い方だ。…まあ、この4人の前では、それも霞むが。
しかし、俺には問題がある。
中性的なのだ。そして、整っているからこそ、さらにそれが強調される。
おかげで、髪を伸ばせば絶対に、そうでなくとも、しばしば女子と間違われる。
ちなみに拓斗と美咲に弟を言われる由縁も此処にある。
……なんかもうやだ。
もちろん、その着替えはベルを鳴らしてすぐさま交換してもらった。
呼んだ旨を告げると、相手には凄い勢いで謝られた。なんかそこまでされると、こっちが悪いような気がしてくる。
それにしても、このベルはすごいな。これもやっぱり魔法だろうか。
そんな現実逃避をしている俺の後ろで、4人は未だに大爆笑していた。
やっと皆の見た目が出せた…。
今、登場人物紹介を作った方がいいのかどうか悩んでいます。
よかったら、意見を頂けると嬉しいです。