第二十五話 これはデフォルトです
彼は、堂々と僕らの前に現れた。
彼は、上から現れた。
彼は…ドヤ顔だった。
無言のまま、時が過ぎる。
「…。お、お前たちは、一体なんなんだ」
よくある三流悪役の台詞を言ってみる。棒読みじゃなかっただけましだと思った。
そして、その言葉を待っていましたと言わんばかりの顔になる奴。一泊おくと、彼は吠えた。
「俺たちは四天王!お前たち勇者一行に、宣戦布告を告げに来た!」
再びのドヤ顔。そして白ける場の空気。
瞬間に僕たちは理解した。ああ、こいつは救いようの無い馬鹿だと。
冷たい眼に曝されている馬鹿の代わりに、物腰の優雅な青年が話を引き継ぐ。
「宣戦布告、といっても、今回は特に何もする気はありません。まあ、足止め兼挨拶というところですね」
ちらりと馬鹿を見やる視線には、あきらかに侮蔑の色が含まれている。何でこんなことも説明できないのかと。気付いてないのは馬鹿一人。後ろの二人の眼も、こちらより冷たい。
あえて彼らの名誉のために言っておくと、堂々と現れたのも、上から現れたのも、ドヤ顔だったのも馬鹿一人であり、彼らは普通に歩いて現れた。勿論ドヤ顔もない。
「私たち魔族は―――」
「え?魔族?」
つい驚いてそう漏らすと、何をいまさらという眼で見られた。が、
「え、嘘!?魔族だったの!?」
「これが魔族!?」
「レオとカレンも知らなかったの!?」
「あんたらここの住人だろう?」
後ろの反応も似たり寄ったりだった。美咲と瑠璃は、彼らが魔族だったということより、レオとカレンが魔族を知らなかったことに驚いているようだが。
「ほら、ちゃんと翼とか角とかあるでしょう?まさか見てなかったんですか?」
「いや、コスプレだと思った」
「馬鹿はともかく、私たちはコスプレなんてしませんよ」
「そうだそうだ!」
お前のことだよ!と皆が心の中で突っ込んだが、口には出さなかった。
世の中には、知らない方が幸せなこともあるものだ。




