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勇者の御供  作者: 星凛
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第四話 天才な4人と努力な俺 魔法編

「あれ?そういえば、勇者って、1人じゃないのか?」

 今さらながらに思ったことを、俺は聞いてみる。

「ええ、勇者というのは、そもそも異世界から召喚され、魔王と戦う決意のある人のことを言います。なので一応、5人とも勇者ということになります」

「ということは、俺たち全員、光属性の魔法が使えるのか?」

 さっきの説明だと、そういうことになるが。

「いえ、光属性を使えるのは、『勇者の刻印』を持っている人だけです。ちなみに、刻印は右手の甲に、魔法を使うときだけ現れます。本来、召喚の魔法とは『勇者の刻印』を持った人物をこちらの世界に連れてくる魔法ですので、今までの勇者が一人だったということは、多分今回も一人だと思います。勇者とは基本、こちらのことを指しますね」

 なるほど。

 そもそも勇者の定義でいうと、俺たち5人は勇者だが、この世界の人が言う勇者は、『勇者の刻印』とかいうのを持った人のことである、と。

 なんだかややこしいな。

 


 謁見の間を出て、かなり、というかそれはもう盛大に広々とした部屋へと連れてこられた。

「ここは魔法練習場です。これから何度も使うことになると思います」

 魔法隊隊長が奥の方へと進んでいく。えっと名前は…

「フィーアさん、それは何ですか?」

 そうだ、フィーアさんだ。拓斗、ナイスタイミング。

「これは魔力の量を測るための機械です。放つ光の強さによって、大きさが分かるようになっています」

 なんだか、占いに使う水晶みたいだ。

「魔力の量が多ければ多いほど、たくさん魔法が使えます」

「ちなみに、お二方の魔力はどのぐらいなんですか?」

「そうですね。私ですと、これでも一応魔法隊の隊長ですので、それなりには…」

 と言うと、実際に光らせてくれた。…それ、結構じゃなくて、かなりって言いません?

「俺は剣士隊だから、そんなに光らないがな」

 ほれ、と見せてくれた水晶は、なるほど確かに、あまり光っていなかった。

「一般の人ですと、オルガーと同じくらいになります」


 今この場に居るのは、俺たち5人と、フィーアさんとオルガーさんの、計7人。

 ちなみに、フィーアさんは魔法隊の、オルガーさんは剣士隊の隊長をそれぞれ務めている、極めて優秀な人たちだ。

 フィーアさんは、さすがというべきか。それ相応の魔力を持っている。


「では、みなさんにも測っていただきますが、誰からにしますか?」

「じゃあ、僕が最初でもいいかな?」

 一番手が拓斗だなんて、嫌な予感しかしないんだが。

 拓斗が水晶を持った瞬間、

 パリィィィィン

 やりましたよ、お母さん。あなたの息子は見事に、水晶を割ってみせましたよ。

 つい、頭の中で現実逃避に走ってしまった。どうやら異世界でも、拓斗の異常チートは健在のようだ。

「まさか、水晶を割るほどの魔力とは…」

 フィーアさんもオルガーさんも、唖然としてるが、甘い。

「こんなもんで驚いてたら、この先やっていけないぞ」

「「え?」」

 俺の予想が正しければ、多分―――――

「ところで、予備ってあるんですか?」

「すみません。まさか割られるとは思っていなかったので…」

 俺たちの魔力を測るのは、どうやら無理そうだ。まあ、あれを見たら測る気なんて失せたが。




「で、では、次に魔力の属性を調べます。これについては、機械は無いので、自分で使える魔法を調べてもらうしかありません。基本、1人につき1つの属性しか使えませんが、2つや3つの属性を使える人も稀に居ます。ちなみに私は、水と風と雷です」

「フィーアさん、すごい!」

「ありがとうございます。魔法の使い方は、イメージです。頭にしっかりと魔法を思い描くんです。といっても、最初は詠唱をしてサポートするのが基本ですね。では、試しに」

『水よ、出でよ』

 すると、フィーアさんの手から、何処からか水が溢れてきた。

「と、このように魔法を発動させます。ちなみに詠唱はあくまでサポートなので、自分のイメージに沿うものであれば何でも問題ありません。みなさんも、色々と試してみてください」

 おお、これぞまさにファンタジー。

 早速使い始める5人。そしてここで、またもや、

『虹の星、トゥインクルスター』

 来たよ、異常チート

7色に輝く玉が空中に浮かんだ。

 今度は美咲か。まあ、これは予想できたことだが。

「5色の魔法を、しかも同時にですか…。異世界の人はすごいですね…」

「おいおい、勘違いしないでくれよ。あんなのが普通なわけねーだろ」

 というか、だったらおおいに問題だ。

 他の面子メンツを見てみると、啓は地属性、瑠香は火属性が使えるようだ。印象そのまんまだな。拓斗は―――――

「お、いいなそれ!俺もやってみよう!」

『流れよ流星』

 光属性を自由自在に使いこなしていた。光を放ちつつ流れているので、なるほど確かに流星のようである。よく見ると、右手の甲には『勇者の刻印』と思わしきものが。

 やっぱりお前が勇者か。内心で突っ込んだのは、俺だけじゃなかっただろうと思う。


 そして俺はというと、

「使えない…」

 全く魔法が使えなかった。

 せっかく異世界に来たのに…、男のロマンなのに…。俺、いじけてもいいですか?

 だれか沈んだ俺を照らしてくれ…と思いつつしゃがみこんでいると、仄かな光が灯ったのが見えた。

 顔を上げるとそこには光の玉が。

「え?」

 拓斗がやったのか、と思い振り返るが、あちらは全くと言っていいほど、こっちを見ていない。気付かぬ振りというわけでもなさそうだし。

「え?え?」

 それに、よく見てみると、この光は白い。拓斗の魔法は、さっき見た時は黄色っぽかったから、

「拓斗じゃない」

 じゃあ誰が…と見回すが、誰もこの状況に気付いていない。というか、優也と美咲の魔法が凄すぎて、明らかに俺のこと忘れられてるよな。ということは―――――

「……俺、なのか?」

 それ以外に考えられない。が、同時にありえないとも思う。

 勇者しか光属性は使えないはずだ。そして、勇者は拓斗だ。穴は拓斗と美咲を対象としたものだったのだから。

 でもそうすると、この現象について、説明できなくなる。

 とりあえず、やれば分かるだろうとやけくそ気味に思い、試しに詠唱してみることにする。

『我が前を照らせ』

 できちゃったよ。俺は心のなかで叫んだ。

 俺の前には、白い光の玉が2つに増えていた。

 もちろん、魔法を使っているとき、手の甲に『勇者の刻印』なんて浮かんでこなかったぞ。


 勇者でもないのに光属性は拙い。これはピンチでもない限り使わないようにして、皆にも黙っておいた方が良いだろう。

 俺は考えた末、そう結論を出した。

 とすると一応、魔法が使えない、って扱いになるのか…。

 これからやっていけるのだろうかと、俺はため息をついた。 

 


 



 

 主人公はチートではありませんが、詠唱破棄できるくらいには魔法の才能があります。まあ、本人は光属性という印象が強すぎて、気がついていませんが。


 

 □ー△さんに指摘された所と、勇者についての説明を付け足させていただきました。1/20

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