第三話 約束と誓い
「それで、勇者になってはくれないか」
「もちろんです。それで誰かを救うことができるのなら、よろこんでやらせて頂きます」
やはり引き受けたか。お人好しな拓斗のことだから、そう言うだろうとは思っていたけどな。
他の三人が何も言わないところを見ると、俺が寝ている間に決めていたらしい。だが。
「ただし、条件がある」
「優也!?」
俺は、相手の都合のいいように扱われるつもりなんてさらさら無い。
卓也には悪いが、ここは譲れない。
「一つ目は、俺たちを元の世界に帰すこと。そっちの都合で地球から訳も分からず連れてこられたんだから、これは当たり前だろう。二つ目は、俺たちの自由と意思を尊重すること。俺たちは魔王討伐には行くが、だからと言って、監禁されたり、行動を制限されるのは御免だ。三つ目は、俺たちを王と同等の立場とすること。俺は異世界の王なんかに頭を下げる気は無い。俺からの条件は以上だ」
これは賭けだ。
しかも、かなりギリギリの。
俺は、ここに居る他国の人たちに俺たちの境遇を伝え、その上で条件を出し、断れば周辺国から批判の目が向けられるように仕向けた。
だが、確定要素は一つもない。
もしかしたら、この謁見の間には他国の人なんて一人も居ないのかもしれないし、そもそも国が一つしかないのかもしれない。勇者は国に従うのが当たり前、と諸外国にも認識されているかもしれない。
これ以外に方法があったかと言われれば、まあ、無かったのだが。
だって、当然だろ?少しの予測不能事態はあったものの、何も知らないままで、俺たちはここに連れてこられたんだから。
それが分かってて、あえて俺たちを真っ先にここに連れてきたのだとしたら、王はかなりの策士だ。
緊張した空気の中、俺は王から眼を離さなかった。すると王は僅かに眼を細めた。笑ったのか…?
「いいだろう。その条件、呑もう」
「陛下!?」
どうやら賭けには勝ったらしい。王がとてもお人好しなだけかもしれないが。
と思ったら、今度は外野が騒ぎ立ててきた。どうせ、王と対等な立場、というところに反応したのだろう。
「我らは協力してもらう側なのだ。これぐらいして当然であろう」
「しかし―――」
「俺に逆らうのか?」
「いえ、めっそうもございません」
さすが王様、セリフがとてつもなく偉そうだ。
「約束、違えるなよ」
「ああ、分かっている。それでは、勇者の誓いを」
王に言われて、俺は頭に?を浮かべた。
勇者の誓い?なんだそれは?
「この私、遠山拓斗は、今ここに勇者となり、魔王を倒すことを誓います」
俺が分かっていないことに気がついたのか、拓斗が真っ先に実践してみせてくれた。
おい、説明されていたなら、ちゃんと教えておいてくれよ。
横目で睨むと、拓斗はすまなさそうな顔をした。まったくだ。
「この俺、立川優也は、今ここに勇者となり、魔王を倒すことを誓います」
とりあえず、みんなのを聞いてから、同じようにやってみた。
これでいいのだろうか。
確認のために王を見やると、王は微かに、だがさっきよりもはっきりと笑っていた。
あれ?俺、なんか失敗したか?と慌てるが、
「では、次に、魔力鑑定をするため、部屋を移動してもらいます」
説明が始まったため、そちらに意識を向けた。
「魔力とは、魔法を使うために必要不可欠で、それ自体に属性があります。属性は、火、水、風、土、雷、光、闇があります。ちなみに、光は勇者のみ、闇は魔王のみが使えます」
魔法があることに、俺は年がいもなくワクワクした。